チームの上層部としては当然だ。
ウインターミーティングでドジャースのブランドン・ゴームズGMとデーブ・ロバーツ監督は大谷翔平(31)のワールドベースボールクラシックでの投手起用について、慎重な姿勢を強調した。言葉こそ、丁寧に選んでいるが、ハッキリ言って“反対”している。
「個人的には、投げてほしくないという思いもありますが、最終的にどうするかは翔平の判断になります。彼は自分の身体の状態をよく理解していますし、おそらくは打者に専念する方向性が強いとは思います。ただ、まだ(大谷と出場について)直接、話していません」
ロバーツ監督は、ウインターミーティング恒例の全球団の監督会見に登場。大谷の大会参加について“投手出場反対”の意向を示した。もちろん、2026年はワールドシリーズ3連覇を目指す長いシーズンを見据え、大谷の健康面を心配するからこそ。ドジャースの指揮官として選手の負傷リスクを減らしたい、と考えるのは当然だろう。それは、ゴームズGMも同じだ。
「投手としての起用はもちろん難しく、慎重にならざるを得ない場面もある。しかし、話し合いを重ねながら最適な方法を見つけていくつもりだ」
ここからは私の意見を記す。
これまでの大谷取材の経験から、率直に感じることがある。
大谷が「はい、分かりました、投手はしません。DHだけに専念します」とスンナリ受け入れるとは思えない。
最高のパフォーマンスで日本の世界一連覇に貢献したい。
そたのために打ちたい、投げたい。それが、大谷翔平という野球選手だ。
心技体が充実の時期に差しかかり、野球選手としてのピークを迎えることを大谷自身は理解している。世界大会で最高レベルの勝負を望み、その場に立てるチャンスは、残りの現役生活でそう多くない。次回大会は4年後だ。そのときに健康に参加できる保証はない。全力を出せる体調ならば、すべて懸ける。これまで、大谷はそのように勝負してきたはずだ。
日本代表としての一体感、唯一無二の二刀流選手としての自負、世界の野球界へのメッセージ。どれもが二刀流として出場する理由になる。
「第1回大会から先輩たちが素晴らしいゲームをしてもらって、実際に僕らがみてきて『ここでやりたいな』という気持ちにさせてもらったのが一番大きい。今回、優勝させてもらって、そういう子たちがまた増えてきてくれたら、本当に素晴らしいことだと思います」
前回大会の優勝記者会見でそう語った。ここでやりたい、ああなりたい、二刀流をやりたい。1人でも多くの野球をする少年少女たちにそんな夢を抱いてほしい。大谷はメジャー挑戦する直前、二刀流は「もう自分だけのものではない」と語った。ファンの応援、支え、日本ハムの育成方針も合わせて、みんなで実現できた、という趣旨だ。だからこそ、自分の後継者が出てきてほしいという願いも心のどこかにはるはずだ。侍ジャパンに二刀流として参加し、優勝を目指す意義は大谷にとって、自分を超えたかけがえのないことだ。
ロバーツ監督も、選手の思いを理解している。だからこそ、一見“反対”の意思を示しながらも、同時に寄り添う姿勢も示している。
「彼らが母国を代表してプレーすることの重みを軽く扱うつもりは全くありません。球団としても同じ考えです。だからこそ、個々の選手が大会でどんな役割を担うのか、その負担がどれくらいになるのかを話し合う必要があります。そこでリスクを整理し、それでも選手が出場を望むのかどうかを確認します。その段階に至れば、最終的に何が起きるかは受け止めるしかありません」
しっかりと話し合い、最終的には、選手の意向を尊重する、という意味だ。大谷は己の100%を尽くして、チームに貢献したい、と強く思っているのではないだろうか。その場合、「打者のみ」を甘んじて受け入れる性格だとは、私は思えない。
ケガを恐れ、全力をセーブするようなプレーを大谷はしない。少なくとも、過去にはしていない。もちろん、ケガはしない方がいい。ただ、私がここで強調したいのは、選手が一番大切するのはケガをしないこと、ではなく、結果を出すこと、つまり勝つことだ。投手出場の可否について結論は、まだ先になるだろう。ただ、大谷は二刀流で出場する。私は、そう思わずにはいられない。
