カージナルスの本拠地ブッシュスタジアムで行われたロイヤルズとの初戦で、試合以上に注目を集めた“もう一つの主役”がいた。
右翼席200レベルにスティーブン・F・オースティン大の野球クラブチームが陣取った。観客がまばらなエリアで上半身裸になって声援を送り続け、その一体感ある応援が球場の空気を一変させた。試合は延長11回の末、カージナルスが5対4でサヨナラ勝ち。
試合後、オリバー・マーモル監督は会見の冒頭で、自ら切り出した。
「右翼席で盛り上げてくれたあのグループには、毎試合来てもらうために何でもしたい。本当に最高だった。彼らだけじゃなく、きょう球場に来たすべてのファンのおかげで、素晴らしい雰囲気になった」
指揮官の発言は、単なるリップサービスでは終わらなかった。
ロイヤルズとの第2戦前、マーモル監督は記者からこの“公約”について問われると、すでに水面下で動きが始まっていることを明かした。クラブチーム側からも反応があり、球場側とともに何らかの形で“再来”を実現する可能性が出ていると話した。
詳細は明かされなかったが、指揮官は「続報を待っていてほしい」と笑みを浮かべながら語った。
その後まもなく、カージナルスは、マーモル監督がロイヤルズとの週末2試合(現地土日)に向けて、「タープス・オフ(Tarps Off)」と呼ばれる応援エリアの残りチケットをすべて買い取ったと発表した。球団の公式SNSでは、その無料チケットを配布するためのリンクも公開されると、あっという間に「Sold Out」に。
マーモル監督は、単に“チケット営業の救世主”になるだけでは終わらなかった。
試合後には、自らスティーブン・F・オースティン大のクラブ野球チームを引き連れ、カージナルスのクラブハウスへ案内するサービスも。
地元テレビ局のインタビューでは、クラブチームの選手が「自分たち、D1(NCAA1部)ですらないんだ」と笑いながら話していた。そんな大学のクラブ野球チームが、一夜にしてスポットライトを浴びる存在になった。
クラブハウス内はまさにお祭り騒ぎ。選手たちはサインや記念写真を求め、さらには再び上半身裸になって大騒ぎし、勝利の余韻を楽しんだ。
カージナルスの遊撃手メイソン・ウィンも、その光景を楽しそうに見つめていた。
「彼らがちゃんと注目されているのが本当にうれしいよ。僕はここに来てまだ数年だけど、この球場でも、たぶん他の球場でも、こんなの見たことがない」
さらにウィンは笑顔で続けた。
「彼らが新しい流れを作ってくれた感じだね。これからもっと増えてほしいよ」
これは、今季のカージナルスの“勢い”を象徴する新たなエピソードだ。
若手主体のチームは、開幕前の予想は決して高くなかったが、ここまで26勝18敗と好調を維持。シーズン95勝ペースという数字は、多くの専門家が予想していた「90敗クラス」の下馬評を大きく覆す活躍だ。。
その予想に反し、チームは序盤から勢いを落とさず、アグレッシブなプレーと明るい雰囲気で勝利を重ねている。スタジアムの熱気も日増しに高まり、それに呼応するようにファンの期待も膨らみ続けている。
