カブスの鈴木誠也(32)が今季、打撃だけでなく右翼守備でも大きく価値を高めている。守備範囲、捕球、送球を総合的に見ると、メジャー5年目で自己最高の数字が並う。
(数値は8月20日時点)
象徴的な数値が、Fielding Run Value(フィールディング・ラン・バリュー=守備によって生み出した価値を得点換算した指標)だ。今季は+7で、昨季の-1から8点分改善した。
「+7」は単純に7失点を防いだという意味ではなく、平均的な野手と比較して、守備によって約7得点分のプラスの価値を生み出したことを意味する。打球の難易度を考慮した守備範囲や、外野からの送球で走者の進塁を防いだ効果などを得点価値に置き換えた数字でプラスが大きいほど守備でチームに貢献したことになる。
主な守備データを前年(2025年)と比較すると変化が分かりやすい。
・Fielding Run Value:-1 → +7
・Range:0 → +4
・Arm Value:-1 → +3
・OAA:0 → +4
・捕球率:89% → 90%
・期待捕球率との差:0 → +2ポイント
(各種の守備指標の説明は以下)
Range(レンジ=守備範囲によって生み出した得点価値)は昨季の0から+4へ上昇した。平均的な外野手なら安打になっていた可能性のある打球をアウトに変えることで守備範囲から約4得点分のプラスを生み出したことを意味する。
Arm Value(アーム・バリュー=送球によって走者の進塁を防いだ得点価値)も-1から+3へ改善した。外野からの送球で走者に余分な塁を与えない、あるいは走者に進塁を断念させる働きが数字に反映される。今季の鈴木は95パーセンタイル(MLB上位5%)に位置している。
守備範囲をより直接的に表すOuts Above Average(アウト・アバブ・アベレージ、OAA=平均的な野手と比べて増やしたアウト数)は+4で、自己最高。2022年-3、23年+1、24年-3、25年0と推移してきたが、今季は平均的な外野手より約4個多くアウトを生み出した計算だ。
特に改善が目立つ指標が、前方へ落ちる打球への対応だ。方向別OAAでは昨季-2だった前方への打球が今季は+4。浅いフライやライナーに対して前へ出てアウトにする能力が大きく向上している。
その背景にはJump(ジャンプ=打球が出てから最初の3秒間の動きを評価する指標)の向上がある。今季の鈴木は、この3秒間で平均的な外野手より2.2フィート(約0.67メートル)多く移動できている。昨季の+1.7フィート(約0.52メートル)からさらに伸ばした。
中でも顕著な数値がReaction(リアクション=打球が出てから最初の1.5秒間の反応)だ。昨季は平均より+0.7フィート(約0.21メートル)だったが、今季は+1.8フィート(約0.55メートル)まで向上した。簡単に言えば、打球がバットから離れた直後の判断と「最初の一歩」が速く、その約0.55メートルの差が、これまで届かなかった打球をアウトにする可能性を高めている。
一方、Burst(バースト=続く1.5秒間の加速)は+0.8フィート(約0.24メートル)、Route(ルート=打球までどれだけ効率的な走路を取ったか)は-0.5フィート(約0.15メートル)。ルート取りが大幅に改善したというより、打球への素早い反応とスタートが守備範囲の拡大につながっていることが数字から読み取れる。
Catch Probability(キャッチ・プロバビリティ=打球の滞空時間や外野手の移動距離などから算出する捕球確率)でも、今季の期待捕球率88%に対して実際の捕球率は90%。平均的な外野手に期待される数字を2ポイント上回っている。
昨季は外野で計415イニングを守り、右翼では282イニングだったが、今季は右翼だけで732イニングを守っている。守備機会を大幅に増やしながら、守備範囲と送球の双方でプラスの価値を生み出している鈴木。特に打球直後の反応の速さが、今季の守備力向上を支える大きな要因となっている。
こうした守備力の向上は、ゴールドグラブ賞争いにもつながる数字だ。実際に同賞の選考に使用されるSABR Defensive Index(SDI=複数の守備指標を組み合わせ、平均的な同ポジションの選手との差を得点換算した指標)では、8月9日終了時点で6.8。ナ・リーグ右翼手ではコービン・キャロル(ダイヤモンドバックス)の10.9に次ぐ2位につけている。SDIはゴールドグラブ賞選考のおよそ25%を占めており、今季の鈴木はデータ上、ゴールドグラブ賞候補の守備成績を残している。
