新人アンソニー、才能を発揮した1年目を分析

ア・リーグ新人王投票で3位になった21歳

November 17th, 2025

ロマン・アンソニーの新人シーズンがこれからの予告編だとすれば、ボストンは特別なものを手にしたことになる。

21歳の外野手には、メジャー昇格当初から大きな期待が寄せられた。シーズン開幕時にはMLBパイプラインで全体1位の有望株と評価され、開幕直後の3Aでのプレーはその期待をさらに膨らませた。昇格2日前には497フィート(約151.5メートル)の満塁本塁打を放ち、期待は最高潮に達した。シーズン序盤はスロースタートとなり、左脇腹の負傷でシーズン終盤を棒に振ったことを踏まえても、彼はその期待に完全に応えてみせた。

6月25日から負傷する9月2日までの間、アンソニーはWAR2.8(ファングラフス版)でMLBの野手の中で6位タイとなり、249打席で打率.329、出塁率.422、長打率.512、長打24本(本塁打7本)、31四球を記録した。その途中に8年1億3000万ドル(約195億円)で契約を延長し、9年目の球団オプションが行使されれば2034年までボストンに残る可能性がある。

この活躍で、今季はレッドソックスで71試合しか出場しなかったが、それでもア・リーグ新人王投票で3位に入った。

彼が際立ったのは成績だけではない。限られた出場機会の中で見せたスキルセットは、レッドソックスファンに大きな期待を抱かせるものだった。以下では、アンソニーがすでにスターのように見える3つの理由と、2026年に向けて改善すべき点を紹介していく。

打席での落ち着き

悪い球を見逃すのは言うほど簡単ではない。特にメジャーの投球を初めて見る若い打者にとってはなおさらだ。しかしアンソニーはデビュー直後から成熟したアプローチを見せ、ゾーン外の球に対するスイング率(=チェイス率)は20%で、2025年にゾーン外の球を500球以上見た約300人の打者の中で18番目に良い数字だった。さらにストライクゾーンの外側にボール1個分だけ外れたエリアへの投球に対して、スイング率30%未満を記録した。

2025年 ゾーン外、境界線への投球に対するスイング率(最低250球)

1位 リアム・ヒックス:27.3%
2位 ジョナサン・インディア:27.5%
3位 トレント・グリシャム:27.9%
4位 フアン・ソト:28.1%
5位 マイク・トラウト:29.3%
6位 リース・ホスキンス:29.5%
7位 ロマン・アンソニー:29.7%

打球の質

アンソニーがバットを振り抜いた時の破壊力も特筆すべき点だ。スイングは速く、かつ効率的で、平均バットスピードは75.1マイル(約121キロ)。さらにスクエア率は26.1%。つまり、彼のスイングの4回に1回以上が、その球速とバットスピードで理論上出せる最大打球速度の80%以上を記録していたということだ。

このレベルのバットスピードとスクエア率を両立できる打者は多くない。2025年に200スイング以上かつ平均バットスピード75マイル(約121km/h)以上の打者の中で、アンソニーよりスクエア率が高かったのは、ブラディミール・ゲレーロJr.(29.3%)とヨーダン・アルバレス(27.5%)の2人だけだった。

このスイングなら、アンソニーが打球を強烈に弾き返すのも当然だ。平均打球速度は94.1マイル(約151キロ)で、ハードヒット率は60.1%。カイル・シュワーバー、大谷翔平、アーロン・ジャッジですら、彼以上のハードコンタクト率(95マイル=153キロ以上の打球)を記録した者はいなかった。

2025年 ハードヒット率ランキング(最低100打球)

1位 ロマン・アンソニー:60.3%
2位 カイル・シュワーバー:59.6%
3位 大谷翔平:58.7%
4位 アーロン・ジャッジ:58.2%
5位 ロミー・ゴンザレス:57.3%

守備力

アンソニーはバットで注目を集めたが、守備でも優れていた。守備指標ではOAA(アウト獲得貢献)が+6、FRV(フィールドランバリュー)が+4を記録した。ただしこれらは累積値であり、フルシーズン出ていない選手にとっては全体像の一部でしかない。

彼の守備範囲をより正確に把握するためには「成功率増加量(success rate added)」が参考になる。これは、同じ機会を与えられた平均的な外野手と比べて、実際にどれだけアウトにできたかを示す指標だ。75回以上の守備機会を持つ外野手の中で、アンソニーより高い数値を記録したのは1人だけだった。

成功率増加量(最低75機会)ランキング

1位 デンゼル・クラーク:7%
2位タイ ロマン・アンソニー:6%
2位タイ セダン・ラファエラ:6%
2位タイ ブライス・ティオドシオ:6%

改善点は?

アンソニーが次に取り組むべきことは、慎重さと積極性のバランスを取ることだ。

慎重なのは悪いことではないが、彼は甘い球を多く見逃していた。ストライクゾーン中央の球へのスイング率は59.4%でMLB屈指の低さ。また、ど真ん中の球へのスイング率は51.6%で、75球以上見た全打者の中で最も低かった。

加えて、アンソニーはボールをもっと打ち上げることで、さらにレベルアップできる可能性がある。彼のエアボール率(打球角度が正の打球割合)は49.4%で、2025年のMLB平均より6ポイント低かったため、パワーを発揮する機会が限定されていた。

それでも彼がバレル率15.5%を記録したという事実は、打球を飛ばす才能の大きさを物語る。事実、MLBでエアボール率50%未満かつバレル率13%以上を記録したのは(最低100打球)、アンソニー1人だけだった。

レッドソックスの将来を担う存在にふさわしい、圧巻の序章だった。いくつかの調整を加えれば、ロマンのボストンでの時代はさらに華やかなものになるだろう。