「MVP!MVP!」のコールが響く中、9月24日のロッキーズ戦でマリナーズのカル・ローリー捕手が球団史に残る60号本塁打を放った。
その貴重な記念球をめぐって、外野席では「優しいリレー」が行われていた。
その打球をキャッチしたのは観客席にいたグレンさんという男性ファン。右翼席でボールをとったグレンさんは、白球を高々と掲げて、揺れるスタジアムのファンと共に喜びを共有した。しかし、グレンさんはそのボールを近くに座る12歳の少年に手渡してプレゼント。記念球、しかも60号という貴重なボールを譲るという行為に、SNSなどでは「信じられない」と驚きの声が上がった。
思わぬ形でボールを受け取った12歳マーカスくんは、さらに驚きの行動に出た。
「これはカル(ローリー)の特別な瞬間のボールだから」と自らの意志でローリーに返却。
「球場で本塁打を目撃した皆が同じ気持ちだったと思う。あの場面はカルのもの。もらった瞬間はもちろんうれしかったけれど、僕はその歴史のボールを触ることができただけで幸せ。持ち主のカルに持っていてほしいなって思ったんだよ」
マーカスくんは興奮気味にこう続ける。
「だってキャッチャーで60本塁打って、本当にすごいことなんだよ。スイッチヒッターで60本打った初のキャッチャーなんじゃないかな。すごすぎるよ」
父のガランさんも「カルが打席に入った時にMVPコールが肩越しに聞こえてきた時、なんとも言えない気持ちでした」とその時の光景を振り返る。
「息子が『カルに渡したい』と言ったので、そうしよう、それがいい、と伝えました。親として息子の行動を誇りに思います。謙虚で優しい子に育ってほしいと願ってきたけれど、こういう形で表れるなんて、本当に言葉にならない」とうれしそうに語った。
この一連のエピソードは球団関係者の耳にも届き、試合翌日には60号をキャッチしたグレンさんとその家族、そして27日(日本時間28日)にマーカスくん家族が球場に招待され、ローリーと対面。二人にはそれぞれサイン入りバットが贈られた。
大好きなマリナーズの主砲に対面したマーカスくんは、「MVPになる選手に、僕、いま会ったんだよね!どうしよう。言葉にならないくらいうれしい」と目をキラキラさせた。
サッカー少年でスポーツ好きのマーカスくんは、「将来はサッカー選手かスポーツアナリスト、それかお医者さんになりたい。家族を支えられるような仕事に就きたいんだ」と大きな夢を教えてくれた。ローリーに会って、その夢はますます大きくなったようだ。
父ガランさんは、「譲ってもらったボールを巡って、こんなに素晴らしい経験をさせてもらえました。譲ってくれた男性、球団関係者、カル、皆の優しさを経験できました。息子にとっても家族全員にとってもすばらしい経験になりました。本当に皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです」と話す。
カル・ローリーの60号は、グレンさんとマーカスくんの「優しさのリレー」で、記録と共にファンの心に残る一打となった。