快進撃を続けるブルワーズで先発の一角で活躍するのが、24歳右腕クイン・プリースターだ。すでに11勝(2敗)を挙げ、5月30日以降、プリースターが先発した試合ではブルワーズが全勝している。
オールスター投手のフレディ・ペラルタ、若き怪物23歳ジェイコブ・ミジオロウスキーの陰に隠れている感もあるが、プリースターは安定感のある投球でチームに大きく貢献している。
24歳とまだ若いが、ブルワーズがメジャー3チーム目。いわば「移籍によって」覚醒した選手の一人だ。
2019年にパイレーツから1巡目指名を受け、高校卒業後にプロの世界に進み、2023年にメジャーデビュー。昨夏のトレードデッドラインでレッドソックスに移籍し、ブルワーズには今季開幕直後に移籍した。
今季飛躍の要因は球種変更にある。
「昨年、レッドソックスのコーチたちが、カットボールがより有効だと教えてくれた。オフに磨きをかけ、春季トレーニングでもたくさん投げ込んだ」
昨季はわずか9球しか投げなかったカットボールを今季はすでに300球以上投げ、高い空振り率を誇る。一方、2024年まで多投していたフォーシームは、今季、一切投げていない。
「フォーシームは球速も上がらず(平均93マイル)打たれていたので、迷いなくやめられたよ。その代わりにシンカーを使うようになったんだ。もともと左打者にはシンカーが打たれやすいのであまり投げなかったけれど、シンカーを活かすために、相手に意識させる球として、カットボールを使い始めたら、相乗効果でどちらも良くなった」
カットボールの握りも変化を加えた。
「去年の終盤から新しい握りで3Aで投げ始め、レッドソックスでメジャー初登板したときも投げた。さらに、このオフに握りを変えて球速が上がったので、シーズン中は変えずに投げている。今は実戦での精度を高めている段階だよ」
球種の取捨選択、そして精度向上が今季の活躍を支えている。
シーズンを通してローテーションを守るのは今季が初めて。メジャーの先発として生き残るには「一度良い投球ができても、それを続けることが一番難しい」と語る。
メジャー経験の浅い選手は、新しいことを始めて自分を見失うことも多い。「5月初めに調子を落としたけれど、それ以降はずっと良い投球ができている。毎回同じルーティンで準備することが大事だと思う。今は新しいことに飛び付かず、ルーティンを守っていこうと思う」と地に足をつけている。
「(同じような投球をしても) 無失点の日もあれば2点取られる日もある。でもチームが勝てばそれでいい。準備に集中して、マウンドでは無心で戦うだけ」
6月は5試合に登板し、27回1/3を投げ、防御率1.98をマークし、キャリアで初めて1カ月間を通して安定した登板をすることができた。
「以前は1イニングだけ良くても、その後崩れてしまうことが多かったけれど、今は6イニングを安定して投げ切れるようになった。そういう経験が自信につながっている」とにっこり笑う。
チームにもなじみ、コンディショニングや練習も自分のリズムで行えるようになった。
「調整や違う環境、プレッシャーに対応するのは大変。メジャーに上がったばかりの頃は、自分が通用するのか分からなかった。何をどうしたらいいのかも迷っていた。でも今は、自分が何をするべきか分かるようになってきた」と自信ものぞかせる。
球宴明けのドジャース戦では6回3安打無失点、10三振の好投でシリーズスイープの立役者となった。
「大谷やベッツ、フリーマンのようなすごい打者たちは、サメみたいで、血の匂いがしたら一気に襲いかかってくるんだ」
サメで有名な映画『ジョーズ』の場面を勝手に想像していると、笑いながら続けた。
「本当に襲ってくるわけじゃないからね(笑)彼らは自分のやるべきことを完全に理解していて、こちらが弱みを見せたら、すぐに見抜かれてしまう。逆に自信を持って臨めば、相手に付け入る隙を与えないと思うんだ」
厳しい対戦が24歳右腕を成長に導いている。「自信と準備」を武器に、チームのローテーションの柱として終盤戦に臨む。