マーリンズが敵地でジャイアンツに3連勝し、今季2度目のスイープ、そして8度目のシリーズ勝利を挙げた。今季からチームを率いるのは、45歳のクレイトン・マッカラー監督。昨年までドジャースの一塁コーチを務めた指揮官は、若い選手が多いチームで試行錯誤しながら、日々戦っている。
ここまで79試合を終えて、34勝45敗(勝率.430)でナ・リーグ東地区の4位。チーム打率.254でナ・リーグ5位につけるが、先発投手の安定感に欠け、防御率はリーグ13位の4.85と振るわない。現状、ワイルドカード争いには厳しい順位だが、チームの雰囲気は明るい。
監督としての挑戦
「楽しいよ。忙しいけれど、毎日、学びが多い」
ドジャース時代と変わらない笑顔でそう教えてくれた。
ワールドシリーズの興奮も冷めやらぬ昨年11月に監督就任し、以降、スタッフ選考などで忙しい日々を過ごしてきたが、「チームを自由に作っていけるのはとても魅力的だ」と前向きだ。
マッカラー監督は選手としてメジャー経験はない。高校卒業時にマリナーズからドラフトされたが、大学に進学し、大学卒業時の2002年に現在のガーディアンズに入団。メジャーの経験がないまま、2005年にキャリアを終えた。その後、2007年から2014年までブルージェイズのマイナーリーグチームで監督を経験した後、ドジャースに入り、2021年から2024年まで一塁コーチを務めた。
平均26.4歳の若いチーム
常勝軍団のドジャースとマーリンズでは役割も、そして求められることも大きく異なる。「テクノロジーの整備も必要だし、若い選手たちが中心なので野球自体が異なる。ほかにもマイナーリーグの選手をメジャーレベルに育成する役割も担っている」と説明する。
若い選手が多い、という言葉通り、今季のマーリンズ野手の平均年齢は26.4歳。一方、ドジャースは30.9歳。年齢差はグラウンドでの経験差としてプレーにリンクする。
「ドジャースはポストシーズンを始め、経験豊富な選手が多いので、勝敗に左右されずにやるべきことに集中する術を知っている。うちの選手は若く、経験も浅いので、日々の試合からそれを学んでいるところ」
とはいえ、マイクロマネジメントはしない。選手一人ひとりに、勝つため、上手くなるために何が必要か考えさせる。
「メジャーリーグの試合やシーズンに向けてどう整えるべきか、常に指示を待つのではなく、自主的に動けるように、つまり『大人に』なってほしいと思っている。それが高いレベルでプレーするために必要になるから。そういった意味ではマネージ(Manage)よりも教育の側面が大きいかもしれない」
ロバーツ監督から学んだこと
指揮官が参考にするのは、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督で、「デーブは人との接し方がとても上手い。全員を尊重し、スタッフに自分の仕事を任せる余地をもたせてくれる。人をどうマネージしたらいいか、という『人間的な部分』をとてもよく理解している。同時に、試合の進め方も優れている」と話す。
ロバーツ監督は若手、ベテランに関係なく、褒めるべき点は褒め、修正点は時に鋭く、厳しく指摘する。稀にベテラン選手の顔色をうかがう監督もいるが、ロバーツ監督はその辺りの操縦術が絶妙だ。
「デーブと比べると、どれくらい上手くできているか、自分ではまだ分からない。でも選手にはしっかりと目標と目的意識を持たせて、そのために必要なことを正直に率直に伝えることを心がけている」
選手と共に常に成長を
ダグアウトで刻一刻と変化する試合を指揮する上で必要なのは、戦術の知識はもちろん、「すぐに次の決断が求められるから、切り替える力が大事」と話す。指揮官は、勝敗に左右されたり、一喜一憂しやすい若い選手にもその考え方を説く。長いシーズンを戦い抜くには、その考え方がとても重要だ。
一方で、試合後には時間をかけて采配を振り返る。
「自分の考えが正しかったと思ったら結果が伴わなくても納得して、また同じ状況に遭遇したら同じ選択をする。結果に振り回されるのではなく、その采配の裏にあった考え方を見直す作業をするんだ」
就任1年目で苦労も多いが、マッカラー監督は新たな挑戦を楽しんでいるように見える。
「一塁コーチをしていた頃も、毎年、自分の成長を感じた。時に判断ミスもするし、思い通りにいかないこともある。でもフィードバックを受け入れて、学んでいきたい。1カ月後、そして1年後には、もっと成長して、良い監督になりたい」