5月26日、ロサンゼルスの渋滞にはまっていたキケ・ヘルナンデスは、それまで経験したことのない不安発作に襲われた。
左腹斜筋のグレード3の断裂が確認されたというメッセージを受け取った直後だった。オフシーズンに受けた肘の手術から過酷なリハビリを経て復帰したものの、わずか2試合、4打席で重傷を負った。
「ほとんど話すこともできなかった」とヘルナンデスは振り返った。気持ちを落ち着かせるため、妻に電話をかけなければならなかったという。「『こんなことが起きた。自分の体がどうなっているのか分からない。もう年を取りすぎたのかもしれない』と話した。でも、妻の声を聞いただけで落ち着いた。何度か深呼吸したら、大丈夫になった」
そして今、当初見込まれていた3カ月の離脱期間を丸1カ月短縮し、ファンから愛されるユーティリティープレーヤーが正式にドジャースのアクティブ・ロースターへ戻ってきた。ドジャースは7月28日(日本時間29日)のマリナーズとのカード初戦を前に、ヘルナンデスを10日間の負傷者リストから復帰させ、入れ替わりで内野手アレックス・フリーランドを3Aオクラホマシティへ降格させた。
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待望の復帰を迎えた一方で、ヘルナンデスの胸中には喜びと不安が入り交じっている。前回はアクティブ・ロースターに戻って間もなく、再び離脱することになったからだ。
「かなり緊張している。前回ここに座った時は、どれだけ調子がいいかをみんなに話していた。でも実際には、その直前の打撃練習で腹斜筋を少し痛めていたので、言いたいことを抑えている部分もあった。今はすべてがかなりいい状態にあると思う。打率1.000を維持したいし、何より仲間のもとに戻れてうれしい」とヘルナンデスは語った。
一般的にグレード3の断裂は、数カ月の回復期間を要し、手術が必要になることも多い。診断を受けた当初、ヘルナンデスは最悪の事態を覚悟した。咳やくしゃみといった日常的な動作でさえ痛みを伴った。それでも早期復帰を目指し、幹細胞治療に加え、毎日の高気圧酸素療法、サウナ、冷水浴、体幹を回旋させるトレーニングを徹底。離脱期間中も持ち前のユーモアを忘れなかった。
「注射などの治療を受けた後、症状がかなり改善していたので、みんな驚いていた。自分らしく冗談を言いながら走り回り、体をひねったりスイングしたりするふりをして、『グレード3の断裂なんてしていない。あのMRI画像は偽物だ』って言ってたよ」とヘルナンデスは語った。
ヘルナンデスはクラブハウスを明るくするだけでなく、医療スタッフが立てたプランを信頼し、目の前の一日一日に集中した。アリゾナとロサンゼルスで7試合のリハビリ出場と、さらに20打席の実戦経験を積み、負傷から6週間後に受けた検査では、重度の断裂が完全に治癒していることが確認された。
「素晴らしいプランがあり、正しい方法でリハビリに取り組めた。瘢痕(はんこん)組織(かさぶたのようなもの)が増えすぎないよう、かなり早い段階から体をひねる動きも始めていた。そうしたすべての取り組みが重なり、これほど早く復帰できたのだと思う」とヘルナンデスは説明した。
「本当に一日ずつ進んでいった」とヘルナンデスは続けた。
「誰よりもしっかりリハビリに取り組もうとしたし、試合中はできる限り最高のチームメートになろうとした。正直なところ、今季はまだ4打席しか立っておらず、出場したのも2試合だけだ。最後にプレーしてから長い時間がたち、負傷者リストで多くの時間を過ごした。それでも、振り返れば意外と早く過ぎたように感じる。今は状態もいいし、フィールドで何ができるのか楽しみにしている」
ヘルナンデスはすぐにでも試合に出る意欲を見せているが、デーブ・ロバーツ監督は今後数日間、起用法を慎重に判断する方針だ。
「多少は段階を踏むことになると思う。このカードでは相手の先発が3試合とも右投手なので、先発出場させるかは分からない。まずはベンチから起用するかもしれない。ただ、その後は現時点の予想では左投手との対戦が5試合連続で続く。そこで多くの出場機会があるはずだ。必要な確認項目はすべてクリアしている」と指揮官は語った。
守備では主に三塁と左翼で起用し、アンディ・パヘスを休ませるために中堅を任せる可能性もロバーツ監督は考えている。指揮官がどのような形で段階的に起用しようとも、ヘルナンデスは負傷を恐れてプレーを抑えるつもりはない。
「自分には一つのやり方しかない。それは全力だ。最初の数試合のリハビリ出場では、ケガのことを考えながらプレーしようとして、少し体が硬くなってしまった。だから、ただプレーする。再びケガをしたら、その時はその時だ。でも、自分にはほかのプレーの仕方が分からないから、スタイルを変えることはできない」とヘルナンデスは語った。
