2026年、カブスの右翼手は誰だ? 誠也は?

December 5th, 2025

カブスの外野陣は2025年、メジャーでも屈指の破壊力を誇り、外野手全体のOPS.778はヤンキースに次いでメジャー2位だった。ただ、頼りになる得点源だった外野が、右翼手カイル・タッカーがフリーエージェント(FA)市場に出たことで、一気に不確実なポジションへと変わった。

8日(日本時間9日)のウィンターミーティング開幕を控え、カブスは投手補強を最優先に動いていると言われているが、タッカー流出の影響を無視できる状況ではない。それでも、その穴を埋めるための選択肢はいくつか用意されている。

カブスが取り得る道は主に5つある。

⒈タッカーと再契約する

外野の問題を解決する最も単純な方法は、タッカーと再契約することだ。ただし、それは簡単ではないし、安くもない。今オフのFA市場で最も注目を集めている選手の一人だからだ。ここ2シーズンは負傷の影響で出場機会と成績が(タッカーの基準から見れば)制限されたものの、OPS+は156だった。今季の22本塁打はフルシーズンとしては自己最少だったが、OPS.841、OPS+143をマークしている。さらに25盗塁を記録し、自身3度目の「20本塁打・20盗塁」のシーズンとなった。こうした数字は、ほかの選手なら誰もが喜んで受け入れる「不調年」の成績と言っていい。この記事で挙げられている選択肢の中でも、この案がカブスファンにとって最も魅力的なプランになるだろう。

⒉コディ・ベリンジャーのような別の外野手を獲得する

ベリンジャーとの再契約は、かなり理にかなった選択になる。ベリンジャーは2023年シーズン前にカブスと1年契約を結び、130試合で打率.307、26本塁打、97打点、OPS.881と上々のスタートを切った。この活躍を受けて、2024年開幕前には3年総額8000万ドル(約125億円)の延長契約にこぎ着けた。

ただしそのシーズンは、2023年ほどのインパクトは残せなかった。出場試合数は同じ130試合だったが、各部門で数字が落ち込み、打率.266、18本塁打、78打点、OPS.751にとどまった。

一方、2025年開幕前にヤンキースへトレードされると、29本塁打、98打点、OPS.814と成績を立て直した。守備指標outs above average(OAA=平均的な野手と比較してどれだけアウトを取ったかを示す指標)は+7で2020年以降で最高の数値だった。特筆すべきは152試合に出場し、2019年以来最多の稼働をしたことだ。現在は契約最終年のオプトアウト(契約破棄条項)を行使してFAになっている。

鈴木誠也を右翼のレギュラーに据え、モイセス・バレステロスをDHで起用する

リスクの大きい選択だが、うまくはまる可能性もある。鈴木は今季、主にDHとして起用されて32本塁打、103打点を記録したものの、後半戦は苦しい内容だった。7月18日以降の本塁打はわずか6本で、打率も.207に落ち込んだ。加えて、守備面での貢献度にも限界がある。OAAは通算-5で平均を下回っている。ただし、打撃が前半戦の水準まで戻れば、守備のマイナス分を補える余地はある。全体を見れば、一気に悪い方向へ傾くリスクを抱えたプランと言える。

一方で、バレステロスは2025年に20試合の“お試し”昇格を経験し、そのうち18試合でDHとして起用されて手応えを示した。カブスのプロスペクトランキング2位で、66打席で打率.298、OPS.868という数字を残している。フルタイムで任せる準備が整っているのか。そう判断しても不思議ではないが、確実と言い切れる段階ではない。

⒋右翼にオーウェン・ケイシーとケビン・アルカンタラも絡める

若手に思い切ってプレーさせるプランも、有力な選択肢として残っている。カブスのナンバー1プロスペクト(有望株)のオーウェン・ケイシーと、同5位のケビン・アルカンタラは、ともに3Aアイオワで結果を残した後、メジャーで短期間の昇格を経験している。ただ、バレステロスの場合と同じく、メジャーでより大きな役割を任せる準備ができているかどうかが判断材料になる。

23歳のケイシーは、8月の昇格後に27打席に立ち、打率.192、1本塁打、OPS.568という数字だった。アルカンタラ(23歳)は、まず2024年にメジャーデビューを果たし、10打席で1安打。2025年に再昇格し、12打席で打率.364、OPS.781を記録した。

もっとも、ケイシーもアルカンタラもメジャーで通用するかどうか、まだ判断基準が少ない。どちらかに大きな役割を与える選択には、それなりのリスクがつきまとう。

⒌もう一人のカイルをDHで呼び戻し、残りは後から考える

メジャーの他球団と同じように、カブスもフリーエージェントのカイル・シュワーバーを打線に加えたいはずだ。ただ、タッカー同様、この「カイル」を獲得するのは難しく、費用もかさむことになる。現時点では、実質的にDH専任と言っていい存在でもある。

それでも56本塁打、132打点という数字は、十分に魅力的な投資対象であり、細かな疑問を押し流してしまう力がある。シュワーバーは2015〜20年にカブスでプレーし、その間に30本塁打以上のシーズンが2度あり、2016年のワールドシリーズ制覇にも大きく貢献した。このワールドシリーズでは、左膝前十字じん帯を断裂して4月上旬以降メジャーの試合に出ていなかったにもかかわらず、打率.412、OPS .971を記録している。

そう考えれば、シカゴにシュワーバーが戻ってくる展開は、球団にとってもファンにとっても、全方位的にうれしい話になるだろう。その場合の連鎖的な影響、つまり右翼は誰が守るのか、誰が弾き出されるのか? については、実際に動きながら考えていくこともできる。