ファンやチームメートを瞬く間に魅了したSHOTAの唯一無二の個性

March 10th, 2025

カブスが昨年のスプリングキャンプ中に行った、ある朝の投手ミーティング。話題に挙がったのは「審判との話し方」についてだった。これまでの試合で実際にあったやりとりや、これからの試合で起こりうる状況、そしてそれにどう対応すべきかを議論していた。

カイル・ヘンドリックスは、今永昇太はこの話をきちんと理解しているのか?とふと気になった。

「彼に問いかけると『アイ アム ア ジェントルマン(私は紳士です)』って即答したんだ」とヘンドリックスは振り返る。「みんなで爆笑さ。笑いが止まらなかった。彼はしっかり理解していたよ」

マウンドでの活躍により、ルーキーイヤーの2024年にナショナル・リーグのオールスターチームに選出された今永だが、カブスのファンやチームメートを瞬時に惹きつけるコミュニケーション能力も彼について語る上では欠かせない。日本からアメリカ、そしてMLBへの転換は、決して楽な挑戦ではない。だが、今永はそれをいとも簡単にこなしているように見せた。

その背景には、実績がある。30歳のベテラン投手として、2023年のワールド・ベースボール・クラシック決勝で日本を勝利に導き、そのシーズンNPB(日本野球機構)では奪三振王に輝いた。横浜DeNAベイスターズのエースとして鍛え上げられた彼にとって、シカゴでの挑戦に臨む準備は万全だった。

「このレベルでプレーすることは、選手としてだけでなく、人として感情的にも自分自身をさらけ出すことになる」とカブスの二塁手ニコ・ホーナーは語る。

「しかし、彼はどんな試練を与えられても対応できている」

そんな今永が最初に頭角を現したのは、2024年1月のファンイベント「カブス・コンベンション」だった。

入団会見で今永は、本拠地リグレー・フィールドでの勝利の際に流れる応援歌「Go Cubs, Go」の一節を織り交ぜて挨拶した。4年総額5300万ドルの契約を手にしたばかりの投手は、瞬く間にカブスファンの心を魅了した。「彼の人柄を象徴する完璧な例だと思ったよ」とカブスの一塁手マイケル・ブッシュは語る。

「彼はこのチームを大切に思っていて、野球を愛している。何の準備もなく会見に臨んだのではなく、色々と調べて勉強した上で、あの壇上に上がったんだ」

その会見以降も、今永はファンとの絆を深め続けている。「ブルペンに向かう時、レフトスタンドの観客席からは、いつも応援してくれる声が聞こえるんです」と今永は、通訳のエドウィン・スタンベリーを介して語る。「前回の登板が良かったか悪かったかは問題じゃないんですよね。毎回毎回、結果に関係なくずっと応援してくれる。それが本当に驚きでした」

4月のまだ肌寒い日の試合前。今永は観客席の中に、「S-H-O-T-A-!」という文字を1人1文字ずつ裸の上半身にペイントして応援している6人組を見つけた。左腕は彼らの姿に感動し、地元のTシャツショップ「Obvious Shirts」と提携。その文字をそれぞれデザインしたTシャツを作り、リグレー・フィールドで直接プレゼントした。

カブス左腕が選んだ登場曲は、「Chelsea Dagger」だった。エネルギッシュなメロディーをファンが口ずさんでくれると分かっていたからだ。また、7月のオールスター戦では「Be Like Mike」(マイケル・ジョーダンが起用された有名なゲータレードのCM曲)をマウンドへ向かう際に使用。地元の英雄マイケル・ジョーダンへの敬意を込めるとともに、今永は店でコーヒーを注文する際、店員に伝わりやすいように「Mike」と名乗っていたからだ。彼のロッカーには「MikeImanaga II」と書かれたネームプレートが付けられている。

今永はチームメートたちにも愛されている。昨シーズン序盤、空港からの移動のバスの中で質疑応答が余興として行われた。今永の番になり、マイクを手に立ちチームメートの質問を受けていると、彼は突然、一塁手マイケル・ブッシュの登場曲であるカントリーソングを歌い始めた。「あの瞬間『彼は本当に自然体なんだな』って思ったんだ」とカブス外野手のピート・クルーアームストロングは言う。「彼は面白くてカリスマ性があって、飾らないんだよ」

ベンチで控えている間も、今永はユーモアにあふれている。カブスの投手ジェームソン・タイヨンは、相手チームの打者の名前がアナウンスされると、ベンチから「スティーンクス!(ダメだな!)」と冗談でよくヤジを飛ばす。「ショータは僕と一緒になって『スティーンクス!』って言うようになったんだ」とタイヨンは笑いながら語る。「ショータは叫んだ後で、『なんでこの選手はスティンクス(ダメ)なんだ?』って聞いてくるんだ。だから僕は、『いやいや、彼はすごいよ。すごくいい選手なんだ』って答えるんだけど、そんなふざけたやりとりも楽しいみたいだ。みんなと一緒に冗談を言い合いたいんだよね」

その反面、今永は練習に対する厳しさ、知性、好奇心を持っており、それらは彼の練習する姿に垣間見ることができる。タイヨンによれば、今永は日本での成功を築き上げたルーティンをかたくなに守り続けるのではなく、カブスのスタッフや選手たちの意見を積極的に取り入れ、柔軟に適応しているという。

その姿勢が功を奏し、今永は最初の22先発登板で9勝2敗、防御率3.16、128回1/3を投げて、131奪三振、わずか19与四球という好成績を残した。また、2024年4月には、ナショナル・リーグ月間最優秀新人賞を受賞。デビューから9試合の先発で防御率0.84は、史上最高の記録となった。

「もちろん、チームに溶け込もうとは思っていました」と今永は語る。「でも、みんなが僕を受け入れようとしてくれたことの方が、自分が溶け込みたいという気持ちよりもずっと大きかったです。みんなの気持ちに本当に助けられました」

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