まさか、両リーグ優勝決定シリーズ(LCS=7回戦制)がともにスイープ(4連勝)で終わるなんて思っていなかっただろう?
いや、最初の2試合を見た後、そう思った人もいたかもしれない。
しかし、15日のア・リーグ優勝決定シリーズ(ALCS)第3戦、その最初の2イニングでは、考えを変える理由が見当たらなかった。フリオ・ロドリゲスが初回に2点本塁打を放ち、シアトルの観衆は狂喜乱舞。すでにワールドシリーズの対戦カードが見えたような気がした。だが、そうではなかった。
その後、ブルージェイズが12得点を奪う猛攻で無失点を続け、一気に形勢を覆した。ブルージェイズ打線がついに目を覚まし、少なくともALCSはシリーズとして再び息を吹き返した。
ナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)も同じ展開になるのか? 舞台をロサンゼルスに移した第3戦で、その答えがすぐに分かる。
16日に開催される2試合のLCSから、それぞれのチームの注目ストーリーを紹介する。
ナ・リーグ優勝決定シリーズ第3戦:ブルワーズvsドジャース(ドジャース2勝0敗)
午後6時08分開始(東部時間=日本時間17日午前7時8分)
放送予定=TBS; NHK BS; JSports 3; SpoTV Now
先発予定:ブルワーズ=未定 ドジャース=タイラー・グラスナウ
ブルワーズ:どう立て直すか?
「まだ終わったとは思っていない。理由は分からないが、そう感じている」とパット・マーフィー監督は、第2戦の敗戦後に語った。
とはいえ、その言葉はチームが自信に満ちている時に発するコメントではない。そして現状、ブルワーズに自信を持てという方が無理な話だろう。第1戦で佐々木朗希(23)がまさかの九回に崩れた一度を除き、ドジャース投手陣は完全にブルワーズを封じ込めている。チーム打率.086にとどまっている。
ただし、いいニュースもある。ブルワーズは今季97勝を挙げたチームであり、その原動力の多くは打線だった。ナ・リーグでは打率(.258=フィリーズと並ぶ)と出塁率(.332)でともに1位。今シリーズでは粘り強い打席をまったく見せられていないが、レギュラーシーズンではそれが強みだった。
そして今回対戦するのはグラスナウ。実力者だが、ブレイク・スネルでも山本由伸(27)でもない。そこはブルワーズにとって一つの救いだろう。もっとも、グラスナウはレギュラーシーズン終盤から合わせて14回2/3連続無失点と、絶好調の状態にある。
どれほど厳しい状況に見えても、ブルワーズはこの3試合のうち2つをドジャースタジアムで勝てばシリーズをミルウォーキーに戻すことができる。ファンは熱狂し、再びチームを迎えられる機会に浮き立つだろう。球団史上最高のブルワーズだ。今こそ、その実力を示す時だ。
ドジャース:いまが最強の状態か?
シーズン序盤には「ドジャースは1シーズンの最多勝記録を更新するのではないか」と言われていた。実際にはまったく届かなかった。最初からそう予想していた人もいたが、長期戦略を取っていたことはいまになって明らかだ。
過去10年以上、ドジャースは常にレギュラーシーズンで最強クラスのチームであり続けてきたが、必ずしもポストシーズンの成功に結びついていたわけではない。
だが今季は違う。ワールドシリーズ制覇の翌年である今季、開幕から徹底して「10月」を最優先に据えてきた。第3戦の先発グラスナウのような主力投手には負傷からの復帰を急がせず、不調のベテラン、ムーキー・ベッツらにも焦らず対応した。そして全員が「10月に勝つ」ことに集中し続けた。
その結果、いまのドジャースは「この状態で1年を戦っていれば最多勝を記録していた」と思わせるほどの完成度を誇っている。
いまのドジャースは圧倒的で、しかも第1、2戦でスネルと山本が18イニング中17イニングを投げたおかげでリリーフ投手陣は休養十分だ。第3戦にグラスナウは中6日、ブルペン陣も全員が少なくとも中2日(多くはそれ以上)の休みを確保している。現時点のドジャースは過去最高の完成度と言ってよく、他球団にとっては脅威だ。
ア・リーグ優勝決定シリーズ第4戦:ブルージェイズ対マリナーズ(マリナーズ2勝1敗)
午後8時33分開始(東部時間=日本時間17日午前9時33分)
先発予定:マックス・シャーザー(ブルージェイズ)、ルイス・カスティーヨ(マリナーズ)
ブルージェイズ:シャーザーにどこまで期待できるか?
第4戦のマウンドで、マックス・シャーザーの鋭い視線、広がる鼻孔、そして左右で色の違う瞳のアップが映し出される。それは、野球史でも稀な存在を思い出させる光景になるだろう。10月の夜、すべての投球に重みがある舞台、打者と投手の終わりなき真剣勝負。その中でこそ、シャーザーのような闘争心の塊が最も輝く。
シャーザーは殿堂入り確実なキャリアで、これまで5球団で計30試合(先発25試合)に登板し、143イニングを投げている。ブルージェイズは6球団目。ワールドシリーズ制覇は2度、今回が7度目のリーグ優勝決定シリーズ登板だ。つまり、もう慣れた舞台というわけだ。
実戦登板は約1カ月ぶり。その理由は明白だ。9月のシャーザーは4先発で0勝3敗、防御率10.20と苦しみ、ポストシーズンの先発ローテーションから外れ、地区シリーズ(ALDS)の出場メンバーにも入らなかった。今はブルージェイズの敗退危機を食い止める役目を担う。ジョン・シュナイダー監督は「1カ月前より身体の状態は明らかに良い」と述べ、41歳にとって十分な休養がプラスに働くとの見方を示す。今回がメジャー最後の先発になる可能性もある。数々の大舞台を乗り越えてきた右腕は、再び勝負どころで力を示せるか。
マリナーズ:覚醒した打線をカスティーヨは止められるか?
このシリーズ、特に第3戦で、ブルージェイズは「早いカウントから仕掛ける」方針を徹底し、ついに実を結んだ。第3戦前まで打率.131、各敗戦で二回以降は安打1本にとどまっていた打線が一転、ジョージ・カービーと継投に入ったマリナーズ救援陣を相手に、ライナーを次々と内外野へ弾き返して大量点を奪った。感情面で象徴的だったのはブラディミール・ゲレーロJr.の一発。最初の2試合で7打数無安打と低迷していた主砲が放った本塁打は、ALCS本拠地2連敗のうっぷんを吹き飛ばす合図になった。ブルージェイズには打力がある。その事実を思い出させる夜だった。
だが第4戦の相手はカービーではない。ルイス・カスティーヨだ。ALDSで圧巻の投球。今回がALCS初先発となる。第2戦ではタリク・スクーバルと投げ合い、4回2/3を好投し勝利に貢献。第5戦でもスクーバルの試合で1回1/3を救援し、勝利投手となった。(もし試合が16回、17回に及んでいても、タイガースを無失点に抑え続けたのではないかと思わせる内容だった)
本拠地で球団初のワールドシリーズ進出を簡単に決める。そんな期待は第3戦で早々に打ち砕かれた。だが、ここはシアトル。物事が簡単に運ぶことなどない。それでもカスティーヨには、このシリーズの主導権をがっちり握らせるだけの力がある。
