ここ10年、ムーキー・ベッツの誕生日の過ごし方はいつも同じだ。
シーズン中のほとんどの日と同じように、グラウンドで汗を流して迎える。地区シリーズ突破を「翌日に」決める可能性がある中で33歳になったベッツは淡々と練習を行った。
ベッツは過去10年で9度もプレーオフに出場しており、特別な日にポストシーズンを戦うことはもはや当たり前になっている。この考え方と野球への感覚が、右翼で6度のゴールドグラブ受賞者から、今やリーグ屈指の万能型ショートへと変貌させた。
「長年ゴールドグラブを受賞してきた外野手が、今年はショートとしてもゴールドグラブの候補に名を連ね、しかもポストシーズンという最高の舞台で重要な試合を任されている。こんな前例は他にないし、これをやってのけるには、並外れた頭脳と才能が必要なんだ」とドジャースのデーブ・ロバーツ監督は語った。
この才能は、地区シリーズ第2戦で顕著に現れた。ドジャースはフィリーズ相手に九回に2点差まで迫られた。なおも無死2塁でベッツは内野陣にホイールプレー(内野手が車輪を描くようなに連動するバント対応の守備シフト)を指示し、それが完璧に決まった。
ベッツはこのプレーに対する野球界の反応に少し驚いたという。
「これは本当に基本的なプレー。その方法はせいぜい2~3通りで、そのうちの一つだよ。たとえるなら、レイカーズがNBAファイナルで2-3ゾーンディフェンスを使って勝ったようなもの。要は大事な場面でやったらうまくいった、ただそれだけだ」と話す。
イニングの最後には、フレディ・フリーマンが二塁、トミー・エドマンが送球した難しいショートバウンドを好捕してアウトを取った。試合後のロッカールームでは、今年がショートとしての初フルシーズンとなったベッツが直感を頼りにチームをピンチから救ったことが話題になった。
実はベッツ自身、シーズンの最後までショートのポジションを守り続けるかどうかは分からなかったと最近語っている。
2024年シーズン中、ベッツはショートに挑戦したものの、複数の理由から最終的には右翼に戻った。ショートで自己最多の9失策を記録したことや、左手の骨折で長期離脱した後、復帰時に攻守のバランスを考えて外野に再コンバートされた。
そうした経緯もあって、2025年にショートのレギュラーを勝ち取るためには、自身のプレーを大きくレベルアップさせる必要があるとベッツは感じていた。前年とは異なり、今オフは新たなポジションについてじっくりと細部を学ぶ時間が確保できたうえ、シーズン中もミゲル・ロハスや一塁コーチのクリス・ウッドワードらチームメートから多くの知識を吸収した。
「1年を通してショートを守れたこと、そしてミギー(ロハス)の存在は本当に大きかった。彼は野球の知識が豊富で、とくにショートというポジションに詳しい。僕のメンタル面での成功は彼のおかげだと言ってもいい」とベッツは語る。
多くの努力と実践を積み重ねた結果、ベッツはショートとしての自信をつかんだ。
「今ではショートを守るのは右翼にいるみたいな感覚で、あまり意識しなくなった」と話す。
今季はベッツにとって特別なシーズンとなった。
スプリングトレーニング終盤に胃腸の不調で18ポンド(約8キロ)も減量し、これが長期間の打撃不振の原因と見られている。その間、守備に救いを見出し、ショートでメジャー最多の17守備防御点をマークした。しかし8月に入ると、ベッツは自らの打撃不振を「今季最悪」と認め、実質的にシーズンを終えたかのような発言も口にした。
そこから見事に巻き返し、シーズン終盤47試合では打率.317、出塁率.376、長打率.516と好調を維持し、その勢いはポストシーズンでも続いている。直近の18打席で7安打(打率.389)と調子を上げ、ドジャースはナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS=7回戦制)進出を目前にしている。
メジャーリーグのショートを務めるには、単に守備が上手いだけでなく、試合の流れを読む深い洞察力と冷静な心臓が必要だ。ベッツがフィリーズ戦の大事な九回でリーダーシップを発揮した姿は、チームメートにも強い印象を残した。
「ムーキーをとても誇りに思う。ショートの守備だけでなく、内野陣のキャプテンとしても頼もしい。彼は日々成長している。今季は素晴らしい守備を見せてくれたし、本当に万能型ショートへと進化している」とロハスは太鼓判を押した。
