日本の4番打者がメジャー移籍する。ヤクルトの村上宗隆内野手(25)が獲得交渉可能選手としてMLB30球団に通知された。交渉期間は米国時間8日(日本時間9日)から45日間。期限は米東部時間12月22日午後5時(日本時間23日午前7時)だ。
直近10年で最速の申請だ。2015年の前田健太、2017年の大谷翔平、2019年の菊池雄星らはいずれも12月上旬だった。12月上旬に球団幹部と代理人らが一堂に会するウィンターミーティング開催に合わせてポスティング申請するのが通例。村上が踏み切った異例のスピード申請には、3つの理由がある。大前提として、村上の代理人はエクセル・スポーツ・マネジメント社(ESM)のケーシー・クロース氏が務める。日本選手では田中将大(当時ヤンキース)や秋山翔吾(当時レッズ)の代理人を務めた大物エージェントだ。ヤンキースのデレック・ジーターの代理人事務所もESMだった。
(1)代理人クロース氏と2人のスラッガー
今オフ、フリーエージェント(FA)市場の目玉選手には、カイル・シュワーバー外野手(32=フィリーズFA)とカイル・タッカー外野手(28=カブスFA)がいる。左の強打者2人の代理人を務める人物がクロース氏だ。つまり、需要が高い打者の相場はシュワーバー、タッカーの契約額が大きく左右する。クロース氏が、このツートップをどのような金額で売り込むか。それが、今オフのFAマーケットの流れを作る。通常、FA市場では大物選手から早く契約が決まる。村上もこの上位グループに属する。シュワーバーとタッカーの正式契約が決まらずとも、村上の契約規模はおおよそ見当をつけられる。クロース氏が3人の左打ちスラッガーの代理人を務めることで市場価格をコントロールしやすい状況だ。だから、大物たちの契約を待たなくていい。クロース氏は自身の顧客、シュワーバーとタッカーを引き合いに村上の平均年俸、契約年数、総額を決める主導権を握ることができる。
(2)FA市場の第1グループ
FA市場では一般的に注目選手から契約が決まる。契約総額が大きくなるため、チームの予算編成に大きく影響するからだ。村上の注目度、契約総額はトップグループに属する。総額1億5000万ドルから2億ドル(約230億円〜307億円)の大型契約が予想されている。成立すれば、吉田正尚(レッドソックス)の5年9000万ドル(約138億円)を上回り、日本野手の歴代最高額となる(二刀流の大谷は除く)。25歳のホームランバッターは、強気に売り手に出られる立場だ。よって、ストーブリーグでは早期決着を望めば、それが実現できるほど村上人気は高い。
(3)メジャー1年目の準備とWBC
右脇腹を痛めたシーズン。治療と強化などコンディションを早めに整えて、MLBのルーキーシーズンに臨みたいはずだ。仮に3月に開催されるWBC(ワールドベースボールクラシック)に出場する場合、初めての春季キャンプと侍ジャパンへの合流などスケジュールが立て込む。準備は早ければ早い方がいい、と考えることは自然だ。
村上が“最速”ポスティング申請を決断した理由は、FA市場で大物顧客を抱え、主導権を握るクロース氏が大型契約を速攻でまとめる自信が根底にあるから。そして、メジャー1年目とWBCに備えたい、という狙いがある。10日(日本時間11日)から、ラスベガスでGM会議が開幕する。「MURAKAMI」の名前は連日、大きな話題になりそうだ。
