新天地メッツで新たな挑戦、三塁へ踏み出すビシェット

January 21st, 2026

ボー・ビシェットは、三塁手への転向に向けて、すでに第一歩を踏み出している。21日の入団会見に出席するためニューヨークへ向かう前、自宅で新たな守備位置となる三塁でゴロ捕球の練習を始めた。ほんのささやかな取り組みではあるが、新たな挑戦の幕開けを告げる行動だ。

守備力の向上を今オフ最大のテーマに掲げてきたメッツが、遊撃が本職のビシェットと「3塁手」として3年総額1億2600万ドル(約199億円)の契約をしたのは、一見すると意外に映るかもしれない。さらにホルヘ・ポランコとも2年契約を結び、本職とは異なる一塁で起用している点を踏まえれば、その人事はより大胆で、異色なものと言えるだろう。

しかし、メッツはそうした見方をしていない。

「今季は、内野に4人の遊撃手が並ぶ日が必ず出てくる。おそらく、そういう日が何度もあるだろう。それは非常に大きなアドバンテージになる」と、デビッド・スターンズ編成本部長は語る。

ビシェット、ポランコ、フランシスコ・リンドーアマーカス・セミエンの4人はいずれも、メジャーでは他のどのポジションよりも遊撃手としての出場試合数が最も多い選手たちだ。その中でも、最も重要なポジション転向を託されているのがビシェットだと見られている。セミエンはすでに二塁手として長いキャリアを築き、確かな実績を残してきた。一方のポランコはDHで起用される日も多くなりそうで、一塁はマーク・ビエントスブレット・ベイティらが担う可能性がある。

ビシェットは、就任直後から新たなポジションへの適応が求められる大型契約を結んだ選手として、この4人の中で唯一の存在だ。自宅でのゴロ捕球練習に加え、ブルージェイズ時代のチームメートで、三塁手としてゴールドグラブ賞を5度受賞しているマット・チャップマンにも自ら連絡を取り、助言を求めた。

来月のスプリングトレーニング合流後は、新任のベンチコーチ、カイ・コレア、内野守備コーチのティム・レイパーと緊密に連携しながら、三塁守備の習得に本格的に取り組む予定だ。ビシェットは冗談交じりに、「1991年にエンゼルスで、父のダンテ・ビシェットが三塁を守った1イニングの映像を見返さないといけないね」とも語っている。

「遊撃手に対する自分のプライドは、ワールドシリーズのときにすべて吹き飛んだと思う。ただ、勝ちたかったんだ」とビシェットは振り返る。

左膝の捻挫によりポストシーズン最初の3ラウンドを欠場したビシェットは、ドジャースとのワールドシリーズで戦列に復帰。膝への負担を抑えるため二塁手として起用され、5試合を無失策で乗り切るなど、十分に役割を果たした。

現在、膝は完全に回復している。それでもFA市場に臨むにあたり、ビシェットは二塁、三塁、遊撃のいずれでの起用についても前向きに耳を傾けていた。何より重視したのは、再びワールドシリーズを現実的に狙える環境かどうかだった。

「一番の優先事項は、勝つこと」

その言葉に、ビシェットの本音がにじむ。

そうした中でメッツから声がかかった際、ビシェットに三塁転向への迷いはなかった。球団側も同様だ。昨季、ビシェットはメジャーの遊撃手の中でもレンジファクターが低い部類に入っていたが、メッツは守備位置を右側に移すことで、その点は改善されると見ている。

「一般論として、遊撃ではそれほど広い守備範囲を持たない選手でも、他のポジションに回れば十分なレンジを発揮できることが多い。ボーも三塁で、その役割をしっかりこなせると考えている」とスターンズ編成本部長は語る。

最終的にどのような結末を迎えるかは、まだ分からない。ただし、新たな守備位置で一定水準の守備をこなし、昨季の打撃成績(打率.311/出塁率.357/長打率.483)に近い数字を残せるようであれば、メッツにとって極めて価値の高い存在となるだろう。契約には最初の2年終了後にオプトアウト条項が盛り込まれており、27歳という年齢を踏まえれば、行使に踏み切る可能性も十分にある。それでもビシェットがニューヨークを選んだのは、この街でプレーする覚悟がすでに固まっているからにほかならない。

少なくとも現時点で、ビシェットが思い描いている「移動」は、遊撃から三塁へのポジション変更だけだ。

「ニューヨークという街やメッツの環境は、事前に慣れておいたり、準備万端にしておくことができるほど単純ではないと思う。厳しい場所だということは理解しているし、避けるつもりもない。覚悟はできているし、むしろ楽しみでもある。ファンは選手に高い基準を求めるけれど、自分を最高の状態へ引き上げたい選手にとって、それはむしろプラスだと思う」