パヘス、163キロ右腕ミラーとの9球勝負制す 執念の犠飛

May 20th, 2026

ドジャース5−4パドレス】サンディエゴ/ぺトコパーク 5月19日(日本時間20日)

「人生で、その打席が最も重要な瞬間だと思えるかどうかだ」

ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は、アンディ・パヘスを見ながら、そんなことを考えていた。

(逃げるな。戦え)

4−4の同点で迎えた九回。1死一塁で、代走のアレックス・コールを置き、打席には7番パヘスが入った。

マウンドにはパドレスの絶対守護神、メイソン・ミラー。

初球スライダーをファウル。その直後、一塁走者コールが飛び出した。ミラーが一塁へ送球するも、大きく悪送球。コールは一気に三塁まで進み、1死三塁へと変わった。

「一塁に走者がいた時は併殺を避けようと思っていた。でも三塁に進んでからは、犠牲フライでも1点入る、という意識になった。ただ、アプローチ自体は変わらなかった」

パヘスはそう振り返る。

一打勝ち越しの場面で、ミラーはさらにギアを上げた。

2球目、100.8マイル(約162.2キロ)でファウルを奪い追い込む。
3球目、101.9マイル(約164.0キロ)は外れてボール。
4球目、高め101.8マイル(約163.8キロ)も、パヘスは再びファウルで食らいついた。

追い込まれても、パヘスは落ち着いていた。

「いくつかの球種はしっかり捉えられる感覚があったし、どの球でもダメージを与えられると思っていた」

100マイル超の速球をファウルにするうちに、パヘスの目は次第に順応していった。

「打席の中で、自分の中にしっかり手応えが出てきた。それが自信につながって、『いける』という感覚に変わっていった」

100マイル超を続けてファウルにされ、パドレスバッテリーも揺さぶりをかける。5球目にはスライダーを投じたが、パヘスはきっちり見送った。

さらに6球目101.4マイル(約163.2キロ)、7球目スライダー、8球目スライダーと3球連続でファウル。

球場全体が息を呑んだ。観客は拳を握りしめ、勝負の行方を見守る。

二人の意地が、火花を散らしながらぶつかり合った。

勝負の9球目。

内角高め101.5マイル(約163.3キロ)を、パヘスが力強く振り抜くと、打球は高々と右翼へ上がった。

右翼のフェルナンド・タティスJr.が助走をつけながら捕球。二塁を経由して本塁へ返球されたが、三塁からタッチアップしたコールは、捕手のタッチを巧みにかいくぐって生還した。

パヘスが執念で勝ち越し点をもぎ取った。

「ミラーは素晴らしい投手。でも、自分の中では『球の速い投手』という感覚で、特別視はしていなかったし、負ける気もしなかった」と、パヘスは試合後、涼しい表情でそう語った。

ロバーツ監督は、力と力がぶつかった2人の対決をこう表現した。

「本当に『戦うか逃げるか』の世界だった。彼はものすごくハングリーで、勝ちたい気持ちが強かった」

メジャー屈指の剛腕との勝負は、パヘスの成長を強く印象づけた。