【記者の目】大谷翔平はWBCで二刀流をできるのか

November 26th, 2025

大谷翔平(31)が来年3月開催の第6回ワールドベースボールクラシック(WBC)への参加を自身のインスタグラムで発表した。出場できるのか、できないのか――という議論は一応、決着がついた。

次の問題は、二刀流ができるかどうか。

私は、先発投手として出場すると考えている。

理由は、WBC期間はレギュラーシーズンへの準備も同時に進めなければいけないからだ。

一方でDH専念論もある。ドジャースがケガのリスクを懸念し、大谷と侍ジャパンに投手として出場不可とする合意を取り付ける場合だ。

ここでは、いずれのパターンも考察する。

<二刀流出場>

投手とDHの二刀流で出場する場合には、主に2つの理由がある。

第1は大谷が「二刀流で出場したい」から。投手と打者を同時に行うのは、大谷が大谷であることの存在証明、アイデンティティのようなものだ。存在意義であり、何より野球を始めた頃から大谷の自然なプレースタイルだ。過去には投打で同時出場する“リアル二刀流”は、「本来のリズム」と話している。

10月4日、地区シリーズ第1戦の後には、二刀流を続ける理由について以下のようにコメントしている。
「できると思っているから、だとは一番(の理由として)思いますけど、それが自分の色であり、自分の強みだと思ってるので。(投打の)どちらでもチームとってプラスになるのであれば、自分にしかできない役割だと思う」

当然ながら優勝を目指す。そのための二刀流だ。2023年大会では「優勝だけ目指して、勝つことだけ考えていきたい。野球を始めてから今日まで1位以外を目指したことはない」と発言している。世界一になるため、日本代表のために投手と打者で貢献したい、それができると考えているなら、二刀流で出場を強く希望するはずだ。

2つ目の理由は、レギュラーシーズンで先発投手として登板するために強度を上げた投球をしなければいけない、というドジャースの一選手としての事情だ。WBC期間中は、例年ならオープン戦で段階的に球数を増やす時期。3月5日、東京でプールCが開幕。日本の初戦は6日の台湾戦だ。仮に3月2日の強化試合が行われる数日前から合流するとして、同17日の決勝まで約2週間。この期間で先発投手としての練習、実戦形式での投球練習は継続しなければいけない。大会ルールの球数制限を守りながら、例年のオープン戦に準じながら先発の予定を組むのではないだろうか(前回大会のルールを踏襲する場合、東京での1次ラウンドでは65球、準々決勝は80球、準決勝と決勝は95球が上限)。大谷は先発投手でフル回転する意気込みをナ・リーグMVPの電話会見で明かしている。

「もちろん頭(開幕)からいくつもりでいます。1年間ケガなく仕事するのが目標」

ドジャースはポストシーズンでの10月まで見据えて投手・大谷をマネジメントする必要がる。もちろん、大会後にはチームの中心選手として、ケガをすることなくシーズンを完走してほしい。そのため、投手の起用方法、球数と登板間隔を侍ジャパンにリクエストするはずだ。

<DHだけで出場>

WBCでは、投手で出場せず、打者に専念する。ドジャースが負傷リスクのため投手・大谷に制限をかける、という予測する議論もあるだろう。今季は東京での開幕シリーズから、ワールドシリーズ第7戦まで長いシーズンを戦った。WBCを見据え、本格的な始動を早めるとしたら、オフは必然と短くなり、休養と回復の時間が少ない。直接的な因果関係は定かではないが、2023年の大会後、シーズンの8月、結果的に右肘を痛め2度目の右肘手術につながった。ドジャースや野球ファンの心配は当然だ。

そして、仮にDHだけで参加したとしてもその戦力はすさまじく、十分に貢献できる。昨季、DH専念で史上初の「50-50」となる54本塁打&59盗塁を達成し、打率.310、130打点をマークした。大谷の意気込む開幕から先発投手としてフルシーズンをまわることは叶わないが、慎重を期して先発として5〜6月に100球を投げられるように仕上げる、というパターンも考えられる。ただ、このオフにドジャースがどのような戦力補強を実行するか。大谷に「ゆっくり調整していい」という状況を作り出せるか。チーム事情に左右されるかもしれない。

ただし“前例”がある。幸い、大谷は今季、段階的に球数を増やし、強度を上げるリハビリ登板を公式戦で実行した。来季は開幕後、4月の公式戦を“オープン戦”として、調整の一環とするプランは可能だ。大谷が類似した方法を経験済みなのは、スロースタートさせる合理的な理由の一つにできる。

<まとめ>

大谷は投手として制限付きで二刀流出場する。これが私の見解だ。球数、登板間隔などは井端監督をはじめ侍ジャパンの采配よりも、ドジャースの意向が色濃く反映される、とみている。WBC連覇を目指し、貢献したい。ドジャースの先発投手として、開幕からフルシーズンで戦うために大会期間中も強度の高いピッチングを続けなければいけない。そして、オーバーワークにより負傷は極力、少なくしたい。だからこそ、所属のドジャースは大谷を“リモート管理”する。

大谷は世界一の連覇を目指すこと、そしてワールドシリーズ3連覇を目指すこと、どちらも重要で大切にするはずだ。

目標の大小はない。心技体の充実したピークは、どちらの達成も可能だ。