グレイのトレードがレッドソックスとカージナルス双方にとって理にかなう訳

November 25th, 2025

今オフ、レッドソックスが掲げていた目標の一つは、ポストシーズンの先発ローテでギャレット・クローシェに続く投手を加えることだった。その狙いを、カージナルスからベテラン右腕ソニー・グレイをトレードで獲得して達成した。

グレイはオールスター3回選出で2023年のア・リーグのサイ・ヤング賞投票で2位。過去2年連続で200三振を超えており、セントルイスからボストンへの移籍のため、トレード拒否権の放棄に同意した。

36歳のグレイは、3年契約の最終年となる2026年の年俸が3500万ドル(約54億円)に設定されており、2027年には3000万ドル(約47億円)の球団オプション(球団の契約延長権)が付いていた。トレード成立後、レッドソックスとグレイは2026年の年俸を3100万ドル(約48億円)へ調整し、オプションのバイアウト(契約延長の破棄)は500万ドル(約8億円)から1000万ドル(約16億円)へ引き上げることで合意。球団がオプション(契約延長権)を行使した場合でも、グレイ側にはオプトアウト(契約破棄)できる条項が付く。

<トレード詳細>
レッドソックス獲得:ソニー・グレイ(右投手)、金銭
カージナルス獲得:ブランドン・クラーク(左投手、レッドソックス有望株5位)、リチャード・フィッツ(右投手)、後日、指名選手または金銭

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MLB.comの識者による、この移籍の総合的な見立て。

レッドソックスにとっての妥当性(レッドソックス番記者 イアン・ブラウン)

2021年以来のポストシーズン進出を果たし、ワイルドカードシリーズでヤンキースに敗れたレッドソックスは、26年にさらなる前進を狙っている。グレイは先発ローテーションを厚くし、その実現を後押しできる。36歳のグレイは今季カージナルスで32先発、180 回2/3、14勝8敗、防御率4.28、201三振。K/BB 5.29はナ・リーグ首位だった。

先発投手を得るために、外野手の過剰戦力から放出が必要だという噂が続いていたが、今回のトレードでボストンはジャレン・デュラン、ウィリー・アブレイユらを手元に残した。とはいえ、今オフのどこかで外野手を動かすかどうかは不透明だ。編成本部長クレイグ・ブレスローとアレックス・コーラ監督は、ともにDH枠を活用して選手のやり繰りと打席機会の確保ができると語っている。

カージナルスにとっての妥当性(カージナルス番 ジョン・デントン)

このトレードは、2025シーズン後に退任したジョン・モゼリアクの後任として就任した新編成本部長ハイム・ブルームが就任時に示唆していた、本格的な再建路線を示している。22年のナ・リーグ・ワイルドカードシリーズ敗退以降、カージナルスは3年連続でポストシーズン進出を逃しており、今オフはベテランの三塁手ノーラン・アレナドと一塁手ウィルソン・コントレラスの放出も視野に入れている。

フロントのトップに就く前の2年間、ブルーム編成本部長はアドバイザーを務め、就任後は評価担当者やスカウト、育成の専門家を増員して選手育成部門の刷新に着手した。高額年俸のベテラン戦力と球団の「次の勝負期」で期待する若く将来有望な選手を入れ替えることで、伝統ある球団を立て直す考えだという。22歳のブランドン・クラークは、その狙いに合致する。左腕はまだ完成度こそ途上だが、将来的に先発ローテーション上位を担える素質がある。

補強の影響(上級全国レポーター 、マーク・ファインサンド記者)

レッドソックスはこの補強でクローシェの後ろに置ける先発をもう1人加えた。契約延長権の扱い次第では、最大でさらに2年、球団が保有できる可能性がある。今回のグレイは、昨オフのクローシェのような「若くてコントロール可能な先発」ではない。だからこそ、ボストンは今オフもマッケンジー・ゴア、ジョー・ライアン、サンディ・アルカンタラらの動向を注視し続けるだろう。もっとも、その投手たちが放出されると決まっているわけではない。

フリーエージェント市場全体への影響は大きくない。レッドソックスは上位先発4〜5人の争奪戦に本気で参戦する想定ではなかったからだ。今回のトレードでボストンは2026年の年俸総額に3100万ドル(約48億0500万円)を上乗せしたが、それでもアレックス・ブレグマンの再契約、あるいはカイル・シュワーバーやピート・アロンソらの大砲の獲得を妨げるほどではない。

深掘り(アナリスト、マイク・ペトリエロ氏)

「先発投手をもう1人加えるなら、ローテの先頭で投げられて、ポストシーズンで先発できる投手にすべきだ」

ブレスロー編成本部長はこう語っていた。

グレイがその条件を満たすかどうか、つまりクローシェと並べて先頭に置けるかどうかは、投手評価の基準によって見方が分かれる。見かけ上は、36歳で、ここ3年の防御率は2.79→3.84→4.28と悪化しており、黄色信号に見えるかもしれない。だが防御率は唯一の、まして最良の評価指標ではない。各種の先進指標で見ると昨季のグレイは総じて良好で、指標次第では「実力値は3.30〜3.70点台の投手」と読める(特にBaseball Prospectusの評価は高く、先発価値ランキングで11位だった)。

理由は明快だ。グレイは2025年に与四球率を自己最良の5%まで下げた。これはレッズ時代(2019〜21年)の半分近い水準で、平均以上の奪三振率と組み合わさり、K/BB(三振と四球の割合、4以上で優秀とされる)は5.29に到達した。これは規定投球回の先発で4位だ(上にはギャレット・クローシェ、タリク・スクーバル、ポール・スキーンズ、ジェイコブ・デグロムが並ぶ)。

加えて、移籍先との相性も良さそうだ。グレイのフォーシームは、はっきり言って「悪いボール」になっており、被打率.370、被長打率.585。クアーズフィールドを除けば先発では最弱クラスだった。一方、レッドソックスは近年「質の悪い速球を惰性で投げ続けない」方針で知られる球団だ。レッドソックスなら球種配分を見直し、弱点を隠す術を持っている。

データサイト・ファングラフスの2026年予測では勝利貢献の総合指標WAR4.0。近年の実績(5.4、3.8、3.6)から見ても現実的だ。もし、その通りなら、レッドソックスではナンバー2でありつつ、リーグ全体でもトップ20クラスの先発になる。ブレスローの「ポストシーズンで先発できる投手を」という要件を十分に満たす補強だと言える。しかも報道によれば、ボストンは年俸の一部についてセントルイスから2000万ドル(約31億円)の資金注入を取り付けた。必要な打者補強に回せる余力も残る。見事な仕事だが、見返りは安くない。フィッツに加えて、今季マイナーで打者の35%を三振に仕留めた剛腕左腕プロスペクト、ブランドン・クラークを放出した。今、勝つための年俸を肩代わりして、その見返りにより高位の才能を受け取る。再建球団であるセントルイスの教科書通りの動きでもある。

注目データ(MLB.comリサーチ班)

201三振:グレイの今季の三振数。ギャレット・クローシェは255三振でMLB最多を記録し、今季200三振以上の投手を複数抱える球団はレッドソックスとフィリーズの2球団だけ。フィリーズはヘスス・ルサルドとクリストファー・サンチェス。さらに、過去2年連続で200三振以上を記録した投手は5人で、グレイとクローシェのほか、タリク・スクーバル、ディラン・シース、フレディ・ペラルタ。