ブルージェイズの試合前の打撃練習では、少し変わった光景が見られる。
ジョン・シュナイダー監督がグラウンドに出て、自ら打撃投手を務める。ブラディミール・ゲレーロJr.やジョージ・スプリンガー、岡本和真が交互にケージに入り、打撃練習を行う。
チーム関係者にとっては見慣れた日常の一コマだが、他球団ではなかなか見られないスタイルだ。
一般的に監督は打撃ケージの後方からスイングや軌道を見守ることが多く、コーチが守備練習でベースに入ることはあっても、監督自らが打撃投手としてボールを投げるケースは珍しい。
2023年にはオールスターのホームランダービーでゲレーロJr.の打撃投手を務め、優勝した経験もある。
このスタイルについて聞くと、「ブラディ(ゲレーロJr.の愛称)やジョージ(スプリンガー)が『投げて』って言うから、それだけだよ」と笑いながら答える。
マイナーリーグでコーチや監督として長く打撃投手を経験してきたこともあり、選手との距離を縮める手段のひとつになっているという。
「選手の近くにいられるし、必要なときにサポートできる。それに、スイングをいつもと違う角度から見ることができるんだ」
長く見ていれば、選手の状態も自然と分かってくる。打撃に悩みを抱えているのか、ケガ明けでスイングに違和感があるのか、あるいはバットを振った後に首をかしげるような仕草まで、マウンドから細かく観察している。
「調子がいいかどうかは分かるし、ちょっとしたことならアドバイスもできる。違う視点だから見えるものがあるんだよ」
選手との関係性について、「選手を理解すればするほど、自分の仕事もやりやすくなるし、彼らも自分が何を見ているか分かってくれていると思う」と話す。
現役時代は捕手としてプレーしていたシュナイダー監督。だからこそ、打者を見る目にも自信がある。
「後ろや横から見るのには慣れているけど、前から見るのはまた違った感覚なんだ」
グラウンドに立ち、選手と同じ目線に立つ。その距離の近さが、このチームの空気をつくっている。