力感ある腕の振り。ダルビッシュに復帰のときが、近づいている。一回に2ランを浴び、2失点したが、ステップアップは順調だ。3月13日、アリゾナ州でのオープン戦(ロイヤルズ戦)以来、62日ぶりとなる試合での投球。登板を終えた安堵、そして充実感。一方で登板翌日以降、右肘はどんな反応をするのか。少しの不安も心の片隅にあるようだった。
「楽しかったですね。久しぶりで。4イニング投げられたのでよかった」
3月の中旬に右肘の炎症が発覚した。休養と治療を続け、3月下旬に軽めのキャッチボールを再開。ブルペン投球も段階的に強度を上げ、慎重を期して実戦を迎えた。5月2日から11日まで3カードの遠征はチーム帯同を外れ、アリゾナ州ピオリアの球団施設で調整。2度の実戦形式の投球練習に臨み、最速98マイル(157.7キロ)をマークするまでに回復していた。
マイナーでのリハビリ登板をもう一度こなすか、あるいはメジャー復帰か。チームは次の3連戦が終わると5月20日から9連戦、休日、13連戦、休日、13連戦と過密なスケジュールが続く。先発投手が不足し、ダルビッシュの早期復帰も待望されている。しかし、残りのシーズンで再発は禁物。復帰には万全を期す必要がある。
「本当に体次第です。体の状態が悪ければ無理だし、戻れないですから。だから、次の数日間でちゃんと見極めて、チームと話をしながら」
強度の上がった試合での投球。登板後に右肘に異常がなければ、メジャー復帰の時期にメドが立つ。連戦が控えるが、パドレスは27勝15敗でナ・リーグ西地区で首位のドジャースを0.5ゲーム差で追う2位につけ、チーム自体の調子はいい。
「うれしいですよ。いや、俺いらないじゃんって(笑)。みんな機嫌いい。勝っているとね。そういうクラブハウス見るのが僕は好きですから」
自虐のジョークで笑ったが、昨季のワールドシリーズ覇者を追撃するには、ダルビッシュの力が必要だ。
試合前には“恒例行事”も済ませた。メジャーリーガーがマイナーでリハビリのために試合に出場する際には、高級な食事を用意するのがしきたりだ。この日は、ポケットマネーから、ステーキハウスのケータリングでマイナーリーガーたちに差し入れ。会場は敵地だったが、スタンドにはパドレスのユニホーム姿の日本人ファンも多く駆けつけた。もう一度、マイナーで先発するか、メジャー復帰か。いずれにしても、ダルビッシュの復活はカウントダウンに入っている。
