ブルージェイズのボー・ビシェットにとって母マリアナは特別な存在だ。子供の頃から今まで、スタンドを見上げると母がいつも見守ってくれていた。
ボーが10歳の時、15歳になる兄のダンテ、父親とともに、ショーケース・サーキットを回り、メジャーリーグのスカウトの前でプレーをした際、幼いボーがスタンドの母を見て、ほっとしたのを今でも覚えている。
メジャー7年目、27歳になる今も変わらず、春季キャンプ中はもちろん、シーズン中も母はとても大切な存在だ。
「母にはとても感謝している。(子供の頃に)いいプレーができなかった時、母は『試合までちゃんと練習したの?』と聞いてきた。そういう時の答えは『No』。母は僕がコントロールできるのは練習とプロセスだけだ、ということを教えてくれたんだ」
ビシェットは今も母の教えを胸に留める。4安打10打点でも全打席三振の際でも、試合までどういうアプローチを取ったのか、全力を尽くしたのかを問いかける。
もう一つ、覚えていることがある。
兄が遊びに出かけたり、友達と野球をする際に、小さな弟も連れて行くように母が兄に言い聞かせていたことを。子供の頃、多くの兄、姉にとってはわずらわしいことだが、ビシェットは兄の友達と遊ぶ時は大人しく、ちゃんといい子にしていた。そして弟がメジャーリーガーになった今、兄にとってはそれはいい思い出になっている。
メジャーリーガーだった父親は、息子のスイングやアプローチの細部にまで気を配り、一緒に練習を重ねてきた。一方、母は息子の気持ちの動きをいつも細かく見ている。
愛息の打席を数え切れないほど見てきた母は、イライラしている時、調子が良い時、あと少しでブレイクしそうな時、どんな表情をしているかを熟知する。10歳の時も、大人になった今も、母に相談するのはいつもそんな時だ。
「母はよく分かっている。『もっとアグレッシブにプレーしたら』とか、『大丈夫。今日は強く打てていたよ』みたいに言ってくれるんだ」
人生についても同様だ。
ビシェットは成功だけではなく、苦難からも多くのことを学んできた。野球選手の生活は外からは華やかに見える。確かに華やかな世界だが、見えない苦労も多い。
野球選手の生活は常に遠征続きだ。
野球につきものの「日々の失敗」について考える暇もなく、毎日、試合が続いて行く。
「人生は時に孤独なんだ。なじみの顔が側にいてくれるのは、まちがいなく支えになる。母は僕のことを誰よりも理解してくれているからね」
兄ダンテと弟のボーは2026年ワールドベースボールクラシックにブラジル代表として出場する予定だが、この知らせを最も喜んだのは祖父母だった。
マリアナの父親は香港生まれで、幼い頃にブラジルに移住し、そこでマリアナの母親と出会った。
「祖父がすごく興奮して、現地に行きたいとメッセージを送ってきたよ。ブラジルで野球がニュースに取り上げられるようになって、チームが次のWBCにも出場できるよう貢献したいと思っている。少しでも役に立てるようにがんばりたい」
ブラジルは来年3月にプールBで米国、メキシコ、イタリア、英国と対戦する。ビシェットはスタンドの母に見守れながら、いつもと違うユニフォームを身につけてプレーする。
