加藤豪将、ブルージェイズのフロントで再始動

メジャー、日ハムでもプレー経験

April 8th, 2025

バットとグラブを持ってグラウンドに出ると、コーチ陣とキャッチボールを始めた。時折、笑みが溢れている。

選手たちが一人またひとり出てくると、コーチ陣がそれぞれの位置につき、守備練習を開始した。加藤豪将は遊撃手ボー・ビシェットと一塁手ゲレロの間に入り、彼らが捌いた球を受ける。ユニフォーム姿で選手たちに混ざると、加藤がまだ現役でプレーしているような錯覚すら覚える。

今季からブルージェイズの「ベースボールオペレーション部門」のアシスタントに就任した加藤の役割は多岐に渡る。

「フロントとアナリスト、コーチと選手の間に入り、コミュニケーションを取るのが仕事。フロントの意見を選手に伝えたり、選手の意見をフロントに伝えたりというのが役割。引退後、本当に色んな仕事のオファーを頂いたが、ずっとオフィスにいる仕事はちょっと違うと思っていたし、まだフィールドにいたいという気持ちもあった。また野球を大きな視野で見られるので、夢のような仕事」

話を進めるとその仕事の複雑さが窺える。トロントにいるオペレーション部門で打撃や守備に関して分析したデータ、そしてそこから各選手に落とすべき項目が加藤に伝えられ、それを選手にアドバイスするが、「今はポジショニングのことが多いですが、メジャーリーガーに口を出すのは結構難しい仕事なんです」と加藤。

フロントの指示とはいえ、実績ある選手に話をするのは神経を使う作業だ。

そんな「難しい」話をするのはグラウンドがぴったりだ。打撃ケージで一緒に球拾いをしたり、クラブハウスで些細なお喋りをしたり、守備練習中にその話題を出す。オフィスで話すよりも、その方が選手の受け入れ方は柔らかくなる。

昨年まで現役だった加藤は、コミュニケーション能力の高さに加えてブルージェイズでプレー経験があることも大きな強みだ。チーム主軸のゲレロやビシェットとのやりとりを見れば、若手選手も加藤の言葉に素直に受け入れるだろう。

ブルージェイズに加入して半年近くが経つが、「毎日勉強することばかりで必死です」というように、覚えることは多い。

現役時代は自分に必要なことにしか目が向かなかった。むしろその必要性がなかった。しかし今は全体を広く、そして多角的に見なければいけない。

「メジャーはデータがとても進んでいますが、(完璧に)使いこなせているチームは少ない。これを使えるようになるとかなり有利になります。フロントと話す機会が多いのですが、聞いたことがない言葉や分からない単語、考え方、データがたくさんあり、吸収することばかりです」

努力家の加藤がデータと睨めっこしながら、選手にどう伝えるか逡巡する姿が容易に想像できる。

上記の仕事に加えてマイナーリーグ200選手のデータを見たり、ドラフトやトレードデッドライン、アジアパシフィックのスカウティングなども加藤に期待されている。

「ブルージェイズに決めた理由は、メジャーデビューしたチームということもありますが、やはり『加藤豪将を育てたい』と言われたことも大きい。毎日(ユニフォームを着て)グラウンドに立ちますが、自分がブルージェイズで選手だったっていうことを忘れるぐらい今の仕事を夢中にやっています」

新たな役割を担う加藤の写真を撮りたいとお願いすると「手持ちのものを使ってもらえませんか」と交わされた。今は選手を支える立場だから、という意志が伝わってきた。

2022年にブルージェイズでメジャー昇格をした時に、加藤に「目標が叶いましたか」と聞いた時、少し間を置いてこう答えた。

「今は道の途中だと思っています」

マイナーリーグの時はメジャー昇格が目標だった。しかしメジャーに上がり、初安打を打った時も目標が叶ったとは思わなかった。それはその先に広がる道を見据えていたからだ。加藤の道はさらに広がり、今はそこから新たな道を進んでいる。

ブルージェイズでの仕事はまだ始まったばかりだが、これから加藤にしかできない仕事、加藤だからできる仕事が増えていくだろう。

加藤の新しい道がどう広がり、我々にどんな風景を見せてくれていくのだろうか。

きっと野球ファンがワクワクするようなそんな景色を共有してくれると思う。