【ドジャース5−4パドレス】サンディエゴ/ぺトコパーク 5月19日(日本時間20日)
「人生で、その打席が最も重要な瞬間だと思えるかどうかだ」
ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は、アンディ・パヘスを見ながら、そんなことを考えていた。
(逃げるな。戦え)
4−4の同点で迎えた九回。1死一塁で、代走のアレックス・コールを置き、打席には7番パヘスが入った。
マウンドにはパドレスの絶対守護神、メイソン・ミラー。
初球スライダーをファウル。その直後、一塁走者コールが飛び出した。ミラーが一塁へ送球するも、大きく悪送球。コールは一気に三塁まで進み、1死三塁へと変わった。
「一塁に走者がいた時は併殺を避けようと思っていた。でも三塁に進んでからは、犠牲フライでも1点入る、という意識になった。ただ、アプローチ自体は変わらなかった」
パヘスはそう振り返る。
一打勝ち越しの場面で、ミラーはさらにギアを上げた。
2球目、100.8マイル(約162.2キロ)でファウルを奪い追い込む。
3球目、101.9マイル(約164.0キロ)は外れてボール。
4球目、高め101.8マイル(約163.8キロ)も、パヘスは再びファウルで食らいついた。
追い込まれても、パヘスは落ち着いていた。
「いくつかの球種はしっかり捉えられる感覚があったし、どの球でもダメージを与えられると思っていた」
100マイル超の速球をファウルにするうちに、パヘスの目は次第に順応していった。
「打席の中で、自分の中にしっかり手応えが出てきた。それが自信につながって、『いける』という感覚に変わっていった」
100マイル超を続けてファウルにされ、パドレスバッテリーも揺さぶりをかける。5球目にはスライダーを投じたが、パヘスはきっちり見送った。
さらに6球目101.4マイル(約163.2キロ)、7球目スライダー、8球目スライダーと3球連続でファウル。
球場全体が息を呑んだ。観客は拳を握りしめ、勝負の行方を見守る。
二人の意地が、火花を散らしながらぶつかり合った。
勝負の9球目。
内角高め101.5マイル(約163.3キロ)を、パヘスが力強く振り抜くと、打球は高々と右翼へ上がった。
右翼のフェルナンド・タティスJr.が助走をつけながら捕球。二塁を経由して本塁へ返球されたが、三塁からタッチアップしたコールは、捕手のタッチを巧みにかいくぐって生還した。
パヘスが執念で勝ち越し点をもぎ取った。
「ミラーは素晴らしい投手。でも、自分の中では『球の速い投手』という感覚で、特別視はしていなかったし、負ける気もしなかった」と、パヘスは試合後、涼しい表情でそう語った。
ロバーツ監督は、力と力がぶつかった2人の対決をこう表現した。
「本当に『戦うか逃げるか』の世界だった。彼はものすごくハングリーで、勝ちたい気持ちが強かった」
メジャー屈指の剛腕との勝負は、パヘスの成長を強く印象づけた。