【コラム】好調のパドレス松井裕樹、奄美大島への感謝

August 29th, 2026

1月の重要さを改めて知る機会だった。

後半戦は15試合で3勝0敗、防御率0.98と調子を上げるパドレス・松井裕樹(30)に好調の要因を聞いたときだった。

「奄美大島での自主トレですね。3週間、最高の環境で集中して練習できることは、シーズンを通して投げ抜く上でとても重要ですから」

テレビのスポーツニュースなどで1月に各選手が温暖な地へ行き、自主トレに励むようすは、ファンには当たり前の光景かもしれない。しかし実は、選手や関係者にとって自主トレ場所の確保は、思いのほか難しい。プロ野球選手がお願いすれば、どこでも施設を使わせてくれる、というほど簡単な話ではない一苦労がある。

温暖な土地、キャッチボールや遠投ができる広いスペース、トレーニング設備の併設、そして3週間から約1カ月間のまとまった日数の確保。お金を払えばいい、という問題ではなく、行政や地域の人たちの理解を得なければ実現しない。

「奄美大島の人たちは、とても温かく応援していただいています。奄美大島の方々がOKしてくれるなら、引退するまで、奄美大島で自主トレをしたいと考えています」

楽天時代の2022年オフ、田中将大(37=現巨人)と行っていた9年間の合同自主トレから巣立ち、自主トレ拠点を奄美大島に移した。松井の人柄に引かれるように球団の枠を越えて、参加者が増えている。今年はロッテの鈴木昭汰(27)、宮崎竜成(25)、阪神の津田淳哉(25)、広島の佐藤柳之介(23)ら後輩とともに、朝から夕方まで投球練習とトレーニングに励んだ。

松井自身はプロ1年目を終えたオフ、球界を代表するエースだった田中塾の門下生となった。

今はメジャーリーガーになった今、後輩たちとともに切磋琢磨する。自ら手本を示すこともあれば、後輩たちから学ぶこともある。肉体強化のみならず、1年に1度「おかえりなさい」と温かく迎えてくれる奄美大島の人々とのふれあいも松井や他の選手たちにとって重要な時間。心温かいもてなしや、親切心は厳しいシーズンを戦った心を癒やし、新たな1年へのモチベーションを高めてくれる。

今季は、2月に左内転筋を痛めてメジャー復帰は5月にずれ込んだ。序盤の負傷はあったが、それまでは健康に投げ、過去2年連続で60試合以上に登板した。2024年は64試合(62回2/3)、昨季は61試合(63回1/3)のタフネスぶり。今季は複数イニングの登板も多く、40試合で51回1/3を投げている(8月27日時点)。1年をスタートする基礎の体力強化は「奄美大島での自主トレがあってこそ」と松井は言う。​

奄美大島は1月でも平均気温が約15度と温暖で練習環境も充実している。魚介類や島野菜など栄養価の高い食材にも恵まれ、アスリートに重要な食事での体作りにも最適だ。

2021年には島全体が世界自然遺産に登録され、海と山に囲まれた豊かな自然が広がり、野球に集中しながらも休養日にはマリンスポーツでアクティブ・レストするなど心身を整えるにも最高の環境だ。

今オフは、労使交渉の難航が予想され2月のキャンプインが遅れる可能性がある。シーズン開幕の延期を見据えながら、どのような自主トレのプランを組むか。5年契約の4年目に向かう前、奄美大島での自主トレが重要な時間になることは、間違いない。