大谷翔平(30)がメジャーのマウンドに帰ってくる。当初、オールスター後とされていた投手復帰は大幅に早められた。一体なぜ、急な方針転換がなされたのか。
2日前までは、17日(日本時間18日)に4度目のライブBPに臨むものと認識していた。しかし、この日一気に水面下で進められていた“復帰前倒しプラン”が明るみに出た。なぜ7月後半に予定されていたメジャーマウンドが、1カ月以上も早まったのか。
最大の理由は、大谷が体力回復の時間を確保するためだ。
二刀流としてDHで毎日の試合に出場しながら、投手としてのリハビリを行うのは、野球の歴史上、大谷だけ。その本人からの提案だったのではないだろうか。
大谷がライブBPを重ねるよりも公式戦で投げて、投手としての強化をはかりたい、という希望によるものだろう。背景には唯一無二の二刀流ならではの体調管理、体力回復という重要ミッションがあるからだ。
ロバーツ監督は、復帰登板はパドレス戦での先発で「おそらく1イニング」と明かした。公式戦での緊張感、アドレナリンによる強度と負荷が練習よりも格段に増すことを考慮しての判断だ。1番打者からタティス、アラエス、マチャド、メリル(脳震盪IL入り)らのスターに加え、今季好調のシーツらが並ぶ打線。1イニングとはいえ、ヒットやフォアボールが絡んだ場合、イニングを完了せずとも球数の上限は30球以下ではないだろうか。
いわばメジャーの公式戦で投手リハビリの延長をする。その最大のメリットは回復時間の確保。ライブBPで投げた数時間後のナイターでDHとして出場を続けることは体力的に苦しい、と大谷が感じたのでは、と推測する。理由は拘束時間の長さだ。
ライブBPに登板する場合、両チームの公式練習時間よりも前の時間帯に割り当てられている「アーリーワーク(早出練習)」の時間を使わなければいけない。メジャーの場合、アーリーワークの時間割が決められている。通常はビジターチームが先、その後にホームチーム、さらにその後はホームチームの全体練習、ビジターチームの全体練習というスケジュールだ。
例えば6月10日、サンディエゴのペトコパークで投げた時は午後6時40分の試合開始の約4時間半前、午後2時過ぎにスタートした。初のライブBPの5月25日、ニューヨークでのメッツ戦前には午後7時開始の試合で午後2時半スタート。逆算すれば、球場入りとウオーミングアップはその1〜2時間前から開始。スタジアムまでの移動時間、起床や食事の時間はDH出場だけの準備よりも早くから行動しなければいけない。つまり、睡眠時間を含めたリカバリーの時間が削られる、というわけだ。
それならば、試合で登板すれば早出時間に球場入りする必要がない。先発投手の準備ならばDHだけの出場より、ルーティーンは多くなるが、ライブBPで投げるよりも多くの回復時間を自宅や遠征先のホテルで確保できる。レギュラーシーズンは残り90試合。ワールドシリーズまでのプレーオフも含めれば約100試合を戦う。長丁場で二刀流をプレーオフの最終盤まで続けるためには、日々の疲労のマネジメントは重要だ。1週間に1度、前半戦であと4度のライブBPを“回避”できると計算すれば、その時間を日々の回復にあてられる。
これまでは球団と執刀医のエルトラッシュ医師らのメディカルスタッフが主導し、慎重に進めてきたリハビリプラン。しかし、過去に二刀流でのリハビリを経験し、当事者の大谷にしか分からないこと、感じられないことがある。もちろん大前提は、ここまでのリハビリが順調だということ。大谷の“自己主張”はームへの貢献を最大化するため。その思いを球団とスタッフが尊重し、納得した結果が1カ月早いサプライズ復帰となったのではないだろうか。
