トレード期限の日、ドジャースがメッツからベン・ロートベット捕手を再獲得した。ウィル・スミス、ドルトン・ラッシングが相次いで離脱する中、昨季に続く緊急補強として再びチームに加わった。
打撃面以上に評価されているのが、守備面での貢献だ。フロントが再び獲得に動いた背景には、ドジャース投手陣を熟知していることに加え、スタットキャストが裏付ける確かな守備力がある。フレーミング、ブロッキングを中心とした数字が、ロートベットの守備力を示している。
武器はフレーミング能力
ロートベットの最大の武器は、ゾーンぎりぎりの球をストライクに変えるフレーミング能力だ。
フレーミング貢献度(Catcher Framing Runs)は+7点。これは、平均的な捕手と比較して、フレーミングによって生み出した価値を示す指標で、ロートベットが際どい球をストライクとして積み重ねることで、チームに約7点分のプラス効果をもたらしてきたことを意味する。
また、ストライクゾーン境界線(Shadow Zone)でのストライク獲得率(Shadow Strike%)は通算46.2%。メジャー平均(46.7%)に迫る安定した数字を残している。
特に際立つ能力が低めへの対応力だ。右打者の外角、左打者の内角低めにあたるZone16では、通算+9点をマーク。これは同じコースの投球を平均的な捕手が受けた場合と比べ、フレーミングによって約9点分の価値を生み出したことを示している。ストライク獲得率も67.3%と、メジャー平均(64.0%)を大きく上回る。
投手にとって、決め球となる低めのフォーシームや変化球をストライクとして扱ってもらえることは大きな意味を持つ。ロートベットの巧みなミットさばきは、球数の節約や投手有利なカウント作りにつながり、投手陣を陰から支える大きな武器となっている。
投手に安心感を与える「ブロッキング」
ロートベットのもう一つの大きな強みが、ワンバウンドの投球を止めるブロッキング能力だ。
捕手のブロッキング力を示す指標「Blocks Above Average」では、通算+7を記録。これは、同じ投球を平均的な捕手が受けた場合と比較して、ワンバウンド処理によってチームにプラスの守備価値を生み出してきたことを示す数字だ。
シーズン別でも、2021年(ツインズ)と2024年(レイズ)にはともに+4を記録するなど、安定して平均以上のブロッキング能力を発揮してきた。
さらにスタットキャストの推定では、投球状況から想定される通算の捕逸・暴投数は55回に対し、実際の発生数は48回。難しいワンバウンドの球を後逸せず、余計な進塁を許さない能力の高さが数字にも表れている。
落差の大きいスプリットやカーブなど、低めを攻める投手にとって、後ろに逸らす心配なく勝負球を投げ込める捕手の存在は大きい。ロートベットは、投手が持つ球の力を最大限に引き出す「壁」として、ドジャース投手陣を支える存在になりそうだ。
盗塁を防ぐ堅実な送球
送球面を見ると、2塁送球タイム(Pop Time)は通算1.92秒とメジャー平均レベル。捕球から送球までの持ち替え(Exchange)は通算0.71秒だが、無駄のない動きによって盗塁阻止を支えている。強肩ではないが、正確な捕球と素早い動作でアウトを積み重ねる。
ラッシングとの比較で見える役割の違い
若手捕手ダルトン・ラッシングとのデータを比較すると、両者の特徴ははっきりと分かれる。
総合的な勝利貢献の価値を示すWARでは、2026年のラッシングが0.7 WAR(fWARファングラフス版)を記録し、2025年のロートベットの-0.5 WAR(fWAR)を上回っている。ラッシングは打撃面で大きな魅力を持つ一方、ロートベットは打撃では目立った数字を残せなかった。
しかし、捕手としての守備力に焦点を当てると、状況は大きく変わる。スタットキャストが示す守備指標では、両者の役割の違いが明確に表れている。
- 総合守備貢献度(Catching Runs):ロートベット +9 / ラッシング -6
- フレーミング(Framing Runs):ロートベット +7 / ラッシング -6
- ブロッキング(Blocks Above Avg):ロートベット +7 / ラッシング -7
- 2塁送球タイム(Pop Time):ロートベット 1.92秒 / ラッシング 1.90秒
- 持ち替え時間(Exchange):ロートベット 0.71秒 / ラッシング 0.62秒
ラッシングは持ち替え(Exchange)の素早さに優れる一方、フレーミングやブロッキングといった「投手を直接アシストする守備指標」においてはロートベットが大きく上回る。つまり、ラッシングが「打撃で価値を生み出す捕手」に対し、ロートベットは「守備で投手陣を支える捕手」と言える。
総合守備指標(Catching Runs)で通算+9を叩き出しているロートベットの復帰は、レギュラーシーズンの終盤、そしてプレーオフに「1点を防ぐ」ための極めてロジカルな補強で、数字に裏打ちされたその確かな守備力で、ドジャース投手陣を力強く支えていく存在となりそうだ。