タティス初退場、シルト監督の眼鏡投げから逆転

3点差を逆転し、パドレス6連勝

May 6th, 2025

逆転劇のターンングポイントだった。5月5日、パドレスは敵地でのヤンキース戦で八回を迎えるまで0−3と劣勢だった。八回1死一、二塁で打者は、フェルナンド・タティスJr.(26)。1ストライク1ボールからの3球目、ウィリアムスが投じた低めのチェンジアップはストライクとコールされた。ここで三塁側ダッグアウトからシルト監督が、叫びながら猛抗議。ストライクゾーンの高低は、両軍のベンチからは判断できる。シルト監督としては、低めのストライクゾーンを外れている、とみえた。結局、タティスJr.は次の球を空振り三振。ベンチに引き上げる際に球審に何かをつぶやくと、退場を宣告された。するとシルト監督はベンチを飛び出し、手にしていたメンバー表のカードとペンを放り投げた。さらに眼鏡も投げ捨て、まるで“臨戦態勢”に入っているようだった。タティスJr.に続いて、指揮官も退場処分を受けた。

場内のヤンキースファンは盛り上がり、空気が騒然とする中で次打者のアラエスが四球を選ぶと、マチャドが2点タイムリー二塁打、さらにボガーツが2点タイムリーヒットで続き、一気に逆転に成功。勝利をおさめ、6連勝を飾った。

「なんて言ったっけ? 忘れちゃったよ」

試合後のクラブハウスでタティスJr.は笑いながら振り返った。メジャーで初めての退場処分。野球人生ではウインターリーグで経験がある。「当時は18歳で、家族や地元(ドミニカ共和国)の人たちの前でプレーしていた。完璧にやりたい気持ちが強くて、感情が先走ってしまって、つい言葉が出ちゃった」。打率.317、8本塁打など1番打者として打線を引っ張るタティスの離脱は、試合の終盤とはいえチームには痛手だ。だが、期せずして、打線の集中力と闘争心を高めたような結果に結びついた。

6連勝の後、シルト監督は冷静に振り返った。

「まず言いたいのは、これは難しい仕事だということです。私は審判たちと良好な関係を築いていますし、彼らの仕事を尊敬しています。試合中、納得いかない判定がいくつかありました。私もあまりやらないけど、ベンチから意見を言いました。どこまで話していいか、分かりませんが、審判の判断です。それ以上はもうこれについてコメントしません」

激戦区のア・リーグ東地区で首位を走るヤンキースに逆転勝利したことは、好調なパドレスを物語る。終盤までの3点ビハインド。得点機で不利な判定と退場。指揮官は「勝利数としてはすべて同じ1勝ですが、今夜の勝ちはチームの芯の部分、つまりどう戦うか、という姿勢がより強く表れた。このチームの文化、粘り強さ、そして常に正しい姿勢で野球に臨むという価値観が、この勝利に象徴されている」と語った。

ちなみに投げた眼鏡は「無事でした。ちゃんと気をつけて投げたので、芝生の上に落ちて傷もついてません。大事な眼鏡なので、気をつけました」とジョーク混じりに笑わせた。熱くなった指揮官の姿にタティスJr.は「最高でした。マイク(シルト監督)はいつも僕らの味方でいてくれる。全力でそれを態度で示してくれる。そういう監督のもとでプレーできるのは本当にうれしいし、大好きです。だから、チーム全体としても素晴らしい勝利だった」と語った。

パドレスは昨季のワールドシリーズ覇者、ドジャースと同じナ・リーグ西地区で2006年以来、19年ぶりとなる地区優勝、さらに1969年の球団創設以来、初めての世界一を目指す。ドジャースとは僅差で地区首位を争うなど、好位置につけている。