過去1年のMLBで大きな動きの一つは、多くの若手選手が有望株ランキング上位へ台頭したことだ。MLBパイプラインのトップ100有望株を見れば、トップ10のうち21歳より上の選手は1人しかいないことが分かる。
もちろん、上位には10代のショートストップが豊作だが、あらゆる年齢層に興味深いプロスペクトは多い。そこで今年も、Will Leitch氏の長年の企画に倣い、年齢別のナンバーワン有望株を見ていく。
まず前提を説明する。本企画では、ルーキー資格を消耗しておらず、「プロスペクト」と見なされる選手が対象となる。つまり、25歳未満の未契約国際選手、高校生、大学生に加え、MLB球団のマイナー所属選手も対象に含まれる。
例えば、23歳の山下舜平大(オリックス)はNPBからポスティングされていないが、もしMLBと契約すればプロスペクト扱いとなるため対象に含まれる(なおネタバレになるが、今回のリストには選ばれない)。また、村上宗隆は昨年このリストに入っていたが、25歳となり外国人プロ扱いとなるため、今年は対象外となる。
来年3月のワールドベースボールクラシック(WBC)を控える中、注目すべき選手は誰なのか。また次世代のドラフト候補は同年代の選手と比べてどうなのか。それでは、16歳から25歳までのベストプロスペクトを紹介する。
16歳:ルイス・ヘルナンデス(ベネズエラ/遊撃手/国際ランキング1位)
卓越した身体能力と年齢に似合わぬ成熟したアプローチで、2026年国際FA市場のトッププロスペクトに選ばれている。肩は平均的だが、それ以外の5ツール(パワー、スピード、スローイング能力、打撃の正確性、守備力の5項目)すべてがプラス評価となる見込みで、守備でもセンターラインに十分残れる運動能力を備えている。さらに特筆すべきは、既にベネズエラリーグで元MLB選手ら、時に年齢が倍以上の相手に対して圧倒的な成績を残し、その能力を生かしている点だ。
次点:ジェイコブ・シーモン(外野手/ノースカロライナ州メトロリナ・クリスチャンアカデミー)
17歳:イーライ・ウィリッツ(ナショナルズ/遊撃手/球団1位・MLB15位)
史上3番目に若い全体1位指名選手となったが、特筆すべきは打席での極めて洗練されたアプローチだ。左右両打ち(左打席の方が優れている)で、正確なバットコントロールと常に全力でプレーすることができるスタミナで今年のドラフトクラスで最も高いポテンシャルを持つと評価されている。元MLB選手レジー・ウィリッツの息子であり、守備面でもショートに留まる可能性が高いと見られている。
次点:グレイディ・エマーソン(遊撃手/フォートワース・クリスチャン高校/テキサス州)
18歳:ヘスス・マデ(ブルワーズ/遊撃手/球団1位・MLB4位)
スピードとパワーを兼ね備え、ショートを守れる守備力もある左右両打ち。マデはまさに“完全パッケージ”の選手だ。今季2A昇格を含む2度の昇格を果たし、同リーグ最年少選手になったことがそれを裏付けている。それだけでなく、チェイス率(ボールゾーンを振る率)・空振り率とも24%と低く保ったまま、常に強いコンタクトを生み出していた。このまま成長すれば、打ち取るのが難しい打者になるだろう。
次点:イーサン・ホリデー(ロッキーズ/遊撃手/球団1位・MLB19位)
19歳:コナー・グリフィン(パイレーツ/遊撃手・外野手/球団1位・MLB1位)
2024年ドラフトから、最高の潜在能力を持つ選手と常に評価されてきたグリフィンは、デビューイヤーにその期待を大きく上回り、MLB全体のトッププロスペクトとなった。懸念のあった打撃技術とショート守備についてもしっかりと期待に応え、非常に優れたスピードとインパクトある打撃力も発揮し続けた。4月24日の20歳の誕生日以前にMLBデビューする可能性もあり、将来的に30本塁打・30盗塁を狙える選手だ。
次点:レオ・デフリース(アスレチックス/遊撃手/球団1位・MLB3位)
20歳:ロック・チョロウスキー(UCLA/遊撃手)
