【分析】今永昇太、昨季に続き激増した被本塁打:原因を探る

September 2nd, 2026

カブスの今永昇太(33)に昨季終盤と重なる課題が再び浮上している。8月30日(日本時間31日)のレッズ戦は5回8安打6失点。3本塁打を浴びて10敗目を喫した。今季の被本塁打は33本に達し、MLB最多タイ。1試合3本塁打以上を許した登板は今季6度となり、従来の5度を上回る球団ワーストを更新した。

【今季成績=米国時間8月30日終了時点】

  • 27先発(クオリティー・スタート11度)
  • 8勝10敗
  • 150回1/3
  • 防御率4.01
  • 148三振
  • 被本塁打33=ナ・リーグのワースト1位、MLB最多タイ

本塁打が急増した起点は8月11日(同12日)のナショナルズ戦だ。この試合で3本塁打を許して以降、直近4先発は17回2/3で8被本塁打、自責点14、防御率7.13。MLB.comによると、この期間は9.1打数に1本の割合で本塁打を浴びている。その直前の10先発は防御率2.06で、被本塁打は26.8打数に1本だった。

直近8本の内訳は、フォーシームだけに問題が集中しているわけではない。

【8月11日以降の8被本塁打】

  • フォーシーム 3本
  • スプリット 3本
  • スイーパー 2本

では、今永の投球に何が起きているのか。

単純な球速低下では説明できない。ベースボール・サバントのPitch Movementによると、今季のフォーシーム平均球速は91.6マイル(約147.4キロ)。メジャー1年目の2024年は91.7マイル(約147.6キロ)で、ほぼ同水準だ。

一方、直球の質には変化がある。ここでは、重力の影響を除いた縦変化(IVB)を「ホップ成分」、左腕の腕側への横変化を「シュート成分」として比較する。

【フォーシームの球速と変化量=ベースボール・サバントより】

  • 2024年
     平均球速 91.7マイル(約147.6キロ)
     ホップ成分 18.3インチ(約46.5センチ)
     シュート成分 10.2インチ(約25.9センチ)
  • 2025年
     平均球速 90.8マイル(約146.1キロ)
     ホップ成分 18.0インチ(約45.7センチ)
     シュート成分 11.9インチ(約30.2センチ)
  • 2026年
     平均球速 91.6マイル(約147.4キロ)
     ホップ成分 17.7インチ(約45.0センチ)
     シュート成分 11.2インチ(約28.4センチ)

2024年と今季を比較すると、球速は0.1マイルしか変わらない。一方、ホップ成分は0.6インチ(約1.5センチ)減り、シュート成分は1.0インチ(約2.5センチ)増えた。今永のフォーシームは低いリリースから高めへ投げ込み、打者に浮き上がるように錯覚させる軌道が武器だ。シュート成分の横変化が増えれば、本来の縦方向の強さが薄れる。

この点は昨季にも表れていた。ファングラフスの2025年分析では、アームアングルが2024年の約40度から2025年は約37度へ低下し、フォーシームのシュート変化が約2インチ(約5センチ)増えたと分析。高めのフォーシームに対する相手打者の長打率は.448から.586、バレル率は13.2%から22.2%へ悪化した。つまり、リリースポイントが下がり、シュート成分が増えることは、ホップ成分を減少させ、被本塁打を増加させた。

昨季終盤には被本塁打問題が起用にも影響した。2025年は144回2/3で31被本塁打。レギュラーシーズン最後の6先発だけで12本を許した。ポストシーズンの第1ラウンドとなったパドレスとのワイルドカードシリーズ第2戦では先発ではなく、オープナー起用後の2番手で登板。地区シリーズ第2戦では先発したが2回2/3で2本塁打を浴び、通常の登板間隔なら先発が見込まれた第5戦では登板しなかった。

今季は昨季の課題を踏まえ、投球フォームや投手プレート上の位置にも修正を加えた。スポーツ・イラストレーテッドの分析によると、今春は投手プレートの一塁側から中央方向へ7.5インチ(約19.1センチ)移動。シーズン序盤にはフォーシームのアームアングルも40度に戻っていた。

しかし、現在は腕の位置にも再び変化が出ている。ファングラフスの「アームアングル」ゲームログでフォーシームを登板ごとに比較すると明確だ。

【フォーシームのアームアングル】

  • 5月7日 42度
  • 5月13日 41度
  • 5月18日 43度
        ↓
  • 6月10日 36度
  • 6月15日 36度
  • 7月25日 36度
  • 8月11日 36度
  • 8月17日 36度
  • 8月23日 38度

今季全体のフォーシーム平均は37度。5月上旬から中旬には41~43度だったが、6月10日以降はおおむね36~38度で推移している。

投手プレート上の立ち位置もさらに変わった。今春は一塁側から中央へ移したが、シーズン中盤には三塁側へ寄せている。

さらに、直近の「シュート成分」は以下の通り(ファングラフスの「横変化」ゲームログより)

【被本塁打が増えた直近4先発の横変化量】

  • 8月11日 vs ナショナルズ 7.0インチ(約17.8センチ)/3本塁打
  • 8月17日 vs ホワイトソックス 7.7インチ(約19.6センチ)/1本塁打
  • 8月23日 vs マリナーズ 6.5インチ(約16.5センチ)/1本塁打
  • 8月30日 vs レッズ 7.1インチ(約18.0センチ)/3本塁打

直近4先発の平均は約7.1インチ(約18.0センチ)。今季全体の6.9インチ(約17.5センチ)、さらに直前10先発の平均約6.8インチ(約17.3センチ)と比べると、シュート成分の横変化はわずかに大きくなっている。

実際、4試合で最も大きい7.7インチ(約19.6センチ)だった17日は被本塁打1本、最も小さい6.5インチ(約16.5センチ)だった23日も1本。3本塁打を許した11日と30日は、それぞれ7.0インチ(約17.8センチ)、7.1インチ(約18.0センチ)で、今季平均に近い。直近の本塁打数と横方向への変化量が単純に連動しているとは、このデータからは断定できない。​

つまり、現状は一つの数字だけで説明できない。

球速は2024年とほぼ同水準。一方、2024年と比較するとフォーシームはホップ成分が減り、シュート成分が増えている。春先に高くなったアームアングルも現在は36~38度付近へ低下した。ただし、直近4先発でシュート成分が急増したデータはなく、7月も同程度のアームアングルで好投していた。さらに最近の8被本塁打はフォーシーム3本だけでなく、スプリット3本、スイーパー2本にも及ぶ。

昨季はシーズン終盤の一発増加によって、ポストシーズンで先発の序列を下げた。今季はその反省からフォーム、アームアングルを修正し、投手プレートの位置を工夫している。それでも9月を前に被本塁打が再び急増した。

腕の位置、直球の縦と横の変化、コース、変化球の精度――複数の要素をどう修正するか。ポストシーズンの先発ローテーションを守るため、残り1カ月の最大のテーマとなる。