過去の失敗を糧に GMが語る新天地移転と再建への戦略

March 23rd, 2026

25年前、アスレチックスは王朝を築く直前にあった。

強力な打線と勢いのある若手投手陣に率いられ、アスレチックスは2000年にア・リーグ西地区を制し、1980年代後半から1990年代初頭の“バッシュ・ブラザーズ”時代以来となるポストシーズン進出を果たした。ジェイソン・ジアンビがMVPを受賞し、ティム・ハドソンはサイ・ヤング賞2位、テレンス・ロングは新人王投票で2位に入った。

未来は明るいと、誰もがそう確信していた。

その後3年連続でプレーオフには進出したものの、チームの主力は毎年のように流出。ジアンビは2001年シーズン後にFAで移籍し、2002年にMVPを獲得したミゲル・テハダも2003年限りで退団。ハドソンは2004シーズン後にトレードされ、その2日前には2001年サイ・ヤング賞2位のマーク・マルダーも放出された。

2002年にサイ・ヤング賞を受賞したバリー・ジトはさらに4年間チームに残ったが、その後はジアンビやテハダと同様にFAで移籍し、巨額の契約を手にした。

三塁手エリック・チャベス(ゴールドグラブ賞3度受賞)のみが長期契約を結び、2004年シーズン前に6年総額6600万ドル(約99億円)の契約にサインした。チャベスは当時、ジアンビやテハダの流出に触れつつ、自分が残ったことを「消去法」と表現した。

当時の主力と契約を延長できなかった理由について、ゼネラルマネジャーのデビッド・フォーストはこう説明する。

「そういった交渉の機会自体がほとんどなかった。私たちの年俸総額は5000万〜6000万ドル規模で、そこから長期契約を結ぶとロースターの柔軟性を失うリスクがあった」

チャベスは契約後の3年間でさらにゴールドグラブを3度受賞したが、その後の4シーズンではわずか154試合の出場にとどまり、その間、チームは一度も勝ち越しでシーズンを終えることはなかった。

「ビリー・ビーンとよく話すんだ。あのチームを維持できていたらどうなっていたかと。ジアンビ、テハダ、チャベス、そしてあの3人の投手をあと6〜7年維持できていたら、かなり壮大な時代になっていたはずだ」とフォーストは振り返る。

「でも、考えることはあっても、それにとらわれることはない。当時はそういう状況だった」

その「状況」がついに変わる時が来た。継続して栄光を目指すことのできるチャンスが訪れようとしている。

現在のアスレチックスにはMVPやサイ・ヤング賞投手はいない。また、2021年以降、一度も勝ち越したシーズンがない。それでもフォーストは、ポストシーズン復帰、そして2028年に始まるラスベガスでの新時代を見据えた若く魅力的なコアを構築している。

「新球場の計画が現実的になった時のために、何年も前から話してきた。確かに、ここ数年でマット・チャップマン、マット・オルソン、ショーン・マーフィーらを放出せざるを得なかった。ただ、実際にやるという意思を示すことが重要だった」

最初に契約延長を結んだのはブレント・ルーカーで、2025年1月に5年総額6000万ドル(約90億円)、2030年の球団オプション付きの契約。契約時に30歳だったルーカーは、2023年にオールスター級のブレークを果たし、2024年には39本塁打・112打点を記録。アスレチックスは彼をチームの中心選手と位置付け、その契約は他の選手たちへのメッセージにもなった。

フォーストはこう語る。「ルークはここに来てから、ずっとチームの年長者のような立ち位置にいる。ブレント自身もよく話しているが、彼はあらゆる立場を経験してきた。プロスペクトとしても、ユーティリティとしても、そして今は契約を得て中軸を担っている。その経験がこのグループのリーダーになるために必要だったし、他の選手と長期契約を結ぶ前にそれが必要だった」

その2カ月後、アスレチックスはローレンス・バトラーと7年総額6550万ドル(約98億円)、2032年の球団オプション付きで契約延長。さらに9カ月後にはタイラー・ソダーストロムと7年総額8600万ドル(約129億円)、2033年のオプション付きで契約。先月にはジェイコブ・ウィルソンが4人目となり、7年総額7000万ドル(約105億円)、2033年のオプション付き契約を結んだ。

どの契約にもリスクとリターンがある。怖いのは一つの契約にすべてを賭けて、それが絶対に当たらなければならない状況になること。チャベスと契約したときにそれを経験した。こういう言い方は好きではないが、要するに多様なポートフォリオを組んでいるということだ。DHのルークはややベテランで、タイラーは最も若く30歳まで契約する。ローレンスはメジャー経験があり、ジェイコブはドラフト1巡目。FAの給与や契約年数を分散させ、その上で残りのロースターを構築していく」とフォーストは説明する。

フォーストは、現ア・リーグ新人王のニック・カーツや強打の捕手シェイ・ラングリアーズとの契約延長交渉についてはコメントを避けたが、「4人以上の選手と話し合いはしているし、今後も続けていきたい」と認めた。

J.T.ギン、ルイス・モラレス、ジャック・パーキンス、グンナー・ホグランドといった投手陣に加え、ジェイミー・アーノルド、ゲージ・ジャンプ、リン・ウェイエン、ブレイデン・ネット(MLBパイプラインで球団トップ6のうち4人)といった有望株も控えており、フォーストは「この10年で最も層の厚さと才能を兼ね備えた投手陣だ」と評価している。

サクラメントの仮本拠地からラスベガスの新球場へ移転するまであと2シーズンとなり、ようやく明るい兆しが見えてきた。打者有利のサターヘルスパークで投手を引きつけるのは容易ではないが、フォーストは「できるだけ中立的に設計されている」という新球場が、今後のFA獲得にプラスに働くと見ている。

「1年後に3年や4年、5年契約の話になれば、サクラメントでプレーするのは1年だけになる。関心は大きく変わるはずだ。特に2028年シーズン前のオフには、多くの選手が興味を示すだろう」

ラスベガス移転によって、オークランドのコロシアム時代には存在しなかった収益源が生まれるため、FA市場での競争力も高まる見込み。フォーストはこの移転と既に契約延長で固めたコア選手たちが、持続的に勝てるチーム作りに大きな影響を与えると考えている。

誇張ではなく、ほぼすべてが変わると言っていい。まずは年俸総額や使える資金が変わる。そして4〜5年先まで計画を立てられるようになる。これまでは収益予測も含めて常に単年ベースで、“取引ベース”だった。ビリーがよく使っていた言葉だが、その年の年俸に全力を注ぐしかなかった。今は計画が立てられる」

フォースト自身も、まだ何も成し遂げていないことは理解している。アスレチックスは短縮シーズンとなった2020年以降ポストシーズンに進出しておらず、2021年以降は勝ち越しもない。2026年のチームが何を成し遂げるかは未知数だ。

しかし、長期的な展望はここ数年で最も明るい。フォーストは自信を持って、次のように締めくくった。

「数年後にどうなっているか見てみよう。契約を結んだだけで満足しているわけではない。ロースターを完成させ、実際にフィールドの結果を変えなければならない。毎年チームを作り直すのではなく、今こうした取り組みができていることをうれしく思っている」