ア・リーグでは、よほどの同票でも起きない限り、どちらかの「MVPにふさわしい男」が無冠で終わる運命だった。
ヤンキース主将アーロン・ジャッジと、マリナーズの捕手カル・ローリー。ともに数字・物語ともに十分な1年を送り、頂点にふさわしい存在だった。
結果はMLBネットワークで発表され、ア・リーグはジャッジ、ナ・リーグは予想どおりドジャースの大谷翔平が受賞。両者が、全米野球記者協会(BBWAA)が選ぶ最高の個人賞を手にした。
二刀流の大谷翔平は、3年連続(ナ・リーグでは2年連続)の満場一致によるMVP受賞で、過去5年で4度目のMVPとなった。これを上回るのはバリー・ボンズ(7度)のみで、3年連続MVPはそのボンズ(2001〜04年)に次いで史上2人目。さらに、複数回の満場一致受賞は史上初であり、大谷はいずれの受賞も満票で選ばれている。
一方のア・リーグは、予想通り接戦となった。
ジャッジは53本塁打を放ちながら首位打者となる稀有な成績を残し、1位票17票を獲得。ローリーの13票を上回り(総得点はジャッジ355、ローリー335)、2年連続、ここ4年で3度目のア・リーグMVPを受賞した。
両リーグのMVPがそろって2年連続で受賞するのは史上初めてとなった。
今回の結果は、「いまは大谷翔平とアーロン・ジャッジの時代」であることを、これまで以上にはっきり示した。両者は歴史的領域へと歩を進めつつある。
一方で、たとえ受賞を逃したとしても、2012年のカブレラ vs. トラウト以来の大接戦となった今回のア・リーグMVP争いは、捕手として史上最高級のシーズンを送ったカル・ローリーの偉業を改めて示すものでもあった。
守備面ではすでにリーグ屈指の捕手と評価されていたローリーは、2024年にゴールドグラブのみならずア・リーグ全体の守備最優秀選手「プラチナ・グラブ」も受賞している。2025年も守備で高い価値を示し続けた上に(スタットキャストのフィールド・ラン・バリューは上位13%、ファングラフスの守備評価は全ポジション中8位)、さらに打撃でも大きな飛躍を遂げた。
史上7人目の60本塁打達成者となり、その60本は捕手としても、スイッチヒッターとしても、さらにはマリナーズの選手としても史上最多だった。リーグ最多の125打点を挙げる一方で、投手陣のリード面でも高い評価を受け、マリナーズを2001年以来の地区優勝(投票締切後にはア・リーグ優勝決定シリーズ進出)へ導いた。
以上の実績はいずれも特筆すべきものだ。しかしBBWAAの投票者は、ジャッジの成し遂げたことが同様に特別であると判断した。また、ジャッジは複数回の受賞によるマンネリで投票されないのでは、という懸念はこれにより完全に否定されたと言える。
大谷に関しては議論の余地がほとんどなかった。2024年には史上初の「50本塁打・50盗塁」を達成し、2025年は右肘手術からの復帰のため走塁面の負荷を抑えたが、打者専念の成績だけでもMVP級。さらに、ワールドシリーズ制覇を果たしたドジャースに投手としても貢献したことで、その受賞は揺るぎないものとなった。
ナ・リーグは、フィリーズのカイル・シュワーバーが2位、メッツのフアン・ソトが3位。ア・リーグの3位はガーディアンズの主軸ホセ・ラミレスでキャリア4度目の最終候補入りだった。