2023年ドラフトで指名されなかった選手の中で最上位評価を受けていたが、今や近年で最高クラスの大学プロスペクトとなっている。当初はパワーよりも打撃技術に特徴を持つ選手だったが、大学で体が成長し、現在は右打席からプラス評価のパワーを見せている。高校時代にアメフトでクオーターバックも務めた強肩に支えられたショートでの強固な守備は広い守備範囲を保証する。このまま成長すれば来夏の契約後すぐにトップ10プロスペクトに入ると見込まれている。
次点:マックス・クラーク(タイガース/外野手/球団2位・MLB8位)
21歳:ケビン・マゴニグル(タイガース/遊撃手/球団1位・MLB2位)
マイナーリーグで最高のヒッターと言われ、左打者にもかかわらず、昨季は右投手相手(打率.300、出塁率.396、長打率.569)より同じ左投手相手の方が好成績(.打率321、出塁率.444、長打率.628)を残した。今季、唯一の問題は健康面だけで、その遅れをアリゾナ・フォールリーグのMVP受賞で挽回した。フィラデルフィア郊外で育ったマゴニグルはチェイス・アトリーを憧れとしており、キャリアもその道に近づきつつある。
次点:サミュエル・バサーロ(オリオールズ/捕手・一塁手/球団1位・MLB7位)
22歳:トレイ・イェサベージ(ブルージェイズ/右投手/球団1位・MLB26位)
プロ1年目からフル回転し、マイナーの全階級を駆け上がり、9月にMLBデビューを果たした。極端なオーバートップの投球フォーム(約7.09フィート=約216センチのリリース高、ジャスティン・バーランダーに次ぐ高さ)から投げ込まれる浮き上がるような速球と強烈なスプリット、さらにスライダーとカーブを織り交ぜ、マイナー98イニングで160三振を記録した。ポストシーズンでも圧倒的な投球を見せ、トップ100ランキング内でのさらなる上昇、さらにはトップ10入りも見込まれている。
次点:アンドリュー・ペインター(フィリーズ/右投手/球団1位・MLB16位)
23歳:JJ・ウェザーホルト(カージナルス/遊撃・二塁・三塁手/球団1位・MLB5位)
大学3年時のハムストリング(太もも裏)負傷がなければ2024年ドラフト全体1位候補と言われていた逸材で、現在はスカウトが期待した通りの純粋な打者像を体現している。無駄のない左打ちのスイングは全方向に長打を生み、優れた選球眼を持ちながらコンタクト率79%というエリート級の数字を記録している。ウェザーホルトは2026年の開幕をメジャーで迎える可能性が高く、どの内野ポジションを守るかは球団のオフの動き次第で決まるとみられている。
次点:ババ・チャンドラー(パイレーツ/右投手/球団2位・MLB14位)
24歳:ノーラン・マクリーン(メッツ/右投手/球団1位・MLB11位)
二刀流経験者や複数スポーツ経験者が一つに専念すると急成長するという話はよくあるが、マクリーンはその典型例であり、かつ両面の能力を示した選手でもある。オクラホマ州立大学で投手兼打者の二刀流としてプレーし、短期間ながらアメフトのクォーターバックも務めた後、2025年に初めて投手一本へ専念した。当初はリリーフ向きと見られていたが、現在はシンカーとスライダーを軸に6球種を操る先発向きの投手へ成長し、今季メジャー48イニングで60.2%のゴロ率と30.3%の奪三振率というエリート級の成績を残した。
次点:アレックス・フリーランド(ドジャース/遊撃手/球団4位・MLB45位)
25歳:ブランドン・スプロート(メッツ/右投手/球団5位)
スプロートは2023年ドラフト56位でメッツに指名されてからわずか2年強でMLBデビューを果たし、将来はローテーションの中位を担う選手として評価されている。右腕として魅力的な100マイル(約161キロ)超の速球を持つが、球質の問題で空振りが多くないため、シンカーを多用するスタイルへ移行している。スイーパーやカーブで空振りを誘い、シンカー主体で多くのゴロを量産するタイプで、コントロールをさらに磨けばさらに打たれづらくなるだろう。
次点:クイン・マシューズ(カージナルス/左投手/球団5位)
