この1球が試合展開を大きく左右する重要場面だった。1−0とリードの七回2死一、三塁。フルカウント。スミスを92マイル(148キロ)のカットボールで空振り三振に仕留めた。右腕を振った勢いのまま、センター方向に顔を向けると雄たけびをあげた。
「逆転されましたけど、最後まで打線がつながって、何とか全員で勝てたのですごくいい試合だったと思います」
7イニングを投げ、5度の三者凡退。チームの先発投手陣は、5試合連続で初回に失点していたが、3人で片付けた。四回1死でマルテに四球を出すまで10者連続アウト。六回を終えて、ノーヒットピッチングだった。昨季のメジャー移籍から、この日でレギュラーシーズン28登板目。最多の110球を投げた。七回を迎えた時点で90球。ブルペンでは、誰もウオーミングアップをしていなかった。100球に到達した2死三塁でも、ロバーツ監督はベンチに座ったまま。指揮官は「あと1人投げさせてくれ、という気持ちが伝わってきた。(投手交代ではなく)彼が最善の選択だと思った」と続投の意図を明かした。試合前には日本右腕を「うちのエース」と形容した絶大な信頼を采配で実行した。
「エース、という言葉は簡単に使えない。誰にでも当てはまるものではないから。長いイニングを投げ、打者の左右を苦にせず、試合を支配できる力があること。それはメジャーでも一握りだ」とロバーツ監督は語った。6勝目はならなかったが、山本の先発試合では7勝3敗。自身の白星に記録されなくても、チーム4勝の勝ち越しをもたらしている。同地区ライバルとの3連戦で1勝1敗。ダイヤモンドバックスとの3連戦から、9カード連続で勝率.500以上のチームとの対戦が続く。エース右腕は、厳しい戦いへ気持ちを向けた。
「とにかくきょうの勝利に貢献できたことがすごくうれしいと思いますし、チームの勝ちにつながる投球を毎試合できたらと思います」
チームは九回にスコットがモレノに同点3号ソロを浴びた。延長十回にはキャロルに勝ち越し15号2ランを打たれ、1−3となった。しかし、その裏に無死二塁でエドマンのレフト戦へのタイムリーツーベース。その後、1死満塁からスミスが押し出しのデッドボールで同点に。最後は、マンシーがセンターへの犠牲フライで大谷がサヨナラのホームを踏んだ。劇的な勝利をおさめたにも関わらず、試合後のクラブハウスに浮かれた空気は皆無。昨年の覇者は、次の勝利に気持ちを切り替えているようだった。
