【解説】なぜ吉田正尚の実戦復帰はここまで遅れたのか

June 28th, 2025

レッドソックスのコーラ監督は、右肩の手術を受けリハビリを続けている吉田正尚(31)が近日中にマイナー傘下3Aウースターで実戦復帰することを明かした。早ければ7月1日(日本時間2日)から外野手として出場が予定されている。

オープン戦では11試合に出場し、1本塁打するなど開幕に向けて順調に調整しているかにみえた。それにもかかわらず、なぜ吉田の実戦復帰が7月までずれ込むのか。大きな理由はチーム事情、だ。

吉田のメジャー3年目はチームに翻弄されている。いわば不遇といっていい。確かにチームは勝利への確率を最大化するために選手を補強し、ロースター(出場選手登録枠)を編成する。

オープン戦時点では、DHなら試合に出場することは、問題なかった。しかし、チームは外野守備が可能になることを復帰の条件に設定した。なぜか。

2人のスター選手の存在だ。三塁手のブレグマンが、アストロズからFA加入した。そして、これまでレッドソックスの“顔”として三塁のレギュラーでプレーしてきたディバースがDHにコンバートされた。ブレグマンは3年総額1億2000万ドル(約173億5400万円)、ディバースは2024年から10年総額3億1350万ドル(453億3700万円)の超大型契約を結んでいる。つまり、この2選手はレギュラーを張り、打線の中軸を担う選手、ということだ。よって、吉田がDHで出場するスポットがない。出場するためには、外野守備ができるまで右肩を回復させなければいけない、というわけだ。

ディバースが一塁など他のポジションにまわって、吉田をDHにすればいい。そんな考えもあるかもしれないが、契約の大きさ、選手の格としてはディバースが吉田より上。球団は三塁手にこだわるディバースを説得して、DHにまわした経緯がある。チームの主砲が快適に過ごし、本来の打撃力を発揮できる環境を優先した結果、吉田は「外野手」としてのみ、出場できる選択肢がある。そんな状況だった。その中、ディバースはジャイアンツにトレード移籍。DHの枠が空いた。くしくも、ディバース移籍後のチームは3勝7敗、1試合あたり2.8得点で得点力が不足している(ブレグマンが左太ももを痛めてIL入りしている影響もある)。

さらに吉田の右肩のリハビリは順調とはいえなかった。開幕から負傷者リスト(IL)に入り、フロリダ州のキャンプ地に居残り、リハビリの継続。しかし、右肩の痛みが再発したため、ボストンに戻り、5月上旬に炎症を緩和するコルチゾン注射を打った。その後は、患部が快方に向かい、ようやく外野手としての出場に見通しがついた。

昨季、7月の月間打率.333、8月は同.326を残すなどメジャー2年の終盤でレベルアップを感じさせる内容を示した。右肩が打撃に悪影響を及ばさなければ、日本のファンがイメージする吉田正尚に近いバッティングができるはずだ。マイナーでの調整期間が何試合予定されているのか、分からない。実戦で外野守備をこなした後の右肩の状態が良好で、打席での実戦感覚が戻れば、吉田の2025年が“開幕”する。