タッカー争奪戦に敗れたブルージェイズ、次の焦点はビシェット

4:39 AM UTC

資金力に勝る球団が、さらに戦力を積み増した。今オフのFA市場最大の目玉、カイル・タッカーが、ドジャース入団を決めた。

報じられている4年総額2億4,000万ドル(約372億円)の契約は、ドジャースにとって今オフを象徴する大型補強のひとつだ。ブルージェイズも交渉の最後までタッカー獲得レースに加わっていたが、より一般的な長期契約を提示できる本命視される存在だった。

オフに入っても、ワールドシリーズが続いているような補強合戦だ。ドジャースはエドウィン・ディアスに続き、市場最高評価の打者タッカーを獲得。ブルージェイズもディラン・シースを起点に、コディ・ポンセ、タイラー・ロジャース、岡本和真と着実に戦力を積み上げている。

約2年前に大谷翔平がブルージェイズとの長い駆け引きの末にドジャース入りを発表した、あのインスタグラム投稿ほどの衝撃ではない。それでも、今オフここまで勢いのあったブルージェイズにとって、初めてのつまずきと言える出来事だった。

11月下旬にディラン・シースと7年総額2億1,000万ドル(約325億5,000万円)で契約して以降、補強を加速させてきたブルージェイズにとって、タッカーはまさに“締めくくり”を飾るはずの存在だった。

労使協定税(CBT)を考慮すれば、タッカー獲得には大きな財政的ハードルがあったのも事実だ。それでもブルージェイズのオーナー陣は、2025年のチームがつかんだチャンスの希少性を理解し、積極的な投資姿勢を示してきた。仮にこれ以上の補強がなくても、2026年のブルージェイズは球界上位クラス、かつ球団史上最高水準の年俸総額で開幕を迎えることになるだろう。それでもなお、見上げる先にいるのは、やはりドジャースだ。

何より痛いのは、その行き先がドジャースだったことだ。1年前のブルージェイズは、ポストシーズン進出を目標に、ワイルドカード争いのライバルと自分たちを比べていた。しかし2025年の躍進を経て、期待値は一変した。今やこの球団は、ドジャースを基準に自らの立ち位置を測っている。そのドジャースが、さらに一段大きくなった。

ブルージェイズを取り巻く環境は、すべてが新しい次元にある。タッカーを逃したことは、大谷翔平やフアン・ソトの獲得失敗とは性質が異なる。あの2件は「世界一争いへの切符」そのものだったが、ブルージェイズはすでに自力でその地点に到達しているからだ。タッカーが加わっていれば、このロースターに完璧にフィットする理想的な補強になっていたのは間違いない。だからといって、その価値を過小評価すべきではないにせよ、時間は進み、オフシーズンは続いていく。

次の焦点は、ブルージェイズがFA市場の最前線に、どこまで積極的に再び踏み込むのかだ。年が2026年に変わって以降、スポットライトはすべてタッカーに向けられてきた。しかし、タッカーの行き先が決まった今、注目はボー・ビシェットに移った。

ビシェットは今も、ブルージェイズにとって極めて理にかなった存在だ。内野陣には三塁の有力候補として岡本和真が加わり、二塁にはアーニー・クレメントが想定されている。クレメントはレギュラーとして十分に出場機会に値し、内野4ポジションを守れる柔軟性も備える。

それでもなお、ビシェットの名前が市場上位に残り続けているのには理由がある。その理由を誰よりも理解しているのが、彼をドラフトし、育て上げ、盟友ブラディミール・ゲレーロJr.とともにスターへと導いてきたブルージェイズ自身だ。

ビシェットはこれまで、ブルージェイズで長くプレーしたいと公言し、マイナー時代からともに歩んできたゲレーロJr.との旅を続けたいとも語ってきた。ただ、最終的に決断を左右するのは資金力であり、それが勝敗を分けるケースも少なくない。最近ではフィリーズと面談したことが明らかになっており、レッドソックスやヤンキースといったア・リーグ東地区のライバルに渡るという、さらに厄介な可能性も残されている。

ビシェットやコディ・ベリンジャー以外にも、市場には依然として多くの打者が残っており、FA市場の動きは今後一気に加速していくだろう。だが、ブルージェイズはここで安易に手を打つわけにはいかない。内野手を加えればアディソン・バーガーやクレメントの打席が減り、外野手であればネイサン・ルークスの出場機会を奪うことになる。いま求められているのは穴埋めや底上げではない。だからこそブルージェイズは、打撃市場の「最上位」に照準を合わせ続けてきた。

タッカーはすでに去った。しかし、時間が刻々と進む中でも、ブルージェイズにはなお大型補強を打てる余力がある。これから求められるのは、タッカーを追いかけることではなく、「彼に勝つ」ための次の一手だ。