プレイボールの声がかかり、まだ球場全体がざわつく中、エンゼルスのノーラン・シャニュエル(23)はヤンキース先発ライアン・ヤーブローの内角87.8マイル(141.3キロ)直球を右翼2階席に叩き込んだ。
「インコースのフォーシームかツーシームを狙っていた。結果的に仕留めたのは甘く浮いた球。でも最後に沈んで浮くような球を今まで見たことがなかったから、ちょっと驚いた。ヤンキースタジアムは独特の雰囲気でやっぱり特別な気分だね」と振り返った。
メジャー2年目の今季、ここまで71試合に出場し、5本塁打、打率.281、OPS.773をマーク。強みは三振数38が少なく、四球数34が多いことだ。また出塁率(OBP).371はリーグ26位で、ブライス・ハーパー(.368)、トレイ・ターナー(.363)、フェルナンド・タティス(.357)など球界を代表する選手たちを上回る。
出塁率の高さは選球眼の良さに起因する。
「子供の頃、父と打撃練習した時、ボール球を振ったら次の打席は飛ばされるルールだった。父が打撃投手を務め、意識的にボール球も混ぜてくるから気を抜けなかった。父は学生時代に野球をしていたので、工夫しながら教えてくれた」
その意識を持って中学、高校でもプレーし、大学へ進学。
「大学チームでも(父の練習と)同じだったんだ。ボール球を振ったらケージから出なきゃいけないんだ。おかげで悪い球を見逃す判断力が自然と身についたと思う。メジャーは大学よりもレベルが高いけれど、何とかくらいつけていると思う」
また大学3年次からはツーストライク以降は足を7インチ(約18センチ)ほど広げるスタンスに変えたことで出塁率が上がった。
「より速くボールに反応するために少しスタンスを開いて、手の動きを速くして、構えるまでの時間を短くしている。特に意識するのは下半身」
フライボール革命の影響で、カウントにかかわらず同じスタンスで臨む選手が増えている。スタンスを広く取ると、長打は難しくなるからだ。
「今の時代はホームランが評価されるけれど、自分はどちらかというと『昔ながらのタイプ』で、追い込まれたらなんとか出塁して、後ろの打者につなぐ方がいいと思っているんだ。ソロホームランよりもツーランの方がいいでしょう。しっかり出塁してチームに貢献したいと思っているんだ」
その打撃観には、幼少期から培われた知識と野球への愛による。
「子供の頃から野球オタクで、可能な限り試合を観ていた。特にイチロー選手が好きで、10球以上粘ってヒットや四球を取る姿がかっこいいなと思っていた。三振が少ない選手の打撃を見るのも本当に好きだった。そういう『我慢する打撃』こそが、野球の面白さだと思うんだ」
父の教えを胸に、メジャーでも着実に歩みを進めている。エンゼルスの頼れる2番打者として、「つなぐ野球」をこれからも見せてほしい。