【独自】左腕アレックス・ベシア ドラフト下位の劣等感を乗り越えて世界一へ

12:04 AM UTC

「俺は、自分の泥臭いキャリアが大好きだ。ドラフト全体1位指名されるようなエリート選手もいいけれど、下から上がってきた自分のストーリーに共感してくれる人は多いと思う。数々の逆境に直面してきたからこそ、今の自分があるし、自信を持ってマウンドに上がれている」

ドジャースの中継ぎ左腕、アレックス・べシアは自身のここまでのキャリアをこう表現する。

ドジャースのクラブハウスは、大谷翔平を筆頭に、MVP受賞経験を持つフレディ・フリーマンやムーキー・ベッツ、そして球界を代表する選手たちがずらりと並ぶ豪華な空間だ。

彼らの指名順位に目を向けても、1巡目指名のウィル・スミスやブレイク・スネル、2巡目のフリーマン、5巡目のベッツやマックス・マンシーなど、やはりドラフト上位出身者が主力としてチームを牽引している。

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しかし、この世界で光を放っているのはエリートたちばかりではない。

ドジャースの投手陣を支えるメンバーの中には、泥臭く這い上がってきた下位指名組も数多く存在する。先発の一角を担うジャスティン・ロブレスキーは11巡目、中継ぎ左腕アレックス・ベシアは17巡目(全体507位)、そして守護神クラスの中継ぎエバン・フィリップスも17巡目(全体510位)での指名だった。

ドラフトの順位がすべてではない。それを自ら証明し、メジャー屈指の中継ぎ左腕へと飛躍を遂げたのが、ベシアだ。

30歳を迎えた左腕は、8年前の運命の日をこう振り返る。

「17巡目指名だったので、1日目や2日目には名前が出ない(指名されない)ことは分かっていた。自宅で電話の前に座って、どこかから連絡が来ないかひたすら待っていたんだ。マーリンズから『指名したい』と電話をもらった時は、ただただ感謝の気持ちでいっぱいだった。もし指名されなかったら、野球のキャリアが終わる崖っぷちだったからね」

指名の知らせに涙し、固い決意を胸にプロの世界へと足を踏み入れたが、待ち受けていたのは「劣等感」だった。

「チームで唯一の『Division 2(大学2部リーグ)』出身のドラフト指名選手だったので、周囲のDivision 1(1部リーグ)出身のエリートたちに囲まれて、最初は自分が一番下のレベルにいるように感じて劣等感があった。周りは大学時代からお互いを知っていたけれど、自分には誰も知り合いがいなかったんだ」

1部リーグ出身の選手たちは大学時代に対戦経験もあり、互いに顔馴染みだ。上位指名選手たちが威張っていたわけではない。だが、自然とできあがる輪を前に、10代や20代の若者が孤独感や焦燥感、そして劣等感を覚えるのは当然のことだった。

ドラフトから入団初期のほろ苦い思い出を、ベシアは反芻(はんすう)しながら懐かしそうに語る。

しかし、べシアはそこで立ち止まったり、ひるんだりせず、持ち前の「負けず嫌い」と「たゆまぬ努力」で、己の運命を切り拓いていく。

「『すべてのチャンスを無駄にしないこと』『全力で取り組み、できる限りの情報を吸収すること』を自分に強く課したんだ」

大学2部リーグという環境からやってきたベシアにとって、プロの技術や知識はすべてが新鮮で、貪欲に吸収すべき宝の山だった。

「マイナーではより多くの情報やコーチングが必要だったけれど、その貪欲になれる環境こそが自分の成長にとても役立った。球団も自分の資質を評価してくれて、レベルごとに通用するかテストされながら、2019年には1年間で『ローAからアリゾナ・フォールリーグ』へと一気にステップアップすることができた。マーリンズのマイナー組織はタフだったけれど、投手育成システムとしては非常に優れていたと思う」

プロの恵まれた環境をフルに活用し、吸収し、大きく成長した。

キラキラと輝く周囲のライバルたちと同じ土俵に立ったと実感できる瞬間は、思っていたよりも早く訪れた。

「ルーキーリーグでの最初の登板で好成績を残せて、そこから成功体験を積めたことで、『自分もここでやっていける』と自分を心から信じられるようになった。自分に必要なのはその『自信』だけで、そこからはただ楽しんでプレーできるようになったんだ」

ピンチの場面でマウンドを託されると、闘志をむき出しにして打者に向き合うべシアに、心を揺さぶられた人は多いはずだ。

「俺は自分のストーリーが好きなんだ」

そう胸を張るべシアは、今季もドジャースのブルペンを支えている。