山本由伸は、いかにして「中0日」を実現させたのか

矢田修氏との師弟関係

November 4th, 2025

伝説の2連投は、いかにして実現したのか。山本由伸(27)とて、ワールドシリーズ(WS)第6戦、96球で6イニングを投げ、今シーズンの任務は終了だと思っていた。だからこそ、試合後の会見で第7戦に登板する可能性を問われると「できれば応援を頑張りたい。明日もプレーする人は大変だと思います(笑)」と笑顔で話していた。実際、ロバーツ監督も第6戦後、第7戦の投手のやりくりについて「山本を除く全投手」と語った。

WS最終戦後、シリーズMVP投手は以下のように説明した。

「まずきのう(第6戦)投げ終わって、最終登板だと思っていたので、ずっと練習を教わっている矢田(修)先生に1年間ありがとうございました、と伝えたんですけど、あした(第7戦)はブルペンで投球できるくらいには(コンディションを)持っていこうか、といわれて」

矢田修氏には、山本がオリックス時代から治療を任せ、体の動かし方、力の効率的な使い方を習っている。ドジャース入団後、大阪で接骨院を営む矢田氏はチームがホームのロサンゼルスにいるタイミングで大阪から“海外出張”に出向く。1シーズンで何度も日米を往復しながら、この2年間も継続して山本の指導をしている。ポストシーズンではビジターにも帯同した。

世間で「やり投げトレーニング」と表現されるフレーチャという練習器具を投げる独自のルーティンは、キャッチボールの前に行う。力の最大効率化をはかり、その日、自身のコンディションのチェックに適した練習器具だからだ。開脚して、股を割って投げるパターン、ステップを踏んで投げるパターン、ジャンプするようなステップで投げるパターン。腕力に頼らず、体のバランスで正しく力を伝える方法を体得するために日々、フレーチャ投げを練習メニューに組み込んでいる。さらに重さと大きさの違う2種類のボールを投げる。矢田氏は、さまざまな角度から山本の動きを目視。気づいたことがあれば、その都度、助言を送る。

「今の方が、同じ力で遠くにいきましたね」

アドバイス直後。山本は矢田氏にそういって、うなずいた。それは8月、サンディエゴでのパドレス戦前の練習中、レフトのファウルポール付近でのワンシーンだ。少なくとも現在、山本は一般的なバーベルなどを持ち上げるウエートトレーニングを行わない。筋力を増やして、パワーをつける。それをパフォーマンス向上とリンクさせる。パワー野球全盛の米球界で流行するその方法論とは、異なる。かといって、山本は決して華奢(きゃしゃ)な体つきではない。確かに身長178センチは、メジャーでは小柄だ。しかし、近くでその足腰をみれば、大きな太ももに驚くはずだ。

重要視することは、いかに全身の力を効率よく、バランスよくボールに伝えるか。プロ1年目からそのテーマを追求し続けている。もちろん、今も探求の途中だ。

「もともと僕が19歳くらいの時に日本の1軍の試合で初めて投げて、1試合投げたら10日くらい、肘が伸びないくらい(張って)パンパンだったんですけど、そこからトレーニングだったり、フォームをちょっと変えたりして、どんどん負担なく、全身を使ったフォームで投げられるようになった」

第6戦後。山本はトロントのチームホテルに戻り、矢田氏から治療を受けた。翌朝、第7戦の前にも治療を受け、体の状態をチェックしてもらった。激闘ゆえに治療を受けたわけではなく、由伸にとっては矢田氏に体をみてもらうことは、重要なルーティーンだからだ。

「(第7戦)きょう体がこんな感じだから、こんな感じで動いていこうか、みたいな。まだ(実際に第7戦で)投げる(ことを前提にした話合い)とかじゃなくて。練習してみたらすごい感覚がよくて、なんか本当に気づいたらマウンドにいました」

山本はメジャー移籍後2年間、レギュラーシーズンで中5日以上の登板間隔で先発してきた。メジャー投手でスタンダードの中4日は、まだ解禁されていない。昨今、データ計測が詳細になった投球で各投手は、回転数や球速を追い求め、全力投球で投げる割合が増えた。一昔前、メジャーで超一流の基準とされた「中4日&200イニング」は減る傾向にある。それでも、エース級の投手には勝負どころで中4日が求められることは事実だ。

山本が中4日で登板してこなかったのは、ドジャースがケガを防ぐためになるべく日本の時に近い調整で順応を進めさせたい、という方針がある。慎重を期した調整でも、1年目は右上腕を痛め6月中旬から、3カ月近く離脱した。おそらく、山本と矢田氏は二人三脚で中4日も耐えられるように地道に適応をはかっている。レギュラーシーズンでの中4日、ポストシーズンの重要局面では連投する。今後、ドジャース王朝が続くとすれば、山本はエースを務め、世界一の投手になっていることだろう。