データでもっと野球をおもしろくーMLBリサーチチームの仕事とは

October 27th, 2025

「大谷選手は、過去に投手で先頭打者本塁打を打ったことはある?」

「日米を含めて、山本由伸投手の最多投球は」

「トリプルプレーは、今季何回目」

「マーリンズがサヨナラ勝ちをするのは今季何回目?」

試合中に、ふと疑問が浮かぶことがある。

データや記録は、記事に正確さや信頼性、深みを与えるために欠かせない要素だ。時間をかければ自分で調べられることもあるが、そもそも調べ方や参照すべきサイトが分からない場合も多い。そんな時に頼りになるのが、MLB.comのリサーチチームである。

チームのチャットグループには251人が参加している。各チームを担当する番記者、複数球団を取材する遊軍記者、そしてアナリストなど、多様なメンバーがそろう。その中でも中心となる約10人が、質問をチャットに投げかけると、自宅や球場にいる誰かが「了解、ちょっと待ってね」と応じ、5分もたたないうちに答えを返してくれる。試合を見ながら記事を書く記者にとって、これほど心強いサポートはない。

※これは、大谷選手の投手・先頭打者本塁打についての質問。レギュラーシーズンでは打っていたのでは、と思っていた記者に、サラさんが「レギュラーシーズン、ポストシーズン通じて初」と教えてくれた。

例えば今季、大谷翔平選手が二刀流として復帰した際、①「リアル二刀流」(投手登録のまま打席に立つ場面)、②マウンドを降りてDHとして出場した場面、③登板翌日の打撃成績――この3つを比較したいと思っても、自分で調べるのは容易ではない。だが、リサーチチームに頼めばあっという間にデータが揃う。

先日、大谷が記者から「登板時と登板翌日の打撃成績が落ちている」と指摘された。しかし実際のデータを見ると、リアル二刀流時にはやや数字が下がるものの、降板後や登板翌日の成績はそこまで大きく落ち込んでいるわけではない。

大谷自身も「(不振と呼ぶには)サンプル数が少なすぎる」と反論したが、これは「なんとなく成績が落ちている気がする」という感覚と、実際の数字とのズレを示す好例だ。データは、その思い込みを整理し、事実を明らかにしてくれる。

※これはWS第1戦で、ドジャースのスネル投手が1イニングで29球を投げたことに関する質問。ポストシーズンでは少ない球数で抑えていた印象があったので、「これはPOで最多だったか」質問し、サラさんから「今年のPOではスネルにとって最多。それまでは24球」と返信が。これによってブルージェイズ打線がいかにスネル対策をしているかが見えてくる。

「数字から見えることがある」

そう語るのは、リサーチチームで中心的役割を担うサラ・ラングさんだ。私は心の中で彼女を「リサーチ部部長」と呼んでいる。豊富な知識、迅速な対応、そして他のメンバーへの的確なサポート――どれを取っても群を抜いている。

サラは質問に答えてくれるだけでなく、「これも使えるかもしれないから参考にしてね」と、記事に深みを持たせるデータも提供してくれる。

彼女はいつも、こう言う。

「大谷の偉業を当たり前のことのように思ってしまう風潮があるけれど、そうじゃない。彼の活躍は歴史に残るもので、もう二度と見られないプレーだということを意識してほしい」

試合ではプレーはもちろん、選手の表情からも多くのことを感じ取れる。しかし、データがそのプレーのすごさをより鮮明にしてくれることも少なくない。

例えば、NLCS第4戦で大谷翔平は投手として先頭打者本塁打を記録した。これはレギュラーシーズン、ポストシーズンを通じてメジャー初の快挙である。特にレギュラーシーズンでは達成していなかった事実が、この記録の価値をさらに際立たせる。

また、山本由伸はポストシーズンで2試合連続の完投勝利を挙げた。これは2001年のカート・シリング以来の快挙であり、ワールドシリーズでの完投は2015年のジョニー・クエト以来となる。シーズン中もノーヒットノーラン目前の快投を見せてきた山本だが、短期決戦の極限の舞台で完投を果たす価値は格別だ。現代野球では球数制限や分業制が進んでおり、ワールドシリーズで一人の投手が最後まで投げ抜くことは極めて稀である。歴史を振り返り、その人数や記録を確認すると、その偉業の重みがさらに明確になる

MLBでは膨大なデータが日々積み上げられており、それを分析する専門チームや、データを活かして記事を書く記者たちも揃っている。記事を読むと、プレーの一つひとつや選手の活躍が数字とともに立体的に見えてくる。データを通して試合を追うと、いつも以上にワクワク楽しめるはずだ。