今後、何年に渡り、いや何十年にも渡り、この夜は語り継がれるだろう。日本投手の献身で激闘のフィナーレを迎えた。チームの窮地を救い、歴史を作り、そして伝説になった。山本由伸(27)は、前夜の第6戦で96球を投げた。一夜明けた最終決戦。4-4の同点、九回1死一、二塁のピンチから、2回2/3を無失点で抑えた。
「限界を超えた、というような感覚はないですね。限界を超えたという感覚はないですけど、プロに入って2日連続登板する経験は初めてだったので、また新しい自分が、いけるんだ、っていう自信になりました」
2勝3敗でブルージェイズに王手をかけられ、託された第6戦では6回5安打1失点で勝利投手。負ければ終わり、の一戦でWS連覇の希望をつなぎとめる貢献だった。やり切った。自分の役目は終えたつもりだった。
「もちろん行けと言われたら行きますけど、できれば応援を頑張りたい(笑)
「明日もプレーする人は大変だと思います(笑)」
第6戦の終了時点では、そのように冗談めかして話し、連投をすることは想定していなかった。山本は、メジャー移籍以降、中5日以上の登板間隔。中4日は1度も経験がない。一気に「中0日」で世界一を懸けるマウンドに上がった。レギュラーシーズンで30先発(173回2/3)を務め、ポストシーズンでは6試合(37回2/3)を投げ抜いた。WS第7戦。死力を尽くした。
「もともと僕が19歳くらいの時に日本の1軍の試合で初めて投げて、1試合投げたら10日くらい、肘が伸びないくらい(張って)パンパンだったんですけど、そこからトレーニングだったり、フォームをちょっと変えてりして、どんどん負担なく全身を使ったフォームで投げられるようになった。積み重ねてきたのは間違いじゃなかったんだな、と思いました」
WS3試合(2先発)に登板し、防御率1.02、投球回17回2/3、10安打、2失点、2四球、15三振、WHIP0.68、そして3勝。WSで3勝を挙げた投手は、2001年のランディ・ジョンソン(ダイヤモンドバックス)以来の快挙となった。
昨今は、プレーヤーの負担を考慮し、負傷リスクを避ける“健康第一”が優先される。もちろん目の前にある勝利をつかみたい。WS第7戦以上に重要な試合は、ない。一方で大型契約を結び、20代の選手なら、「壊れてでもチームの勝利」という美学は、求められないこともある。山本は“選手ファースト”のオキテを破り、異例の連投を実現させた。すべては、連覇のためだった。そして、山本独自が地道に継続してきた日々の賜物だ。
「大変。でも、やり切ったからこの今まで感じたことのない喜びも今、感じていますし、本当にやり切ったからこそ、やってよかったな、って今は思える。自分の一つ、成長につながった。すごい1日になりましたし、また一つレベルの上がったようなそんな感じがします」
2026年。山本は、3連覇を目指すチームでエースを張る。
