2025 年は阪神タイガースにとって特別なシーズンになる。球団創設 90 周年を迎え、今季から新たに監督に就いた藤川球児のもと、2 年ぶりの覇権奪回を目指す。
球団は 1935 年に「大阪野球倶楽部」として創設され、リーグ 1 年目の’36 年から参戦。「タイガース」の呼称は拠点の大阪が当時、日本一の工業都市だったことから、アメリカで商工業の要だったデトロイトに本拠地を置くタイガースにあやかったものだ。
2000 年代初頭までは 15 シーズンで最下位 10 位という低迷ぶりで、「暗黒時代」と揶揄された。それでも、大阪や神戸など関西圏で絶大な人気を誇り、本拠地の甲子園は「虎党」で溢れかえる。
東の巨人、西の阪神。両球団の戦いはいまも「伝統の一戦」と呼ばれ、連綿とつづく日本のプロ野球人気を二分してきた。昨 年 は シ ー ズ ン 終 盤、 首 位 の 巨 人 に 詰 め寄ったが惜しくも 2 位に終わった。
藤川監督は昨年 10 月の就任会見で「勝つ」意気込みを見せ、理想の野球として「 3 点ほど取ったらゲームをきっちり終わらせてくれる、安定の野球です。面白味がある野球ではなく、気づけばゲームが終わっているのも狙いです」と明かした。
昨季まで 2 年間、指揮を執った前監督の岡田彰布は’05 年にもリーグ優勝へと導いており、自身 2 期目の指揮となった’23 年は守り中心の野球で 38 年ぶりの日本一を成し遂げた。
現役時の藤川は岡田の起用でクローザーとしての素質が開花。’05 年の優勝にも貢献し、球団最多の日米通算 245 セーブを挙げたクローザーである。かつての「守護神」らしく、基本的には岡田が推し進めた「守りの野球」を踏襲するだろう。
一方で藤川は独自色も打ち出している。
打線の組み換えはそのひとつ。近年、4 番を任されてきた大山悠輔が勝負強さを生かす形で 5 番に配置転換され、ポイントゲッターの役割を担う。そして「攻撃の顔」である 4 番はプロ 3 年目、24 歳の森下翔太に託す。昨年は 129 試合に出場して 16 本塁打、打率 .275 と奮闘。11 月の WBSC プレミア12 では全試合で日本代表の 4 番を任され、ホームランを打つなど進境著しい。
さらに、3 番はプロ 4 年間で 84 本塁打の佐藤輝明が務める。クリーンアップ 3 人が機能すれば、昨季の貧打は解消され、優勝争いの本命に躍り出るだろう。
このチームの生命線は充実したスタッフが 揃 う 投 手 陣 だ。 先 発 の 軸 と な る の が 昨年、チームトップの 13 勝を挙げた才木浩人と’23 年のリーグ MVP に輝いた村上頌樹の同学年コンビである。特に才木は2年前、WBC の強化試合で日本代表の大谷翔平にフォークを片手でバックスクリーンに放り込まれたが、その悔しさをバネにしてエース格に成長。将来的なメジャーリーグ挑戦を公言しており、注目の 1 年になる。
救援陣もベテランの岩崎優を中心にチームワークがいい。昨季のチーム防御率 2.50は巨人に次いで僅差の 2 位だったが、’23 年まで 2 年連続でトップを誇った。優勝した巨人がオフの大型補強に成功したが、阪神も豊富な戦力でライバルに挑む。
藤川は「 OB の方々が 89 年間、残してきた思いを次の世代に繋がないといけない」と話し、伝統を引き継ぐ気構えである。
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