昨季防御率4点台だったミジオロウスキーはなぜ今、打たれないのか?

May 19th, 2026

ブルワーズのジェイコブ・ミジオロウスキー(24)が「打てない投手」として無双している。

5月は3試合、18回1/3で無失点を継続中だ。

メジャー2年目右腕が好成績を続けている理由は、単に球が速いからではない。201センチの長身から繰り出す速球の平均球速の速さ、打者に対するリリースの近さ、低い腕の角度、変化球の球速差と質、そして空振りを奪う能力が重なっている。今季は9試合(51回)を投げ、3勝2敗、防御率2.12、1イニングあたりに出した走者を示すWHIP0.90は両リーグ5位の上位だ。(成績は5月17日終了時点)

なぜ打者はミジオロウスキーを打てないのか?

5つのポイントで分析する。

【1】直球(フォーシーム)の球速

ご存知のように一番の武器は、フォーシームだ。今季のフォーシーム平均球速は99.6マイル(約160キロ)。投球全体の61.3%を占め、被打率.214、空振り率45.6%、奪三振率46.5%を記録している。5月8日のヤンキース戦では、先発投手としてスタットキャスト導入後最速となる103.6マイル(約167キロ)を計測。先発投手として計測史上最速のフォーシーム上位を独占した。

特筆すべき能力は、100マイル(約161キロ)を超える球速が序盤だけではないことだ。5月13日のパドレス戦では、七回に投じた最後の球が103.2マイル(約166キロ)のフォーシームだった。MLB.comによると、先発投手が二回以降に103マイル(約166キロ)以上を記録した球は、スタットキャスト導入後ではミジオロウスキーだけ。球数が増えても球威が落ちないため、打者は試合が進んでも速球の威力から逃れられない。

【2】打者が感じる「近さ」と「体感速度」

打ちにくい理由の2つ目は、リリースの近さと腕の角度だ。データサイトのベースボール・サバントでは、ミジオロウスキーのエクステンション(投手プレートから、どれだけ打者方向に近い位置でリリースしているかを示す指標)はメジャートップ。投手プレートから7.5フィート(約2.29メートル)の位置でボールを離しており、これは球速表示以上に速い体感速度がある。

身長201センチの長身で腕の角度は29.8度で上から投げ下ろす典型的な速球派ではなく、低めの角度から100マイル台(160キロ台)を投げ込む。アーロン・ジャッジはMLB.comで「103マイルを投げる投手はいるが、彼の球は捕手のミット近くに落としてくるように感じる」と表現した。実際の球速に加え、打者の体感速度と見え方でさらに差が出ているようだ。

【3】変化球なのに速過ぎる

3つ目は、変化球にも関わらず球速が速いことだ。今季のスライダー平均球速は94.6マイル(約152キロ)、カーブは87.2マイル(約140キロ)。他の投手なら速球として十分な球速帯が、変化球だ。スライダーは被打率.100、長打率.180、カーブも被打率.115、長打率.115。打者は100マイル台の速球に振り遅れない準備をしながら、90マイル台半ばのスライダー、80マイル台後半のカーブにも対応しなければならない。

ジャッジもまさに変化球の球速を指摘している。速球を待っていると、92マイル(約148キロ)前後のカーブを投げ込まれる。ストライクゾーンの使い方も広く、速球だけに狙い球を絞ることができない。ジャッジは「球速だけではない。エクステンション、腕の角度、変化球の感覚がある」と評価し、98マイル(約158キロ)台のスライダーについても驚きを口にしている。

下に表示したベースボール・サバントのスクリーンショット(右側)を参照していただきたい。

丸い的のような図の中に各球種の縦方向と横後方への変化が示されている。斜線はMLBの平均値。黄色のスライダーは平均より、下方向への変化が少ない。簡単に言えば、ミジオロウスキーのスライダーは速くて、横滑りするように鋭く曲がる。

打者からすれば「平均=打ちやすい球」。逆に「平均から外れる=打ちにくい球」。ミジオロウスキーの各球種の分布は、平均の斜線から外れている。

【4】強打と長打を許さない

4つ目は、打球の質を抑えている点だ。ベースボール・サバントでは、今季のxBA(被打率に近い予測指標).189、xSLG(長打率に近い予測指標).269、xwOBA(出塁と長打の価値を反映した総合的な打撃内容を示す予測指標).253。バレル率も3.0%にとどまる。つまり、三振だけで抑えているのではなく、バットに当てられても致命的な打球になりにくい。弱い打球を打たせることができている。

【5】コントロールの向上

5つ目は、制球の改善だ。昨季の四球率11.0%に対し、今季は8.4%に改善。まだ制球が荒れる場面はあるものの、以前よりストライクゾーンで勝負できている。殿堂入り左腕C.C.サバシアは「ストライクを投げているときは打てない」と評し、一方で「大事なのは投球動作を簡単にして、ストライクを投げること」と助言している。長身投手特有の長い手足を扱う難しさはあるが、ストライクゾーンに入れば打者の選択肢は一気に狭まる。

ミジオロウスキー自身も、ヤンキース戦の圧巻の立ち上がりについて「すべてのタイミングが合っていた」と振り返った。ブルワーズのクリス・フック投手コーチは「非常に熱く回るエンジン」と表現し、球速をイニングの後半まで長く保てるようになっていると説明した。

結論。ミジオロウスキーは、ただ長身で球速の速いだけの投手ではない。100マイル台の速球を、打者の近くで、低い角度から、試合の終盤まで投げ続ける。さらに90マイル台半ばのスライダーは、MLB平均から大きく外れる『あまり見たことがない軌道』。80マイル台後半のカーブで目線を外し、緩急を作る。打者は速球に遅れまいとタイミングを早めれば、変化球に崩され、変化球を意識すれば速球に差し込まれる。さらに制球力が向上し、待球作戦が通用しなくなった。進化し、成長した今のミジオロウスキーが打たれない理由だ。

右腕は、19日(日本時間20日午前8時40分開始予定)のカブス戦(シカゴ)で今季10度目の先発に臨む。