ドジャースの大谷翔平(30)が先発ピッチャーとして、マウンドに帰ってきた。リハビリの延長としての公式戦登板。6月16日のパドレス戦で1イニング、28球。最速は100.3マイル(161.3キロ)をマークした。1年前、自らに立てた誓いの言葉通りの投手像でカムバックを果たした。
二刀流の大谷翔平は、「投手・大谷」との“約束”していた。パワーピッチャーとして戻る。もう一度、楽しく投げるため、譲れないことだった。その誓いは、約1年前の5月終わり。当時のコメントから、読み解く。
「ケガをしてもしなくても、効率よく投げることがケガの予防にもつながる。ただこればっかりは出力が上がれば(ケガは)しょうがない部分ではある。誰しもがピッチャーやっていれば、ある程度パワーピッチャーだと(ケガは)しょうがない部分ではある」
リハビリ期間のキャッチボールでは、右腕のバックスイングからトップの位置をどのように作るかなど負担が少なく、そしてパワーをキープできるフォームを探し続けた。おそらく、メジャー復帰した今も投球フォームは試行錯誤をしている。
右肘を含む負傷の再発は避けたい。しかし、重要なのはケガをしない投げ方の習得を目指しながら、もう一度、力勝負を挑める投手になること。2度目の手術を決断し、メジャーのマウンドに戻るまで16カ月間をリハビリに使う理由だった。
「そこは前回(2018年の1度目の手術)から今回もそうでしたけど、ある程度割り切ってというか。あとはパフォーマンスを下げない。そこだけは注意して、自分自身であきらめない、そのまま(負傷前と同じ)の感じで行きたい」
100マイル(161キロ)を投げる。ストライクゾーンで勝負する。自分が望む投球スタイルを貫く。決心はしていた。
「ケガを恐れてパフォーマンスを落とすということはない。そのために手術を受けた。手術前にも言いましたけど、93〜94マイル(150〜151キロ)くらいだったら、ある程度(靱帯が)切れていても痛みなく投げられた感覚はあった。そこで満足することなく『どれだけうまくなれるか』なので手術を受けた」
今季のキャンプ中、2月の終わりにはそう語り、右肘に2度目のメスを入れた理由を明かしていた。663日ぶりのピッチングは、まさに一球入魂。今は、先発投手として100球を投げていくため、あくまでリハビリの途中だ。しかし、大谷がいうようにケガを恐れることなく、1イニング(30球上限)に定められたマウンドでは、まるでクローザーのように全力投球。打者を抑えることに全力だった。
「また次も投げられそうなことが、一歩前進かなと思います」
パワーピッチャーとして投げ続ける。それが二刀流、大谷翔平の希望、決断、覚悟、そして自分自身との“約束”だ。世界一の投手になり、二刀流を続け、世界一の野球選手になる。それは夢ではなく、現実的な目標にして毎日を生きている。
