ア・リーグ東地区の首位を走るブルージェイズ。
好調の鍵は、打撃力にある。
今季ここまで、チーム打率(.268)、出塁率(.337)、三振数(894)で両リーグ通じてトップ、OPS(.767)はヤンキース、ドジャースに次ぐ3位と高い数字をマーク。昨季の打率.241(19位)、出塁率.313(11位)、OPS.702(17位)という数字からも、今季の飛躍ぶりがうかがえる。
チームの防御率は今季4.24(20位)、昨季4.29(22位)で、投手力には大きな変化はなく、高い打撃力がチームを牽引している。
ブルージェイズの打撃改革を行なったのが、今季から打撃コーチを務めるデービッド・ポプキンス氏だ。元マイナーリーガーで、2019年から21年までドジャース傘下のマイナーチームで、2022年からの3年間はツインズで打撃コーチを務めた。
ポプキンスが徹底するのが「個別指導」だ。
「自分がスイッチヒッターで、左右で感覚が違うことを実感していたので、選手一人ひとりに合ったアプローチが必要だと気づいた。ドジャースやツインズでの経験を通じ、年々学びながら『個別化』が最も重要だと確信した」と話す。
各選手の強み、弱みをコーチ陣がしっかり把握し、試合前の打撃ケージでの準備も全体プランを持ちながら選手ごとに調整を施す。「投手がどんな球種やコースで攻めてくるかに応じて、選手ごとに狙うゾーンは異なる。だから一人ひとり違うアプローチで備える」と指導のアプローチを説明する。
最初は懐疑的だったベテラン勢もポプキンス氏のデータ量、そしてコーチとしての姿勢を理解し、今ではしっかり信頼関係を築いている。ブルージェイズは今季、三振数が最も少ないチームだが、そういった数字にも打撃コーチの手腕が顕著に現れている。
「フロントが高いコンタクト能力を持つ選手を集めてくれたことが大きい。それぞれが自分の自然なスイングで臨めるように指導している。『三振するな』なんて一度も言ったことはないよ」と楽しそうに笑う。
ツインズとの第3戦で2本塁打を放ったデービス・シュナイダーは「打撃は浮き沈みがあるものだから」と前置きし、「打撃コーチが『みんな自分らしく』と言ってくれるのが大きい。僕は僕らしく。それぞれに合わせて指導をしてくれる。投手ごとに対策を練り、それを個別に情報を落としてくれる。とても徹底されている」と説明する。
若い選手はメジャーに上がった際に、打席でのアプローチで迷いが出ることがある。打順や打線で役割が変わるためだ。
シュナイダーは新しい打撃指導のおかげでその迷いが無くなり、「自分がダメージを与えられる球だけに集中する。例えばボー(ビシェット)はどんな球でも安打にできるけれど、自分は初球から無理に振らず、『打てる球を打つ』ことだけに集中している。ファウルで粘りつつ、チャンスボールを仕留めたい」と話す。
「自分らしく」というシンプルな個別化指導がブルージェイズの好調さを支えている。