山本由伸、3年目の“モデルチェンジ”  より効率的で洗練された投球へ

July 23rd, 2026

ドジャースのエースとしてローテーションを守る山本由伸。メジャー3年目を迎えた今季、投球スタイルに変化がある。昨季までの圧巻の奪三振ショーはやや減っているものの、相手打線を封じる投球は健在だ。

ベースボール・サバントの新たな機能を使って山本の3年間を比較したい。

奪三振率は低下も「投手としての価値」はメジャー最高峰

圧巻の投球でリーグを席巻した昨季(2025年)に29.4%を誇った奪三振率(K%)は、今季24.8%まで低下。

「三振を奪う力が落ちているの?」

そんな声が聞こえてきそうだが、データが示す現実は正反対だ。

投球の総合的な貢献度「ピッチング・ラン・バリュー」を見ると、「100パーセンタイル(メジャー全投手の上位1%)」と、依然として球界トップクラスの位置に君臨している。

三振が減っても失点しない。その秘密は「四球を出さないこと」と「強い打球を許さない点」にある。

  • 四球率(BB%):昨季の8.6%から今季は5.5%(上位8%)まで改善
  • ハードヒット率(打球初速95マイル=153キロ以上の割合):1年目の41.3%から35.0%へと激減

今季は結果として、四球を減らし、打たせてアウトをとる投球へ変化している。

※なお、「三振が減った」といってもそれは山本基準でのハイレベルな話であり、今季もすでに2試合で2ケタ三振をマークしている。

打者の手元で「沈める」スプリットとシンカーの増加

このスタイルの変貌を支えているのが、球種の再構築だ。

メジャー1年目は投球の4割以上(40.5%)、昨季は35.2%を占めていた主力のフォーシーム(ストレート)を26.6%まで減少。代わりに投球の「軸」へと昇格した球種が、空振りを誘うスプリット(27.4%)だ。さらに今季、相手打者を最も困惑させている変化がシンカーの増加(12.8%)である。

平均154キロ台のフォーシームとほぼ変わらないスピードで、打者の手元でスッと沈む。打者からすれば「真っすぐが来た」と振り抜いた瞬間に芯を外され、力のない内野ゴロに打ち取られてしまう。この新たなアクセントが、ハードヒット率35.0%という驚異的な数値の一因になっている可能性がある。

狙うは「省エネ」での完走。洗練された投球

今季はここまで18試合に登板し、すでに119.2イニング。1年目は18試合で90.0回(1試合平均5.0回)、昨季は30試合で173回2/3(1試合平均約5回2/3)だったことを考えると、今季は1試合平均約6回2/3と、イニング消化能力が劇的に向上していることがわかる。

この背景には、投球効率の向上もありそうだ。

【1イニングあたりの投球数(P /IP)】

  • 2025年:16.06球
  • 2026年:14.71球

1イニングあたり約1.3球の節約は、7回で約10球の削減を意味する。四球率5.5%の制球力と、スプリットとシンカーでゴロを打たせる配球へのシフトが、この「少ない球数で深いイニングまで投げ切る」超・省エネピッチングを支えている。

それが発揮されたのが、後半戦初先発のヤンキース戦での完投勝利(4安打2失点無四球、7三振)だ。省エネで球数を抑えつつ、要所では三振も奪う。今季の山本の強みが凝縮されていた。

過酷なメジャーの長いシーズン、そして10月のポストシーズンを見据えた時、1打席に何球も費やす奪三振狙いは体力を削る。ボール球にも手を出させる高いチェース%を維持しながら、早いカウントで打たせて取る場面も増えている。山本が見せている新たな投球スタイルは、メジャーの過酷な環境を戦い抜くために手に入れた「究極の省エネピッチング」とも言える。

ドジャースのロバーツ監督は、山本を「チームのエース」と評する。3年目を迎えた今季は、投球効率や配球にも磨きがかかり、エースとして新たな境地に到達しつつある。