ヤンキース傘下のマイナー3Aスクラントンに在籍している前田健太(37)が来季は日本球界復帰への決意を固めたことが8月31日(日本時間9月1日)、分かった。前田がMLB.COMの取材に応じ、明言した。野球人生の目標としている日米通算200勝(MLB68勝、広島97勝)まであと35勝。残りのシーズンはメジャー昇格を目指し、マイナーで全力を尽くす。次回登板は3日(同4日)、敵地のウースター(レッドソックス3A)戦で先発する。
「今後、米国での状況が(メジャー昇格するなど)どうなっても来年は日本に帰ります。8年(契約が)終わったら絶対、帰ろうと思っていたんです、日本に」
前田の気持ちは当初から、2016年にドジャースと結んだ8年契約が満了したら、日本球界に復帰する考えだった。2020年にトレードでツインズに移籍。21年にトミー・ジョン手術を受け22年は全休し、23年に復帰した。安定した成績を残す右腕に代理人のスコット・ボラス氏は「絶対にいい契約が取れる」と自信があった。23年オフにフリーエージェント(FA)になり、複数球団からオファーを受け、タイガースと2年2400万ドル(約35億円)の契約を結んだ。
「タイガースと2年契約を結んだ時から、この契約が終わったら日本に戻る、と決めていて、それは家族にも伝えていました」
家族会議で話し合い、米球界での挑戦を2025年限りで終えることを2023年末の時点で決めた。今季、タイガースからDFA(メジャー40人枠を外れる措置)され、マイナーに落ちたから日本球界に戻る考えにシフトしたわけではない。日米通算200勝を達成して、野球人生は日本球界で終えたい。それが、前田が渡米した当時からの思いだった。早穂夫人、長女と長男はひと足先に日本に生活拠点を移した。家族は“単身赴任”の前田のもとへ、今季は日本から応援に駆けつけていた。
「仮にメジャーに上がれなくても本来の自分の投球を取り戻したい。日本の球団からオファーをいただけるように成長したい」
米球界10年目の今季は、5月はじめにタイガースから事実上の戦力外通告(DFA)を受けた。その後はカブスとマイナー契約を結び、7月下旬には右肘手術後の最速となる94.4マイル(152キロ)をマーク。「ツインズで手術から復帰したときや、去年のタイガースのときより、今はいい投手になっていると思います」。カブス独自のデータ解析システムでは「今投げているボールの質なら、メジャーでは防御率2.7台に収まる」との評価を受けていた。
調子が上がったタイミングでメジャー昇格の可能性を求めてオプトアウト(契約破棄条項)を行使した。8月4日にヤンキースとマイナー契約。マイナー3Aのレギュラーシーズンは21日(同22日)までだ。前田は好成績を残せば、メジャー昇格に望みをつなぐとともに、ヤンキースがプレーオフに進出した際の控えメンバーとしてマイナーのシーズン終了後も現地に残り、練習を続ける可能性がある。シーズンは残り1カ月。レギュラーシーズン、もしくはプレーオフでのメジャー昇格を目指しながら、残り少ない米国生活を過ごす。
仮にマイナーで好投し、メジャーに昇格したら「帰国」の決断は変わるのか。あるいは、復調した前田を評価し、来季どこかの球団でメジャー契約のオファーが届いたらどうするのか? もう1年、米国に残るのか。現役選手の栄誉でもあるメジャーサービスタイム(実働)10年を迎える可能性がある。
「いや、残らないです。来年は帰ります。これはどういう状況であっても変わりません」
決意は固い。残りの投手人生は、日本で全うする。
