シーズンの行方を完璧に予想することは不可能だ。始まったばかりのシーズンで、すでに多数のサプライズがあったように、これから先の結果を予言することは、はっきりいって不可能である。
であるならば、どうせ予想をするなら、大胆な方が面白いのではないだろうか?
今回はMLB.comとYahoo Sportsの記者たちに「サプライズ」となりそうな予想を6つ答えてもらった。
※成績はすべて5月7日時点のもの。
1.ピート・アロンソがナ・リーグ三冠王に
予想者:ジョーダン・シャスターマン(Yahoo Sports)
キャリアワーストに近い成績となった昨季から一転、今のアロンソは調子を取り戻すどころか、キャリアベストと呼べるほどの活躍を見せている。
中でも象徴的なのが打率.328という成績で、これが本塁打王・打点王ではなく「三冠王」という予想を可能にしている。通算打率.249の選手が首位打者争いに加わるというのは、開幕前には想像もされなかった展開だ。
もともと長距離打者のアロンソ(長打率.657)は、今季はそれに加えてコンタクト率が大きく改善。空振り率は自己最低の21.6%、三振率も17.2%と過去最低に改善、四球率はキャリア最高の15.4%に達している(出塁率.451)。
このように、もともとの「飛ばす力」に「選球眼」と「対応力」が加わったことで、打撃成績全体が一気に跳ね上がり、今やナ・リーグMVP争いの本命候補に。しかも、チームメートにはリンドアやソトらスターもいる中での活躍であることを考えれば、実現した場合は、その価値がさらに際立ったものとなるだろう。
2. アスレチックスがア・リーグ西地区を制覇
予想者:マイク・ペトリエロ(MLB.com)
今季のア・リーグ西地区はアストロズ、レンジャーズ、マリナーズによる三つ巴の激戦区になると誰もが思っていた。
しかし、その構図はすでに崩れつつある。アストロズは勝率5割にとどまり、ヨルダン・アルバレスの健康不安も抱えている。レンジャーズは「打撃コーチを解任するか?」というレベルのパニック状態。マリナーズは打っているが、「ホルヘ・ポランコのOPS.700超え」がどこまで続くかは未知数だ。
このようにライバルたちが不安要素を抱える中で、20勝18敗のアスレチックスが静かに主役候補に浮上している。しかもこれは、本来エース格のメイソン・ミラー(防御率4.61)や中心打者であるはずのローレンス・バトラー(打率.240)がまだ本領を発揮していないにもかかわらずだ。
他にも新加入選手の活躍や、サプライズを見せる選手もいるなど確かにこの勢いがどこまで維持できるかは不透明である。
しかし、もしここから、ミラーやバトラーが本調子を取り戻し、ジェフリー・スプリングス(防御率4.81)がレイズ時代の安定感を取り戻し、ジェイコブ・ウィルソンが「守備のできるルイス・アラエス」としてのプレーを継続したら?
ファングラフスによれば、アスレチックスが地区優勝する確率は5%。「大胆予想」としては悪くないオッズではないだろうか。
3. ポストシーズンで大谷翔平は登板しない
予想者:ジェイク・ミンツ(Yahoo Sports)
大谷翔平の名が世界に広まったのは、言うまでもなく「投打の二刀流」という唯一無二の存在だったからだ。100年以上のMLBの歴史を見ても、彼のように投手と打者を同時にオールスター級でこなす選手は存在しなかった。
しかし、2023年に2度目のトミー・ジョン手術を受け、二刀流は一時休止。それでも彼は、「50-50」を達成し、昨年3度目のMVP、そしてワールドシリーズ制覇を成し遂げた。
そんな大谷の存在は、ドジャースに贅沢な悩みをもたらしている。それが「彼をポストシーズンで登板させるべきかどうか」ということだ。
もちろん、彼は優秀なドジャース投手陣の中でも最も優れたピッチャーの一人。そんな彼をポストシーズンの試合で登板させないというのは一見、ありえない選択のように見える。
しかし、同時にそのような舞台での全力投球がケガ再発のリスクを高めることもまた事実だ。もし仮に、大谷がポストシーズンで肘を故障した場合、ドジャースは大事な投手だけでなく、MVP級の打者も失うことになってしまう。
2025年のドジャースは確かにグラスノーやスネルら、先発投手陣に故障者が続出しているが、それでもある程度、健康な先発ローテを維持したまま10月を迎える可能性は十分にある。そんな中で、リスクをかける必要がどこまであるのかは大きな悩みどころ。
ファンもメディアも、そして本人も(対戦相手を除く)全ての人が彼の登板を望むだろう。しかし、「見たいもの」と「チームにとって最適な選択」が必ずしも一致するとは限らない。
4. ライリー・グリーンがア・リーグMVPを獲得
予想者:アンソニー・カストロビンス(MLB.com)
この予想の見出しは、「ア・リーグMVPはアーロン・ジャッジではない」
とした方が良いかもしれない。というのも、現時点での投票結果はきっと
ジャッジ、ジャッジ、ジャッジの赤ちゃん、ジャッジ、ボビー・ウィット Jr.
