恐怖や不安が大きかったはずだ。カブスの今永昇太(31)はアリゾナでのオープン戦期間中、ネット記事でドジャースの予想オーダーを目にした。
「(選手の名前が)並んでましたけど『大丈夫?』みたいな。僕は悲観的にネガティブから、マイナス(な考え)からどんどん入っていくタイプなので、それを腹をくくる瞬間があるんですけども、今現在としては、やっぱこう、うん、やっぱこう強敵に立ち向かっていくっていう時の前の僕はやはり不安の方がやっぱ大きいですね」
昨季のワールドシリーズ王者は、スーパースターが並ぶ打線だ。大谷翔平(30)に加え、ベッツやフリーマンらMVP経験者が上位を打つ。3月18日の開幕戦では、ベッツは体調不良、フリーマンは試合直前の負傷でスタメンを外れたが、どの投手にも手強い打線であることは間違いない。だからこそ、今永のノーヒット投球は、自信につながるものだったはずだ。
カブスとドジャースの2球団のみ日本では開幕戦を行ったが、同時期のアリゾナ州とフロリダ州で春季キャンプを行っている28球団はまだオープン戦の時期。そのため、今永も球数は69球、4イニングでの降板だった。まだ球数の制限下での先発だったが、内容と結果は今季の活躍へ、大いに期待を抱かせる。
「いつもは失点を計算しながら(マウンドに)上がるんですけど、きょうの登板に関しては無失点をかなりフォーカス(集中)していたので、球数を使いながら何とか無失点で抑えられたらいいなと思って投げていました」
無安打無失点と引き換えに、慎重に球数を使った“副作用”としてメジャーキャリアで初めて1試合で4つの四球を与えた。甘いコースに投げないように神経を使った。シーズン同様、100球前後の球数であれば、5〜6イニングを投げられた計算だ。
メジャー1年目を過ごした昨季は15勝3敗、防御率2.91の好成績を残した。だが、メジャーの投手たちを見て、力で勝負したい気持ちも湧いた。オフのトレーニングの成果で筋力や瞬発力もアップした。測定したジャンプ力や走るスピードも上がった。だが、これが落とし穴になる可能性があった。ただ、己を自覚することで落とし穴を事前に回避。開幕戦の好投につなげた。
「パワーピッチをある程度やりたいなと思った。じゃあそのパワーピッチは何かって言ったら、95マイル(153キロ)投げるとか。(球速は)遅いより速いほうがいいので、ちょっとそっちに自分の考え方がシフトしてしまいそうになった瞬間があった。でもやっぱりそれじゃあ、僕の良さではない」
大役の開幕投手で強く意識すべきことは、スピードボールで勝負するのではなく、直球とチェンジアップのコンビネーションで丁寧に配球することだった。今永の武器と特徴は、回転数の多い直球。オフのトレーニングの成果として劇的に球速が向上したわけではないが、この直球の「質」が向上した。
「きょうの直球に関してはものすごく自分の中で手応えがありましたし、これくらいの(質の)真っすぐを最低ラインに保っていればいつでも自信もって投げられるということは勉強になった。アメリカの環境は(地域によって)湿気があったり、乾燥していたり、球が飛んだり、いろんな環境がありますけど、いつでもきょうのような最低ラインの真っすぐは投げたいと思います」
3月18日の直球のスピンレート(1分あたりの回転数)は、昨季平均の2442回転を上回る2534回転。直球の平均急速は、92.6マイル(149キロ)で昨季平均 91.7マイル(147.6キロ)を上回った。まだ今季のデータはわずか1試合だが、今永の「手応え」が確かなものなら、昨年以上の成績を残すことに可能性と希望がある。2020年以来、4シーズンに渡りプレーオフ進出から遠ざかるカブス。今永がエースとしてのシーズンを投げ抜けば、寒くなる10月のシカゴで熱いプレーオフの戦いを経験するはずだ。