移籍市場が動き出すオフシーズン、毎年話題になる「ノンテンダーFA」。多くの選手にとってキャリアを左右する重要な分岐点となる制度だが、この記事では、その仕組みと背景を詳しく解説する。
◆ノンテンダーとは
「ノンテンダーFA」は、球団が保有権を持つメジャー40人枠の選手に対して、来季の契約を提示(テンダー=tender)しないと決めた結果、その選手が即日FAになること。球団が選手に対して「契約しない」と通告する行為を「ノンテンダー」という。実質的には放出してFAにする手続き。
日本プロ野球の「戦力外通告」は、「戦力」として構想外を意味し、MLBのノンテンダーは「年俸など球団の予算事情」が絡む。
「tender」の辞書での意味は、動詞なら「提示する」、名詞なら「提示、申し出」。つまり、「non-tender」は「契約提示をしない」という意味だ。
主な対象は、年俸調停権(サラリーアービトレーション)のある選手(メジャー在籍が3年以上6年未満の選手※在籍2年でも例外あり)。
調停資格のある選手は、球団が期限までに「来季も契約を提示する」とテンダー(提示)すれば、球団の支配下に残ったまま年俸交渉や調停(球団と選手間で金額に合意できなかった際、第三者との争議解決)に進む。逆にテンダーしなければ(ノンテンダー)、FA市場に出る。
今オフは11月21日がノンテンダー期限だった。
◆どんな選手がノンテンダーになるのか
球団がノンテンダーを選ぶ理由は。予想される年俸が評価や予算と見合わないと判断した場合が多い。年俸調停制度では前年度実績を軸に年俸が上がりやすく、控え選手や負傷明けの選手、成績が落ちた選手が該当することが多い。チームは予想年俸分を補強費用に回したい事情がある。
◆DFAとの違いは
DFA(メジャー40人枠を外す措置、日本では事実上の戦力外、と表現される)やリリース(自由契約)と違う点は、ノンテンダーは「契約提示の期限で球団が権利を手放す制度」であり、調停資格や来季の契約を更新しないことが前提。対象は主に年俸調停資格のあるメジャー40人枠の選手。
DFAはシーズン中でも起こり得るメジャー40人枠を整理する手続き。マイナー契約に切り替える手順も含む。FAとなり、複数年契約を結んだ選手が契約期間中に放出されることも含む。
ノンテンダーは期限日に一括でFAとなる。
◆ノンテンダーされた選手はどうなる
立場としては、完全なFAなので全球団と交渉可能。元の球団と再契約するのもルール上は自由。実際にノンテンダー→FA市場の反応を見て元球団と年俸を下げて再契約というケースもある。
つまり、ノンテンダーFAは「球団が年俸調停権のある選手に契約を提示せず、即FAになった選手」。オフに球団がメジャー40人枠を整理し、翌シーズンの年俸が球団の許容よりも高額になりそうな選手を解雇する手続きを「ノンテンダー」という。
