【コラム】前田健太、キャリア最終章へ

マエケンが移籍先に求める条件は

November 9th, 2025

前田健太(37)が来季は日本球界に復帰する意向を表明した。自身のインスタグラムに英文を投稿。これまで在籍したチームで投げる写真をアップした。チームメート、スタッフ、そしてファンに感謝した。

(以下、前田のインスタグラム)

「次にプレーする球団が、最後の球団だと思います。全てを捧げて、チームに貢献したいですね」

帰国前の9月末、前田の所属するヤンキース傘下3Aスクラントンは、フロリダ州で行われたマイナーリーグのポストシーズン(3回戦制)でジャクソンビル(マーリンズ傘下)に1勝2敗で敗退。その後は、帰国準備などのため、ロサンゼルスに滞在していた。

日本に戻るまでのほんの数日の間、どうしても会いたい人物がいた。尊敬するパドレスのダルビッシュ有(39)だ。

LAからサンディエゴに日帰りした。背番号11のホーム用ユニホームを購入し、サインをもらった。

「現役の選手にサインを求めることは、ほぼなかったです。でも、ダルさんは特別。こういう機会なので、ね」

心から慕い、尊敬する先輩。帰国する数日前、パドレスがポストシーズンに向けシカゴに遠征する前に直接会い、これまでの感謝を伝えた。

(2017年、前田とダルビッシュは8月以降、3カ月間はドジャースでチームメートだった)

広島カープ在籍時からダルビッシュの背中を追った。2010年、当時22歳だったマエケンのブレークをきっかけにオールスター戦などから、公私ともに交流が始まった。当時、日本のナンバーワン投手だったダルビッシュに感化され、本格的にウエートトレーニングに取り組んだ。サプリメントを含む、食事や栄養の知識も勉強した。今となっては若気の至りだが、体重を増やすために菓子パンでカロリーを稼ごうと取り組んだ時期もあった。

「無知でしたね。今思うとヤバイですよね」と苦笑いするが、失敗を経験し、正しい栄養の知識がある。

2021年に右肘の靱帯再建手術(トミー・ジョン手術)をした際には、リハビリの進め方、取るべきサプリメントの種類と量はダルビッシュから助言を受けた。

「もう全部、ダルさんのいう通りにしました。教えてもらったものを教えてもらった量だけ飲みました」

手術前、手術後、苦しいときにはいつもダルビッシュは前田を気にかけ、連絡をくれた。いつも寄り添う姿は、先輩投手としての理想像だった。

ダルビッシュも後輩を思い、惜別のコメントをした。

「ドジャースでもタイガースでも、ツインズでも長い期間ずっと成功を収めてきた選手でもあるし、僕は仲いいですから。もうちょっと長いことアメリカにいてほしいな、近くにいてほしいな、って。日本に行っちゃうとなかなか会えない。ちょっとさびしいですけれども、本人が決めたことですから、頑張ってほしいと思います」

前田は若きころ、自他ともに認める負けず嫌いだった。もちろん、チームの勝利に貢献したいと考えていた。だが、自分が活躍し、好成績を残し、個人タイトルを獲得することも重要だと考えていた。ライバル投手、特に同年代をたたえるコメントはしたくなかった。ときは経ち、尖(とが)った気持ちは和らいだ。金髪、茶髪だった若者は30代後半を迎え、頭髪やヒゲに白髪が混ざるようになった。

「チームが勝って、優勝する。今の役割はそこにどれだけ貢献できるか、だと思うんですよね。若い頃は『壊れてもいいからチームのため』と素直に思えなかった。自分にはこの先も投手生命があるし、まだ先の目標もありましたから。でも、今は『壊れてでも…』というその気持ちが分かります」

もちろん、あと35勝に迫る日米通算200勝も大きな­モチベーションだ。しかし、それ以上に「優勝するために」投げたい。後輩たいが困難に直面した時に助けられる存在でありたい。成長のサポートをしてあげたい。それがチームの勝利につながると信じている。今後、日本球界は前田に獲得へ向けた正式オファーを出す。入団を決める際の条件は。

「ありきたりですけど、自分がどれだけ求められるか、必要とされるか。それしかないです」

マエケンは野球人生の最終章へ向かう。