オフシーズンが始まった時点では、ボー・ビシェットは市場に出ている遊撃手の中で「誰もが認める第1候補」とみられており、遊撃手を必要とする球団の間で争奪戦になる可能性があった。
だが、1月に近づくにつれて状況は少し変わってきた。ビシェット自身が売り込み方を変えたことが大きい。
関係者によると、オールスター2度選出のビシェットは、獲得を検討する球団に対し、二塁へのコンバートを受け入れる用意があり、実行できると伝えている。ビシェットが二塁を守ったのは、今年のワールドシリーズがメジャー初だった。
「球団側は彼を長期的な遊撃手とは見ていない。もしかすると2026年でも遊撃手として見ていない。そういう認識が本人に伝わったようだ」と別の関係者は話した。「守備位置を変更できる意思は、市場での評価を上げる要素になる」。
ビシェットは今季、OAA(平均的野手と比べてどれだけアウトを取ったかを示す指標)で-13を記録し、J.P.クロフォード(マリナーズ)と並んで遊撃手最下位だった。過去5年間の合計でもOAA -28で、遊撃手の中では下から4番目だ。
同僚のマイク・ペトリエロ記者が今月上旬に指摘した通り、ビシェットはフリーエージェント(FA)でマーカス・セミエンがたどった道をなぞろうとしているのかもしれない。セミエンは2021年、ブルージェイズと1年契約で合意し、遊撃から二塁へ移った。皮肉にも、二塁で隣にいたのがビシェットだった。セミエンはその年に二塁で成功し、シーズン後にレンジャーズと7年総額1億7500万ドル(約272億3000万円)のフリーエージェント契約を結んだ。
ビシェットはワールドシリーズで二塁を無難にこなした。サンプルは7試合と小さいものの、球団側に「このポジションを任せられる」と納得させるには十分だった。遊撃手よりも二塁の補強を必要としている球団の方がはるかに多く、ビシェットがポジション変更に前向きであることは、獲得を検討する球団を増やす要因になる。
ブルージェイズに残留する場合は、アンドレス・ヒメネスを遊撃に回し、ビシェットを二塁で起用する選択肢がある。ドジャース、レッドソックス、ジャイアンツ、マリナーズ、レンジャーズも移籍先候補になり得る。
フリーエージェント市場の二塁手は層が厚いとは言えない。ルイス・アライズには最大で6球団が関心を示しており、その一部は一塁、または二塁での起用を検討している。一方で、トレード市場には二塁の代替候補が複数存在する。
ブレンダン・ドノバン(カージナルス)はトレードされる可能性がかなり高い。一方、ブランドン・ラウ(レイズ)は引き続き移籍のうわさが絶えない。さらにケテル・マルテ(ダイヤモンドバックス)も、ここ2週間でリーグ屈指の人気トレード候補になっている。
オフシーズンが始まって以降、ビシェットは今オフのFA市場で最上位クラスの大型契約を手にすると予想されてきた。二塁手を探す球団も候補に加えて市場を広げられれば、新契約探しでプラスに働く。
迫る期限
村上宗隆のポスティング交渉期限は米東部時間22日午後5時(日本時間23日午前7時)に迫っているが、今週の時点でも、この日本人強打者の市場はまだ固まり切っていない。
多くの球団は、村上がヤクルトで三塁を主戦場にしながらも、メジャーでは一塁手とみている。長打力はスカウト陣から高く評価されており、その武器は日本からメジャーへ移っても通用すると考える関係者が多い。一方で、NPBでの三振の多さは懸念材料になっている。
村上の獲得先候補を巡っては、現時点で大きな話題は多くない。ただ、理にかなう球団はいくつかある。
- レッドソックスはカイル・シュワーバーとピート・アロンソの両方を逃した。村上はまだ実績が確立された打者ではないが、今オフに市場にいる数少ない本格的な長距離砲の1人だ。
- パドレスは、常にトレードのうわさが出ているジェイク・クロネンワースを一塁で起用する想定だ。打線は2025年、メジャーで三振率が3番目に低かった。
- カブスも三振率が高く評価された球団で、メジャーで6番目に低かった。近年、鈴木誠也と今永昇太の2人で日本市場に手を伸ばしている。村上はDHとして打線に入る可能性が高く、必要に応じてマイケル・ブッシュとマット・ショウを休ませる目的でDH起用する日も作ることが可能だ。
- エンゼルスは三塁に補強需要があり、テイラー・ウォード放出後は本塁打を打てる打者がもう1人ほしい。三塁の評価次第では、一塁やDHに回る可能性もある。懸念材料の1つは、エンゼルスが昨季メジャーで三振率が最も高かった点で、村上が加わればさらに上がる恐れがある。
- ダイヤモンドバックスは今週、アレックス・ブレグマンと結び付けて報じられた。ただ、昨季三振率が7番目に低く、村上は一塁、三塁の両方で堅実に当てはまり得る。
- パイレーツは支出を増やす意図でFA市場で動いているが、カイル・シュワーバーとジョシュ・ネイラーの獲得は入札で届かなかった。村上は、ピッツバーグが切実に必要としている長打力を補える。
村上がメジャー球団と合意できない場合、2026年は日本に戻り、来オフにヤクルトから再びポスティングされる可能性もある。ただ、関係者はその展開は起きないとみている。
ダイヤモンドバックスはブレグマン獲得に動くのか
16日に複数の報道が、ダイヤモンドバックスがアレックス・ブレグマンの獲得市場に加わる可能性があると伝えた。ただ、関係者によると、アリゾナが3度のオールスター選出を誇るブレグマンと契約できる見込みは低い。
ブレグマンは5年契約を求めているとみられ、ピート・アロンソ(1億5500万ドル=約241億円)とカイル・シュワーバー(1億5000万ドル=約233億円)が結んだ契約を上回る可能性がある。3月に32歳になるブレグマンは、シュワーバーより1年若く、アロンソよりは9カ月年上だ。
ダイヤモンドバックスは投手陣の強化に力を入れてきた。今オフはメリル・ケリーと再契約し、マイケル・ソロカも加えた。この冬、先発投手市場の価格を踏まえると、保有権の残る投手を得るためにケテル・マルテをトレードし、その後にアレックス・ブレグマンと契約して打線を厚くする道もあり得る。ただ、ブレグマン獲得には他球団も間違いなく参戦する。
「最終的にアリゾナがブレグマンを獲るとは思わない」
あるライバル球団の幹部はそう語った。「ただ、昨年アリゾナがコービン・バーンズを獲るとも思っていなかった」とも付け加えた。
