残るのか、去るのか。
オフシーズンを迎えるすべてのフリーエージェント(FA)選手に突きつけられる問いだが、マーク・ファインサンドの「トップ30」に名を連ねた6人となれば、その行方には一段と注目が集まる。
この6人の野手はいずれも、大市場を持ち、彼らを引き留めるだけの資金力も必要性も備えた球団でプレーしていた。一方で、FA市場に出れば複数球団が争奪戦を仕掛けてくるのは必至だ。
では、誰が最も残留に近く、誰が新天地へ向かう可能性が高いのか。そこでMLB.comでは、6球団それぞれの番記者に、状況を左右する要因について意見を聞いた。以下にその回答をまとめた。
カイル・タッカー:外野手/カブス
再契約の可能性:
今季、初年度でカブスになじんでいた様子で、ベテランがつくる良い雰囲気を評価していた。タッカーが健康なときのシカゴ打線は球界でも屈指の強さを見せ、チームの実直なスタイルも彼の性格に合っていた。もしFA市場で望む条件が得られなければ、環境が整ったカブスにとどまる選択肢も十分ある。
残留しない可能性:
カブスがタッカーの希望する長期契約を提示するとは限らない。若手外野手が控えており、将来の枠を縛りたくない事情もある。さらにフロリダ出身のタッカーにとって、春季キャンプ地が自宅に近い球団のほうが魅力的かもしれない。アリゾナでの初キャンプ中に負傷した際も、地元タンパに飛んで自前の医療スタッフに相談していた。(Jordan Bastian)
アレックス・ブレグマン:三塁手/レッドソックス
再契約の可能性:
ブレグマンは2025年のレッドソックスに、攻守両面だけでなくクラブハウス面でもぴったりハマった。打撃と内野守備を底上げしただけでなく、若手を積極的に指導し、iPad片手に打席内容を解説する姿は「もう一人のコーチ」そのものだった。5月に右太ももの大けがで7週間離脱したものの、チームへの貢献姿勢は変わらなかった。
残留しない可能性:
32歳を迎えるブレグマンが求めているのは長期契約だ。今季、レッドソックスは1・2年目にオプトアウトが付いた3年契約を提示したが、球団がその姿勢を変えなければ短期高額の契約には応じにくい。プレーオフ常連のブレグマンは、勝ち続けられるチーム(レッドソックスは条件を満たしている)が前提のうえ、5年以上の契約を望んでいる。ただ、今オフはブレグマンにクオリファイングオファーの縛りがないため、争奪戦が昨年より激しくなる可能性が高い。(Ian Browne)
カイル・シュワーバー:DH /フィリーズ
再契約する可能性がある理由:
シュワーバーは球界屈指の強打者であると同時に、フィリーズの『心』であり『魂』ともいえる存在だ。クラブハウス史上でも最高のリーダーの一人で、地域での慈善活動にも熱心。フィラデルフィアには見事に溶け込み、ワールドシリーズ制覇という『やり残した仕事』もある。フィリーズは彼を戻したい意向を明確にしており、資金面でも問題はない。
残留しない可能性がある理由:
他球団も、フィラデルフィアに来てから毎年成績を伸ばしている強打者として高く評価している。3月で33歳になるが、球界屈指のスイングとエリート級のバットスピードを持ち、30代後半まで生産力を保てると見られている。デービッド・オルティスが長く活躍したように、シュワーバーにも可能性はある。DHとはいえ、長打力とリーダーシップを求める資金力のある球団が、フィリーズを上回る条件を出す可能性は十分だ。(Todd Zolecki)
ボー・ビシェット:遊撃手/ブルージェイズ
再契約する可能性:
ビシェットは一貫して「トロントに残りたい」と語ってきた。2016年に自分を指名し、オールスターに育ててくれた球団で、親友でもあるブラディミール・ゲレーロ Jr.とプレーし続けたいという思いも強い。感情だけで交渉は決まらないが、条件が横並びならブルージェイズが『タイブレーカー』になり得る。ラインナップの中心にもう一人強打者が必要なのも事実で、ワールドシリーズ第7戦で大谷から放った3ランのように、ビシェットはその役を十分果たせる。双方に意欲があり、チームのニーズにも合致するため、再契約は理にかなっている。
残留しない可能性:
ビシェットの市場価値は、球団によって評価が大きく分かれる。ある球団は彼を二塁手と見て、走塁や運動能力の低下を懸念する一方、別の球団は攻撃力で守備の弱さを補えるとして遊撃手のまま評価するだろう。ブルージェイズは遊撃で起用する選択肢を公言しているが、ビシェットが二塁に回ればアンドレス・ヒメネスが遊撃手としてゴールドグラブ級の守備を発揮できるのも明らかだ。最終的には金銭面が決め手となり、競争が激しくなれば、たとえ『思い入れ』があっても大きな金額差は埋められない。(Keegan Matheson)
コディ・ベリンジャー:外野手・一塁手/ヤンキース
再契約の可能性:
ベリンジャーはヤンキースのクラブハウスにすぐ溶け込み、チームメートからも「昔からいたようだ」と言われるほどだった。高い運動能力で外野守備を改善し、走塁でもチームに圧力を与えた。外野全ポジションと一塁をこなし、左の長打力もヤンキースタジアムに最適だ。球団は彼を市場トップ級の外野手と評価しており、残留は双方にとって理にかなっている。
残留しない可能性:
大市場での実績があるため、他球団から長期・高額のオファーがあれば移籍もあり得る。ヤンキースには予算の制約もあり、複数球団が競る中で交渉は12月まで長引く可能性が高い。左の長打力と守備力を備えた選手には競争が激しく、残留には最高額の提示が必要かもしれない。(Bryan Hoch)
ピート・アロンソ:一塁手/メッツ
再契約の可能性:
メッツの『一塁の穴』に最適なのはアロンソ自身だ。FAの一塁手の中で最高のスラッガーであり、ニューヨークへの愛着も公言してきたほか、ファンにも大人気だ。代わりになる選手では、アロンソと同等の長打力は望めない。昨オフのリーグ全体の関心の低さも考えると、FA市場で希望する長期契約を得られる可能性は低い。4〜5年契約で再契約できれば、契約終了時のリスクも抑えられ、両者にとって理にかなった選択となる。
残留しない可能性:
昨オフ、球団はアロンソとの交渉で強硬姿勢を示した。今オフのブランドン・ニモのトレードも、情に流されない方針を示している。ニモの移籍でアロンソの優先度は若干下がり、仮に一塁でなくても外野の両翼で打撃を代替できるようになった。球団の最優先事項は失点抑制であり、守備に課題のあるアロンソは完全にはフィットしない。また、今オフはクオリファイングオファーがないため、昨オフより多くの球団からオファーを受ける可能性もある。(Anthony DiComo)