【解説】パドレス松井裕樹、マイナーで防御率5点近くてもメジャーで必要な理由

May 10th, 2026

ようやくメジャー3年目が“開幕”した。パドレスの松井裕樹(30)は2月中旬に左内転筋を痛め、5月5日(日本時間6日)にメジャー復帰。8日(同9日)のカージナルス戦(サンディエゴ)で今季初登板した。五回2死満塁のピンチで先発右腕のキャニングの後を受け、2番手でマウンドに上がった。安打と犠牲フライで2点を与えるも、記録上自身の失点にはならない。2度の回またぎで2回2/3で38球を投げ、3安打無失点だった。走者のいる状況、初登板の緊張感、球数など心身ともに負荷のかかった一日だった。

その前日、7日(同8日)に松井に話を聞いていた。試合後、松井はウエイトトレーニングを終えると取材時間を取ってくれた。駐車場に向かう通路で約15分間。マイナーでのリハビリ期間を振り返りながら、今季への思いを聞いた。

「もちろん、早く(メジャーに)行きたい、という気持ちはありましたけど(マイナーの)3試合とかで上がるとしたら、感覚も不安だった。打者と対戦して、ミスが出たことを含めて次に行かないと。いいところも、悪いところも出つつ、体をゲームに慣らしていった。思ったよりも(マイナーの試合数が)多かったですけど、プロセスをちゃんと踏めたことはよかったです」

マイナー3Aエルパソ・チワワズの一員として11試合(12回2/3)に登板し、防御率4.97だった。ファンや読者には『マイナーで防御率5点近い投手がメジャーに上がって大丈夫か?』と思うかもしれない。松井をひいき目にみるということではなく、フラットな立場でこの成績の内容と『なぜ防御率5点近くても合格なのか』を解説する。

まずパドレスやドジャースの3Aが所属する「パシフィック・コースト・リーグ」は打者有利な球場が多い。標高が高く、酸素が薄いため打球の空気抵抗が減り、長打が出やすい。アルバカーキ(ロッキーズ3A)は標高1500メートルの高地、エルパソ(パドレス3A)は、1100メートル、ソルトレイク(エンゼルス3A)は1500メートル、リノ(ダイヤモンドバックス3A)、ラスベガス(アスレチックス3A)は900メートルなど、高地に位置する。さらに砂漠地域など空気が乾燥した気候で打球が飛びやすい投手不利な条件が重なる。

松井の成績に対して言い訳を代弁したいわけでもなく、これが現実でありフェアな視点だ。実際、5月9日(同10日)時点で防御率3点台は3人のみチームの平均防御率はリーグ10球団中、7球団が5点を超える

実際、パドレスのニーブラ投手コーチは「リハビリのマイナー戦で投げている成績は、打者がとても有利な環境なのでメジャー昇格のときにあまり考慮しない。体調がいいか、球速がしっかり出ているのかを確認する」と明かしている。

松井は直球のホップ成分(いわゆるボールの伸び)が19〜21インチ(48.3〜53.3センチ)。メジャーでも上位に入るホップして伸び上がるような軌道の“打ちにくいストレート”を投げる投手だ。しかし、マイナー戦ではメジャーの平均値に近い16インチ(40.6センチ)にとどまる。つまり、松井の特徴である伸び上がるような直球が、打ちやすい球にグレードダウンしてしまう、というわけだ。

「球が速い方ではないので、ストレートの垂直方向の変化が削られたら、ただの球の遅い、球に伸びのない投手になっちゃう。それはやっぱりきついです。打球の飛距離も伸びます。だから、フォームやメカニクスにフォーカスしていました」

開幕から38試合目での初登板。4点ビハインドで1死満塁のタフなマウンドだった。長くリリーフ投手を務める左腕は、自身の失点が記録されずとも、前の投手が残した走者を生還させたことは悔やんでいるだろう。自分に失点がつかなかったら、まあいいか、という考えはない。パドレスは絶対的クローザーのミラー、セットアッパー左腕のモレホン、右腕にアダム、エストラーダら勝利パターンの継投はメジャー有数の戦力だ。松井は4〜5点差のリードやビハインドでの登板が当面の持ち場だ。

「抑えるしかないですね」

目指すポジションは、勝ち継投での登板。今は左対左、複数イニング、点差の開いた状況などあらゆるチームの要求に応え、ゼロを続ける。松井のメジャー3年目の挑戦はこれからだ。