のようになるはずだからだ。
それを承知で筆者がタイガースのライリー・グリーンをア・リーグのMVP候補に挙げているのは、恒例の「時期尚早アワード予想」(英語記事)で、連続受賞を避けるべくジャッジではなく、デトロイトの24歳を候補とし、後に引けなくなって、やけになっているとか、そういった訳ではない。
もちろん今シーズンのジャッジは特別だ。しかし、思い返せば2023年も同様の勢いを見せながらケガでシーズンを離脱したように、それを願うわけではないが、そういったハプニングが全くあり得ない話ではないことも事実だ。
何より、ライリー・グリーンの活躍は間違いなく素晴らしい。今季は開幕直後は、不調に苦しんだが、直近は週間MVP級の活躍を見せて復活。昨年ほどの「完全体」ではないとはいえ、タイガースで最も安定した選手であることに変わりはない。
もちろん、対戦ピッチャーたちと一緒に、私がジャッジに恥をかかされる可能性も大いにあるのだが。
5. ルイス・アラエス、三振数「20以下」
予想者:デビッド・アドラー(MLB.com)
この数字ですら「大胆予想」には物足りないかもしれない。それほどまでにアラエスは三振とは無縁のシーズンを過ごしている。
開幕からここまで30試合、131打席でわずか3三振。三振率は驚異の2.3%だ。このペースで135試合、590打席を消化すれば、シーズンを14三振で終える計算になる。
この「シーズン20三振未満」という偉業を規定打席に到達したシーズンで達成した最後の打者はパドレスのレジェンド、トニー・グウィンのみ。ちなみに彼はキャリアを通じてこの成績を5度達成している。
もちろん、アラエスにとってもこのペースを1年維持するのは簡単ではない。キャリア最少の三振数は昨季の29。3度の首位打者を獲得している彼でも、平均してシーズン35三振ほどしている。
しかし、昨年はなんと141打席連続三振なしという信じがたい記録も残しているうえ、2024年6月以降、ひと月に三振を3度以上したこともない。
もはや不可能と思われるこの記録を達成できる選手がいるとすれば、それは間違いなくアラエスだろう。
6. オリオールズが90敗に到達
予想者:ラッセル・ドーシー(Yahoo Sports)
2025シーズンが始まって1カ月半ほど。しかし、2023年、2024年と連続して90勝以上&ポストシーズン進出を果たし、「黄金期の到来」すら感じさせたオリオールズにその勢いはみられない。
最大の課題は、先発投手陣にある。今オフ、エースのコービン・バーンズをFAで失ったにもかかわらず、ローテーションの強化にほとんど手を打たなかった。結果として、先発投手の防御率5.77でMLB全体28位という厳しい状況に陥っている。
昨季のデータに基づけば、先発防御率が25位以下だった6球団のうち、5チームが90敗以上を記録。唯一の例外は、リーグ随一の攻撃力を誇ったダイヤモンドバックスだったが、現在のオリオールズにはそこまでの打力はない。
上昇気流に乗れないまま苦しい戦いが続くボルチモア。昨季までの強いオリオールズの姿が、少しずつ遠ざかりつつある。